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子供時代に感じた恐怖との再会 アクションADV『リトルナイトメア』

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子供の頃は、恐怖がもっと身近にあった。建物の影、知らない道、そっと這い出てくる夜の闇。そこには得体の知れない何かが潜んでいて、じっとこちらを見つめている。そいつらに捕まったら最後、助けを呼ぶ声も届かない、誰も知らないどこかへ連れて行かれるのだと、そう信じていた。

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『LittleNightmares-リトルナイトメア-』は、そんな子供時代に感じた不気味な恐怖を描いたアクションアドベンチャーだ。LBPシリーズにも携わったスウェーデンのデベロッパー Tarsier Studiosによって、かつては『Hunger』というタイトルで開発が進められていた。発表以来その不気味でキュートなビジュアルが注目され、去年の8月に開かれたgamescom Award 2016ではインディーアワードも受賞している。

内容としては、ジャンプ・しゃがむ・掴まるといった基本的なアクションを主体に、ステルスと環境パズルを含んだオーソドックスな作りとなっている。

主人公は黄色いレインコートを着た「シックス」という名前の幼い少女で、気がつくと“胃袋”という意味を持つ巨大な船舶「モウ」の中で目を覚ました。プレイヤーは彼女を導き、その船と呼ぶには余りに巨大で奇妙な構造をした監獄からの脱出を目指す。

海中に佇む謎深き船「モウ」

シックスが目覚めたのは「モウ」の最深部、そこはもっとも暗く冷たい空気で満ちている。そこかしこに死のイメージが転がり、海のただなかに建つがゆえ波に揺られて、部屋は常にゆっくりと動いている。

その名が示す通りまるで巨大な生物の胃の中にいるかのような、心理的な圧迫を感じるだろう。シックスはライターの明かりだけを頼りに、生き血に誘われ這い寄ってくるヒルから逃げ、巨大な家具が配置された部屋、血の臭いに満ちた台所、大量のご馳走が並べられたゲストルームと、知恵と勇気を振り絞り、出口があることを信じて上へ上へと進んでいく。

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 悪夢にうなされ目覚めるシックス、ここから少女の脱走劇が始まる
 
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 船内では象徴的に吊り下げられた多くのものを見ることになる
 
また「モウ」には、シックス以外にも多くの子供たちが囚われている。さらわれてきたのか、あるいは自ら迷い込んだのかは不明だが、檻の中で不安と恐怖に駆られてうずくまり、まったく生気を感じられない。逃げ出そうとした者もいたようだが、その試みは最も残酷な形で失敗を告げられている。船内の至る所に配置された巨大な“目”の意匠が、「誰もここからは逃げられない」と暗に語っているかのようだ。
  
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 子供たちをどこかへと連れ去っていく長い腕
 
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 逃げ出そうとする者を監視する“目”

幼い日の恐怖が具現化したかのような奇妙な住人たち

「モウ」の住人たちは、逃げ出したシックスを決して歓迎してはくれない。異様なほど長い腕を持つ管理人、肉を愛する残酷な双子のシェフ、無機質な白い仮面を被った着物の女性…か弱いシックスがそれらに対抗しうる手段は1つもない。捕まってしまえば一巻の終わりだ。息を潜め、机の下を隠れて移動し、ある時は物音で注意を引き、こちらの気配を悟られぬよう静かに逃げ延びなくてはならない。
 
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 シェフに見つかってしまえば、美味しいご馳走にされてしまう
  
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 ベッドの下で息を潜めていても、安心はできない
 
だが、住人たちは決して血に飢え無軌道に暴力を行使しているわけではない。例えば、腕の長い管理人はベッドの上に寝かされた赤ん坊たちを起こさぬようそっと部屋を見回ったり、双子のシェフは上階のゲストルームへ運ぶご馳走をせっせと拵えている。あくまでも自分たちのテリトリーへ侵入したシックスを異物として排除しようとしているだけで、その行動原理は我々のそれと何ら変わらない。テレビに夢中になったり、洗い物に励む姿を見て、あるいは共感してしまうかもしれない。

しかし、ただ怒りや暴力の衝動で襲い掛かってくるクリーチャーよりも、一定の倫理観を持ち秩序を守ろうとしている「人間」の方がずっと恐ろしいと思える。見た目こそ不気味ではあるが、彼らは子供から見えている大人たちの姿なのかもしれない。
 
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 丁寧に梱包され何処かへ「出荷」されていく子供たち
 
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 船内で唯一の友好的な存在「ノーム」 好奇心旺盛だが臆病で、殆どの個体は近づいてもすぐ逃げてしまう

ゲームに隠されたいくつかのテーマ

ここまで読んで頂けたなら、おそらくこのゲームをホラーだと認識されている方が多いだろう。実際にそれは正しい。筆者もこのゲームをホラーだと称して差し支えないと思っているからこそ、そのように書いてきた。何より導入としてはそちらの方が分かり易い。
しかしデベロッパーであるTarsier Studiosは、このゲームを一概にホラーとして位置付けてはいないようだ。それにはいくつか理由があると筆者は考える。

まず1つ、このゲームは子供時代に体験した言い知れぬ不安や恐怖と同時に、「好奇心」や「遊び心」を刺激するようデザインされている。身の丈の何倍も大きい家具をよじ登り、想像力を駆使してパズルを解いていくのはまさにそれだ。
 
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 子供の頃はどんな場所でも遊び場になった
 
次にもう1つ、それは「モウ」の住人たちにある。先述したが、住人たちは自らの生活規範に沿って船内で働いている。自分たちの生活を脅かすシックスを捕らえ、排除する。悪い子へのおしおきとしては残酷性が過ぎるが、ある種の古典的童話の表現としても解釈できる。
 
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 彼らには彼らの生活があり、それを守っているに過ぎない

そして最後にもう1つ、このゲームが最終的に「サスペンス」とされた理由がここにあると筆者は考える。

主人公であるシックスは、ゲームを進めていくと一定の間隔で空腹に苦しみ、食べ物を強く求めるようになる。そう、このゲームの旧タイトルが「Hunger」であった所以だ。このゲームの根底には「飢え」という満たされない欲望が沈んでいる。最初は孤独感の表現に過ぎないと思われていたそれは、しかし、それまで感じてきた恐怖とは別のある「不安」を伴って少しずつ浮かび上がってくる。やがてそれが完全に姿を現した時、あなたはこのゲームが単なるホラーに留まらない作品であることに気づくだろう。
 
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 極度の飢えに苦しむシックス、食べ物を求めて力なく彷徨う

如何だったろうか。不気味で、愛おしく、退廃的で、どこか美しい。大人になるにつれ、あなたが忘れていったものたちが、もしかするとこの「モウ」に流れ着いているかもしれない。懐かしいものも、思い出したくないものも、運良く再会できたのなら一時だけでも浸ってみよう。

どんなものにせよ、それらは全て、あなたが子供だった頃の記憶なのだから。

[基本情報]
タイトル 『LittleNightmares-リトルナイトメア-』
ジャンル サスペンスアドベンチャー
開発元 Tarsier Studios
販売元 バンダイナムコエンターテインメント
クリア時間 4~5時間
対応機種 PS4/Steam/Xbox One(海外のみ)
価格  PS4版 2376円/Steam版 2376円

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