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退職者は会社の半分以上… 中小企業を継いだ2代目はなぜそこまでして改革を進めたのか?

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退職者は会社の半分以上… 中小企業を継いだ2代目はなぜそこまでして改革を進めたのか?

斜陽産業になりつつある自動車教習所業界において、見事に経営を立て直し、社内風土を一新する改革が成し遂げた「南福岡自動車学校教習所」。

社長自ら「かめライダー」というヒーローに扮し、退屈な講習を面白く楽しく学べるスタイルに変え、今では県下一の業績を誇る教習所に生まれ変わった。

昔ながらの経営を続けるだけでは、企業の存続は難しい時代になっている。それは、自動車教習所業界だけの話ではないだろう。

『スーツを脱げ、タイツを着ろ! ――非常識な社長が成功させた経営改革』(江上喜朗著、ダイヤモンド社刊)は、危機感を抱いて「会社を改革して、経営を立て直したい」と考える経営者の道しるべとなる一冊だ。

同書で改革の模様を語っている南福岡教習所の代表取締役社長・江上氏に、改革を進める上での苦労と、実際に意識してきたことを伺った。

(取材・文:大村佑介)

■改革は一人では成し遂げられない

――改革を始めた当初、賛同してくれた人はどのくらいいたのですか?

江上:全体の一割くらいでしたね。そこには、部署の癖というか考え方の違いが大きかったです。

営業や広報といった全体を見る部署のメンバーは賛同してくれる人がいたのですが、受講者に教習している現場の人たちからの反発は強かったです。

現場の人たちは「厳しく教習するのが、大事全てだ」「何で今までのやり方を変えなくちゃいけないんだ」という感じだったので、新しいことを始める意味や必要性をなかなか理解してもらえませんでした。

9割の人が、組織全体に根付いている大きな価値観に縛られていたので、一割の人間だけで山を動かすのは、一筋縄ではいかなくて苦労しました。

――それは多勢に無勢というか、かなり厳しい状況だと思うのですが、最初に賛同してくれた人が辞めてしまうことはなかったのですか?

江上:それは一人もいませんでした。

ただ、ポーズだけで「私も同じ方向を向いていますよ」と私に取り入ろうとした人や、上辺だけでついてきていた人は、本当に会社が変わっていく段階でメッキが剥げて辞めていきました。

100人ほどいた社員の半数近く以上が辞めることになったのですが、その途中の段階で、私は全社員に「この会社は、あなたにとって良い職場ではないかもしれません」というメールを送りました。

私にとっては、会社を改革することは必要だと思っていましたが、そこで働く全員がそれを望んでいるとは限りません。

無理に一緒に働いて幸せになれないなら、お互いにとっても不幸でしかありませんよね。

だから、新たにつくった理念への想いと、素直な本音を綴り、辞めたい人は無理に引き留めず、「退職」という選択肢もあることを伝えました。

結果的に、退職者は半数以上にのぼりましたが、最初に賛同してくれた人は誰一人辞めませんでした。

そのぶん残ってくれたメンバー、一人一人の仕事量は大変なものになりました。

そこで新規採用も進めていきました。新しく入ってくる人は、新しいやり方に賛同してくれた人たちですから、本当に同じ方向を見られる人だけが残っていったんです。

――多くの退職者が出たことで、残ってくれた社員にも不安やプレッシャーが大きかったと思いますが、ご自身の心が挫けそうになったときに支えになったことはなんですか?

江上:一番は、同じ方向に進んでいこうと決めてくれたメンバーたちです。

「もし、ここで自分が引いたら彼らは去ってしまう。だから、絶対に引けない」と思いました。それに、新入社員からの励ましも支えになりました。

自分を信じてくれたメンバーのため、というのは大きかったですね。

――なるほど。改革を進めるにあたって、先陣を切る人には必要なものがいくつもあると思います。そのなかで、「これは備わっていたな」とご自身で思えるものはありますか?

江上:まず前提として、周囲の人は、自分がやっていることについて深く考えてはいないと思うんです。

つまり、経営者である私が考え抜いたやっていることに対して、周囲は社員は目先の表面化しているものだけを見て、「イマ、ココ、ワタシ」=短期的な時間軸、部分最適、今の感情、自分の利害、価値観に照らし合わせて何かを言うんです。それは、批判でもアドバイスでも同じです。それは自分がアドバイスする立場であってもそうでしょう。

だから、基本的に「周りの人の言うことを真に受けすぎないほうがいい」という前提を持っていたのは、良かった点ですね。

たとえば、利害が直接ある人だったら、賛成でも反対でも、自分の立場の利害を考えて色をつけて意見をするでしょうし、利害が無い人であっても、表面だけを見て意見をすることが多いと思うんです。

最初からそういう前提でいれば、反対されても別にそれ自体に意味はないというか、良い意味で聞き流せるというか。それは、ひとつ備わっていた部分ですね。実際に周囲のいうことを聞かずに物事がうまくいった経験を積んだことで、さらに強化されたことかもしれません。もちろん、いったんは耳を傾けますが。

もうひとつは、確信の強さがあったことです。

「上から目線で、厳しく教えていくだけの教育」よりも、「楽しく、面白おかしく、新鮮な人間関係を結びながら学べるほうがいい」というのは、絶対に間違っていないと思っていました。

時代が変わって、「上から目線で、厳しく教えていくだけの教育」という、オールドカンパニー的な教育の合理性は薄れてきているのに、厳しく当たって、「アレをやれ」「コレをやれ」では、良くなりようがないですから。

私たちの親世代には、トップダウンで効率化していくことこそが競争優位を生む、というような成功モデルが焼きついていると思うんです。

「自分はこれで上手くいったのだから、他の人だってこれで上手くいくし、この先の時代も上手くいく」と、思い続けている。実際に親世代はそれで上手くいったけれど、数字を見ると、もはやそのやり方では通用しなくなっている。

自分も気をつけないといけないですが、それを冷静に見られるということも必要なことですね。

■傾きかけている会社の経営者は「生きていない」

――それを自分で意識できれば、改革を進める強い力になりますね。ですが、自分がオールドカンパニー的な経営をしてしまっていることに、自分で気づくにはどうしたらいいのでしょうか?

江上:それは、みんな気づいていると思います。気づいているけど、そこに蓋をしているんです。

本気で気づいて、本気で問題をとらえたら、本気でやらなくてはいけませんよね?

そうなると、精神的なコストやエネルギーがとても必要になる。だから、差し迫った危機があって「ここで変えないと、来年は潰れます」という状況にならないとやらないだけなんです、おそらくは。

――では、「今まさに会社を改革したい」「改革したいけれど一歩が踏み出せない」と思っている人たちへのアドバイスはありますか?

江上:会社を改革していくことはとてもキツかったですけれど、楽しかったんですよ。

信頼が出来る仲間と一緒に「ああでもない」「こうでもない」と知恵を絞って、メンバーを動かして、新しく同じ方向を向いてくれるメンバーを採用して、といったことが全部。それがこれ以上ない喜びで、「生きている!」という実感がありました。

たぶん、少しずつ業績が落ちている会社の経営者って「生きていない」と思うんです。心臓も動いているし息もしているけれど、充実感もなく、目の前に物事に追われて対処だけをしているような。

「生きている」と「死んでいる」の間には、「死んでいない」というもうひとつの状態があって、きっとそこから一歩踏み出せば、「生きている!」という実感を持つことができるはずです。

だから、「生きろ!」と言う言葉を贈りたいですね。

――シンプルですが、とても胸に響く言葉ですね。ありがとうございました。

江上:ありがとうございました。

(了)

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