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認知症の人が転倒しやすいのはなぜ?予防策を考える

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認知症の人が転倒しやすいのはなぜ?予防策を考える

認知症の方を介護する中で気を付けたいことに、転倒による事故があります。認知症の方が転ぶ確率は、そうでない方と比べて2倍以上。私がこれまで勤めてきた医療現場や介護現場でも、転倒予防への取り組みは必死に行われていました。今回は認知症の方が転倒しやすい理由と介護現場の現状、また転倒予防策についてお伝えします。

認知症の方が転倒しやすい理由

なぜ認知症の方は転びやすいのでしょうか。3つの理由を挙げて解説します。
転ぶ女性のイラスト

立体的に捉えられない

私たちは、脳の頭頂葉というところで、目で見たものを様々な角度から立体的に捉えています。しかし、アルツハイマー型認知症では比較的早い段階でこの頭頂葉が障害されるため、位置や距離感や高低差などを立体的に認識することが難しくなります。このことが原因で段差に気づかなかったり、手すりをつかみ損ねたりして転倒してしまうこともあります。

転んだことを覚えていない

私たちは失敗したことを覚えているので、次こそは同じ失敗をしないように注意しますよね。しかし、認知症の方は記憶する能力が障害されるので、「転んだ」ということを忘れてしまいます。現場では、「この間も同じ転び方したよね…」ということがよく起こります。このようなことから自身で予防することが難しくなります。

「これは危ないな」と予測できない

人にはもともと、「これをやったら危ないな」ということを予測して対処する「危険察知能力」があります。しかし、認知症の方はこの能力も低下してきます。そのため、濡れた床を気にせず歩いたり、歩行が不安定でも手すりを使用しなかったりと、介護者にとってはハラハラする行動をとります。また、転びそうになったときに咄嗟に手をつくなど、怪我を最小限に抑えるために動くことも難しくなるため、些細な転倒が大きな怪我に繋がることも少なくありません。

転倒は寝たきりへの第一歩

2010年の厚生労働省の調査によると、高齢者が要介護認定を受ける原因のうち、「骨折・転倒」は第5位の10%を占めています。転倒がきっかけで骨折し、骨折がきっかけで入院、その後寝たきりにつながる方は非常に多いのです。
高齢者が要介護になる原因・きっかけ

すぐ駆けつける?見守る?医療現場と介護現場で異なる視点

今まで、病院、デイサービス、グループホーム、高齢者施設、など様々な現場をみてきました。様々な現場を見てきて感じているのは、医療現場と介護現場で、転倒リスクの視点が違う、ということです。

医療現場の視点

病院などの場合、食事や排泄、入浴といった日常生活動作(ADL)が問題なくできる場合も、薬物を服用していたり別の疾患があると転倒リスクに影響があるので注意しましょう!という意識が高いケースが多いです。例えば、次のような会話が飛び交います。

看護師

最近血圧の薬が増えたから立ち上がる時ふらつきやすいかも

看護師

パーキンソン病があるから転びやすいかも

看護師

利尿剤が追加になったから転倒に気をつけないとね!

介護現場の視点

一方で、介護職が多い現場では日常生活動作(ADL)や普段のその方との変化など対する視点に優れています。例えば、次のようなことがよく話されています。

介護士

薬は変わってないけど、最近右足の動きが悪い気がする…

介護士

前よりも最初の1歩が出なくなっているような印象があるよね

介護士
普段は大丈夫だけどお風呂の後はフラフラしてるみたい

薬の服薬状況や疾患の有無から転倒リスクを判断する医療現場の視点、そして「その人」の様子の変化から判断する介護現場の視点。転倒を防ぐにあたって、この両方の視点をもつことが大切だと筆者は考えます。

転倒はこうして防ぐ!転倒予防の2つの方法

転倒しそうになる高齢男性イラスト

転倒が起きてしまう要因には、環境に関連する『外的要因』とご本人に関する『内的要因』に分けられます。予防もこの2つの視点をもつと対策が図りやすいのではないでしょうか。

外的要因を取り除く

外的要因には床の状態(滑りやすい、段差がある)、照明の明るさ、手すりの不足、電気コードなどの床の障害物などがあげられます。この視点から次の予防策が考えられます。
床が濡れていたらすぐに拭く
夜でも廊下の足元は明るくしておく
生活導線に障害物を置かない
ご本人に状態に合わせた福祉用具を活用する
在宅の場合はカーペットの端なども注意する
歩きやすい履物を選ぶ

内的要因を取り除く

内的要因には、年齢や疾病、身体の状態(運動機能、感覚機能など)、内服薬、精神面などがあげられます。この視点から次のような予防策が考えられます。
筋力トレーニングなどの運動
服薬に関する情報共有
焦らせるような声かけをしない
後ろから声をかけない
ご本人にも転倒予防について説明をする

予防はご本人の状態と合っていないと逆効果になることもありますので、よく観察をして対応を考えていくとよいと思います。

最後に

医療現場や介護現場で必死に行われている、転倒予防。難しいのは、取り組みが過度になりすぎると、身体拘束につながってしまうことです。しかし、転倒による骨折やその後の人生の影響を考えると、転倒予防への取り組みはやはり大切です。認知症の方ご本人の尊厳を奪わないでサポートする形を探っていきたいものですね。

転倒予防との向き合い方については、認知症オンラインの別記事(認知症の人は転倒しやすい!自宅でできる予防策・対策グッズ)もありますので、是非そちらも参考にして下さい。

この記事が少しでもお役に立てると嬉しいです。

この記事を書いた人

市村幸美

准看護師として数年間勤務した後、進学コースへ進み看護師免許を取得。認知症治療病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師を取得する。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくする」ことを使命と考え、現在は現場での実践や教育などさまざまなフィールドで介護・福祉に携わっている。またブログ『認知症専門のナースケアマネ市村幸美の【美Happy介護】』やSNSを通して介護職だけでなく一般の人に向けても認知症や介護を前向きに受け止めてもらえることを目指している。

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