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ウディ・アレン初のドラマシリーズは“郊外の革命狂騒曲”!

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60年代のサイケロックで始まるアレン式革命コント

のっけからジェファーソン・エアプレインの「Volunteers」が流れてきて驚く。アレン作品のBGMといえばジャズスタンダードがお決まりなのに、60年代のサイケロックで始まるのだから。しかし話が進むにつれて「Volunteers」を選んだ理由がわかってくる。時代設定はベトナム戦争が泥沼化して若者の反戦運動が盛り上がった時代のアメリカ。ゴリゴリの反戦歌である「Volunteers」はマイリー・サイラス扮する本作のヒロイン、若き革命の闘士レニー・デイルのテーマ曲なのだ。
 
アレンは、というかアレンが描く主人公は基本的に、理屈っぽくてぼやき屋のアンチ行動派。本作でアレンが演じるコピーライター、シドニー・J・マンシンガーも典型的なアレン的主人公だ。夫婦関係のカウンセラーで近所の奥様方との読書会も主宰している妻のケイ(エレイン・メイ)とNYの郊外で2人暮らし。しかしある日、ケイの旧知の家の娘であるレニーが転がり込んでくる。反戦活動家で当局に追われているレニーをシドニーは嫌々ながら匿うことになり、平穏だった日常が予期せぬ大変革を強いられるのだ。
 
アレンは当初、ドラマシリーズと言っても映画一本分のつもりで6分割すればいいと思っていたという。いや、これもアレン流の韜晦な気がしなくもないが、いざやってみると思うようにいかず「ドラマなんて断ればよかったと」とインタビュー等でぼやいている。
 
実際にドラマを観進めると、冒頭のサイケロックの衝撃はどこへやら驚くほどにいつものアレン節だ。アレン扮するシドニーは屁理屈とグチばかりをこぼす小心者だし、音楽もいつものスタンダードジャズに戻っていく。誰も相手の言うことなど本気に聞いていないバカげた会話劇であることなど、全編にわたってアレンらしさが全開。毛沢東やレーニンら革命界のビッグネームたちが次々にネタにされていく。
 
ただ、普段とは確実に違っているのは時間の流れ方。アレンの映画は総じて短い。大抵が80分から90分台で100分を超えることは稀だ。しかし今回は 約23分のエピソードが6話もあり、合計では2時間を超える。それでいてやっていることは十八番であるナンセンスな会話コントなので、かなりたっぷり目にトークの応酬が続くのだ。これは贅沢だと喜ぶのはガチのアレンファンだろうし、早く話を進めて欲しいと思うなら本作はちょっと向いてないかも知れない。
 
筆者はアレンの理屈っぽくてどうでもいい話芸が大好物なので、会話劇の増量セール(アレン比)は大歓迎で、ホントにどうでもいいことばっか言ってるのがアレンその人なのもお得感がある。と、思っていたら、最終話では事態が急変、アレンが敬愛するマルクス兄弟を彷彿とさせるドタバタコント大会へとなだれ込む。しかもしつこい。延々約30分、これだけピュアなドタバタを見せられる機会はなかなかない。
 

ラストの描き方で別れるアレンの二面性

いささか乱暴な持論を述べると、アレンの映画は二つに大別できると思っている。一般的な分け方は「シリアス路線」と「コメディ路線」だが、筆者の基準は「ラストに必然性があるケース」と「ラストなんてどうでもいいケース」だ。
 
例えば2010年代のヒット作である『ミッドナイト・イン・パリ』は主人公に新たな恋が訪れる予兆を示唆して終わるが、皮肉屋のアレンがその恋を至高のものと捉えているとは思えず、またハッピーエンドだろうがバッドエンドだろうがどっちでも成立する。人間の愚かでバカげた右往左往こそが重要で、その結果どんなオチに転ぶかは映画を終わらせるための方便でしかないのではないか。わりと近作でいえば『人生万歳!』の展開のテキトーさはもはやラジカルなレベルで凄味すらあった。
 
一方『カイロの紫のバラ』『ギター弾きの恋』『マッチポイント』辺りはラストありきで構成されていて、エンディングの苦みにテーマが集約されている。こちらの方が緻密に見えて傑作感が高いが、どちらのアレンもそれぞれに味があって好きだ。
 
現在(2017年5月時点)劇場公開されている『カフェ・ソサエティ』は完全に「ラストに必然性」側の作品で、ここ10年でも屈指の傑作だと思っている。一方で、同年に前後して製作された「6つの危険な物語」がその対極にある「ラストなんてどうでもいい」押しであることに「食えないジジイだなオイ!」と嬉しくすらなってしまうのはファンであるが故。なのでウディ・アレン初心者には迷わず『カフェ・ソサエティ』をお勧めするけれど、やはりこの「どうでもいい」の居直り込みでこそのアレンなので、ナンセンスな下らなさが暴走する本作も併せて楽しんでいただきたい所存である。
 
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【予告編】

 
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