ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
ワンダーウーマン

認知症と精神疾患を併発した入居者Dさんへの後悔

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫
アイキャッチ

統合失調症などの精神疾患を患われている方がお歳を召されて、認知症になるケースが増えてきています。私たち施設介護者にとって難しいのは、そうした方への適切な対応です。以前入所されていたDさんも、ダブルの疾患を持った方でした。

暴言、暴力。どこまでが認知症の影響?

85歳のDさんは、認知症に加えて、若い頃から統合失調症を患っておられました。Dさんの問題は、他の利用者様や職員に対して暴言や、ときには暴力があることでした。それらの暴言や暴力について、職員たちは明らかに精神疾患のせいであると考えていましたが、担当医師はあくまで認知症の治療として、抗認知症薬のメマリー錠を処方していました。

【関連記事】
抗認知症薬メマリーとは?効果、副作用、注意点を知る

医師の言い分として、統合失調症の薬は、Dさんの85歳という年齢には強すぎるから、という判断もあったようです。処方されてしばらくは、おとなしくいいおじいちゃん、という感じのDさんでしたが、次第に暴力的な言動がエスカレートしていきました。

この状態、いつまで続く?行き着いた先は精神病院

メマリーの服薬を続けていたDさんは、だんだん物忘れもひどくなり、一瞬で直前のことを忘れるようになりました。

朝散歩したにもかかわらず、午後になると「今日は散歩行っとらんから」と職員に散歩を催促。また、入浴されても、そのことを忘れてしまわれ、何度も何度も「今日は入浴しとらんから」と着替えを持ってフロアにおいでになります。

職員が穏やかにいまはできない旨を伝えると、「施設長に電話しろ」「主任に電話しろ」と大声で怒鳴りちらされるのです。このような日々が1ヶ月以上続くと、職員もへとへとになり、「この状態、いつまで続くの?」と疲弊した空気が施設全体に流れました。

そんなある朝、管理者はついにかかりつけの精神科の病院へDさんをお連れし、主治医に現状を訴えたところ、Dさんの入院が決まったのです。

【関連記事】
「精神状態が不安定では、抗認知症薬も効かない」
認知症の症状別に薬を使い分ける方法(コウノメソッド)

私たち職員はどこまで努力を続けるべきだったのか

Dさんの退院時期は今のところ未定です。このまま、もう私たちの施設にはお戻りにならないかもしれません。事態が落ち着いて冷静になった今、私個人としては、もっと努力できることがあったのではないかと心残りがあります。

例えば、信頼関係の構築です。Dさんは私たち職員を信じていないからこそ、自分の思いが叶わないと思うと怒り出されたのではないか? 一度夜勤のときに「私たち、Dさんに信頼されるようにがんばるからね」と言うと、Dさんは穏やかな様子になったことがありました。けれどそれも一時的なもので、結局、最後までDさんのほんとうのお気持ちはわからないままでした。

昨今、認知症ケアの手法としてフランスで始まったユマニチュードというものが広まりつつあります。あの方法は結局、いかに認知症の方の信頼を得るか、ということだと思うのですが、ユマニチュードを現場で実践するには、介護者がまず、ユマニチュードがなぜ介護現場において有用なのかを理解するところから始めなければなりません。介護現場において、一般の職員にはまだその必要性・有用性が十分に理解されていないからです。

【関連記事】
暴言が消えた!魔法みたいな認知症ケア「ユマニチュード」って?

しかし、Dさんの場合は、信頼関係をつくる前に、他の利用者様や対応する職員が忍耐力の限界を超えていたことも事実です。このように、認知症になんらかの精神疾患が加わっている利用者様のケースは対応が非常に難しいのです。

介護者としてレベルアップしていくには

これからのグループホームの介護者は、ただ利用者様の身の回りのお世話や身体機能の回復のためのレクリエーション等をするだけではなく、利用者様の心の状態を見抜き、ケアしていけるだけの知識と教養、そして経験を積んでいくことが強く要求されます。

そうした介護者のレベルアップと共に、介護者が世の中に尊敬される職業として位置づけられ、それにふさわしい報酬を得られるようになることもまた、認知症の方々にとって世の中が住みよい環境になることに欠かせない要素ではないでしょうか。

【こちらの記事もどうぞ】
「自分が情けない…」介護職員が陥る仕事における介護と身内の介護の違い
なぜスウェーデンでは認知症が重症化しないのか

この記事を書いた人

長谷川侑紀

コピーライターを経て、現在演劇をやりながら認知症患者の施設であるグループホームで認知症ケアにボランティアで携わっている。演劇を通して認知症の方や介護の職員の方々にも楽しんでいただけるワークショップなども研究中。認知症の方々の日常を知っていただくことにより、人間が人生の最期を幸せに迎えるためには、他人に助けてもらう必要があることを、世の中に広めていきたいと考えている。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
認知症ONLINEの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。