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今は戦時下の日本なのか

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メカAG

今回はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

今は戦時下の日本なのか

「日医、津波映像自粛を申し入れ 放送局へ震災番組で」2012年02月29日『47NEWS(よんななニュース)』
http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012022901001589.html

日本医師会は29日、東日本大震災の発生から1年を迎えて震災関連の番組を放送する際には、津波の映像を可能な限り自粛するなどトラウマ(心的外傷)を持った被災者らへ配慮するよう、NHKや民放連などへ申し入れると発表した。

よく第二次世界大戦中は、日本政府や軍が情報統制をし、国民に都合のいい情報しか与えず、また国益を損ねる言論を厳しく制限したと言われる。戦争中の暗黒時代の象徴のように語られ、国民に責任はない、悪いのは軍だという主張に使われる。

しかし最近の日本の社会を見ると、言論の自由が保証され、世界のあらゆる情報が障壁なしに入ってくる時代なのに、どこか似たものを感じるのは俺だけだろうか。

ほかならぬ国民自身が、厳しい現実から目をそらすような情報をありがたがり、不安をあおるような言動の排除を望んでいるように思えてならない。それなら戦争当時も、思想統制を国民自身が望んだのではないか? 政府や軍の都合と国民の願望が一致したというだけなのではなかろうか。

 * * *

現在国民に人気のあるニュースといえば「円高でもこの企業は工夫してこんなに頑張っている」みたいなものだ。あるいは「大震災の被害者たちが草の根的に力を合わせている」と。

別に内容的には悪くないのだが、そういうニュースしか国民が喜ばないという点が問題なのだ。何にでも例外はある。全体的には悲惨な戦局でも、一部を取り出せば日本軍が良い成績を収めている戦いもあるだろう。「我が軍がわずか数機で敵戦闘機10数機を撃破!」みたいな。それが仮に事実だとしても、そういう状況はまれで全体的には日本軍はどんどん負けていったわけだ。

「国民に希望を与える」「日本を元気にする」という名目で、明るいニュースが国民にばらまかれ、そして国民にも好評を得る。それで「俺たちもがんばろう」という人が増えるならいいが、なんとなく「まだそんなに悪い状況じゃない」という現実逃避のほうに役に立っているのではなかろうか。

 * * *

震災後のまだ間もない頃、報道のヘリコプターが救助活動や避難生活の平穏を妨げると批判されたことがある。それ以来上空から震災の現場を撮影したニュースなどはめっきり減ってしまった。避難生活者の状況もあまり伝えられなくなった。

本当にそれでよかったのだろうか? むしろ歓迎したのは政府なのではないだろうか。報道機関によって進まない復興活動が批判されなくなる。都合の悪い情報は勝手に報道されなくなり、政府の公式発表だけになる。それを国民が自ら望んだのだ。

 * * *

震災の現場の報道をテレビで見過ぎるとトラウマやPTSDになるから自主規制してほしいという声もずっとある。まあ、これはアメリカの9.11同時多発テロの時もあった。旅客機がビルに衝突しビルが崩れる場面をテレビで何度も流すな、と。

原発の放射能に関する報道も放射能の危険性を訴える報道は逆に精神的ストレスで健康を害するからやめるべきだという。ひどいものになると放射線よりも精神的ストレスで癌になると主張する人までいる。

いったいそんな学説はどれだけ実証されているというのだろう。“○○ダイエット”と同レベルのうさん臭さだ。それならここ10年以上流されてきた“失われた10年”の暗いニュースで、どれほど癌患者が増えたことか。ニュース番組は心地よいものよりも深刻なものが多いのだから、この調子でいくとニュースを一切流さないほうが、国民の健康のためによいと言い出しかねない。国民には政府発表の明るいニュースと娯楽番組をひたすら見せていればいい、と。まるで小説『1984年』の世界だ。

 * * *

きっと戦時中も国民の心境は今と同じだったのだろう。「ホントか?」と疑いつつも、明るいニュースのほうを受け入れる。警鐘を鳴らす言動は、自分たちを不安にさせるからあれこれ理由をつけて排除しようとする。

戦時中の政府や軍は国民が望んだものを提供しただけなのだ。国民は「なんかだまされている」と感じつつも、だまされるのを望んでいるのだ。辛い現状を直視などしたくないのだ。あげくの果てにきっとこういうだろう。「政府がだましていることはわかっていた」「俺たちは被害者だ」と。

「だましていることはわかっていた」→国民は賢かった。「俺たちは被害者だ」→国民は悪くない。不安から目をそらせて、自尊心は満足し、なおかつ責任を放棄できる。無敵な論法だ。“被害者”になりたくないなら、つらい現実も直視しなければならない。それとも国民は今度も“被害者”になりたがっているのか……。

執筆: この記事はメカAGさんのブログからご寄稿いただきました。

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