笑いをとるためになぜ人は服を脱ぐのか 松本人志さん監修の『ドキュメンタル』を動物行動学の視点で見る

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このゲームにおける強者の条件とは

――その中で攻めに出る者、様子をうかがう者など、タイプが分かれるのも面白いです。

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新宅:群れの中で自分の立ち位置を把握して、相手を見ながら駆け引きすることは、オオカミやサルにも見られる行動です。順位制のある動物には、序列のできる要素がいくつかあります。年功序列、ケンカが強い、カリスマ性があるなど、様々なカードが存在します。序列の低い個体は、気を遣いながらも、いつかは頂点立ちたいと思っています。それはお笑いの世界でも一緒ですよね。先輩後輩、事務所の違い、売れている売れていないなど、立ち位置の違いで気の遣い方が変わってきます。動物の世界の争いとすごくよく似ていると思いました。

――人間のお笑いというカタチでそれを見せているわけですね。

新宅:そもそも、食べ物、住みか、メスなどの生死や繁殖に関わらないことで真剣に争えるのは人間くらいなんですけど、このゲームの何が難しいかと言うと、最も平和的な「笑わせる」という行為で争うことです。これは思っている以上に難しい課題です。

――確かに、相手を打ち倒す行為とは真逆ですね。

新宅:人間が動物と違うのは、誘い笑い、つまり伝播する笑いがあることです。相手の笑いを引き出すために、自分も笑顔を作ることがありますよね。このゲームのルールにおいては、その人間の特徴が弱点になるわけです。つられ笑いや愛想笑いで脱落する参加者もいましたよね。油断した時につい出てしまうものなんです。

――裏を返せば、その本能的に組み込まれた笑いを制御できる人が勝者に近いと言えますよね。

新宅:動物行動学的な理論だけで分析すると、このゲームに有利なのは、芸人としての序列が低い人だと思って見ていました。立場が下の人ほど愛想笑いが必要だったり、場の空気を読んで自分の笑いをコントロールすることが多いからです。逆に先輩になるほど気を遣う場面が減るので笑いを制御しなくなる。笑うという行為に対して油断しやすくなるんです。

――芸歴が長いとか、ネタが面白いからといって強いわけではないと。

新宅:サバンナの限られたエリアで見たときに、ライオンが最後まで生き残るかというと、そうではないですよね。噛む力が強いとか、走るのが速いとか、図鑑上のスペックが優れているからサバイバルできるわけでもない。意外な小動物とかがちゃっかり生き残ったりするものです。そんなことを考えながら見ていました。

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よしだたつき

よしだたつき

PR会社出身のゆとり第一世代。 目標は「象を一撃で倒す文章の書き方」を習得することです。

TwitterID: stamina_taro

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