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入浴介助が100倍スムーズになった介護者の○○とは

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入浴介助が100倍スムーズになった介護者の○○とは

介護施設で働いているとよく介護者の声がけを素直に受け入れられない方を目にします。そんな方が特に多いのは、お風呂へ誘導する場面。介護の現場では時に「拒否がある」と呼ばれるお年寄りの方々へ、介護者はどう関わっていくべきでしょうか。実際に介護現場で働く中で、思うことがあります。

「めんどくさい」が口癖のAさん

何かにつけて「めんどくさい」という言葉がでてしまうグループホーム入居者のAさん。中等度の認知症を患っており、自発的に行動することはあまりありません。トイレ誘導の声かけにも、入浴の声かけにも、外出の声かけにも、受診の声かけにも全く応じようとせず、ずっとソファに横になっています。

私 : Aさん、お風呂の時間ですよ。一緒に行きましょう。
Aさん : お風呂・・・。めんどくさいから入らなくて良いよ。
私 : Aさん、頭かゆくないですか?夏だし、さっぱりしに行きましょう!
Aさん : うーん。動きたくないし、行かない。

こんなやりとりをしていると、Aさんの表情はだんだん険しくなってきます。時間をおいて再度声がけしてみても、Aさんがソファから起きることはありません。一番良いのは、ご自身で起き上がるまで気長に待つことでしょう。ただ、他のご利用者さまもいて、時間も人手も限られる介護現場では、Aさんだけを待つ…ということは難しいのが実情です。

温泉卵とおまんじゅう、どちらが好きですか?

どうすればAさんが面倒くさがらずに動いてくれるのか、考え続けました。嘘をついて介助に導くこともひとつの方法かもしれません。けれど、それは介護者として適切な介入の仕方ではない、と私は思います。改めて、これまでのAさんの言動を振り返ってみました。
排泄や入浴の声かけには「めんどくさい」と一蹴される
ソファに横たわってテレビや新聞をみることを好まれる
「お食事ですよ」や「おやつですよ」には素直に応じてくださる

Aさんは全てを拒否しているのではなく、“気乗りしないこと”を拒否しているだけ。だとしたら、Aさんが自ら動きたくなる声のかけ方があるのではないか?そう思い至った私は、少し声のかけ方を変えてみました。

私 :「Aさんは温泉卵と温泉まんじゅう、どちらが好きですか?」
Aさん :「・・・まんじゅう」
私 :「おいしいですよね。温泉まんじゅう!温泉と言えばこんな歌はご存じですか?ババンバ バンバンバン~♪(と〝いい湯だな〟を歌いかける)

すると、Aさんが一緒に歌い出してくれたのです。

ハイタッチでお風呂に向かってくれたAさん

歌い始めはソファに寝そべったままのAさんでしたが、声がでにくかったのか、次第に状態を起こしてきました。私は、手拍子をつけながら歌い、「ババンバ バンバンバン」の最後の「バン」で両手をAさんに向けました。すると、Aさんがハイタッチをしてくださったのです!

何度か繰り返した流れで手をつなぎ、踊るように左右にスイングをするとAさんは一緒に揺れてくれます。さりげなく手に力を込め、少し前後に動きつつ、タイミングを見ながら立ち上がるように歌いかけと身体の動きで促して見ると、Aさんは自然な様子で立ち上がられました。

そのまま、立って歌いながら踊りつつ、演奏が終了。その時にはAさんは楽しそうに笑っていました。「おもしろかったですね!」と声をかけた後、「お風呂に入りましょ」とさりげなく声をかけると「そうだね!」と快く応じて下さいました。

言葉が通じなくても、好きな歌には反応する

この方法が通じたのは、Aさんだけではありません。「帰らなきゃ」スイッチが入ってしまうと言葉が通じなくなるBさんがいました。

「帰らなきゃ」「でもわかんない」と歩き回るBさん。「こんにちは」と声をかけても、返事はなく「帰らなきゃ」とそわそわしており、私の顔を見ようとしません。そこで、小さく手を振りながら小さな声でBさんの好きなお座敷小唄を唄いだしてみました。すると、つられるように小さく歌い始められるのです。言葉の指示が入らなくても、好きな歌には反応が見られています。

そのまま、歌い続けると、声が大きくなり、手を振る動作が大きくなり、動作が大きくなっています。歌いながら、踊る様に歩いて、椅子のそばへ。ソファなら一緒に座ることも良いですし、一人がけの椅子なら座るようなジェスチャーをしてみるのも「疲れたからどうぞ」とさりげなく声をかけるのも有効です。「帰りらなきゃ」モードは好きな歌をきっかけに消失してしまったのです。

歌はなんでもOK。介護者自身が心から楽しむことが大切!

こうして、「声かけに応じてくださらない方には歌いかけてみる」というパターンが確立しました。歌はなんでもよいのです。歌詞がなくても良いし、盆踊りでも良い。音楽は、自然と認知症を患っている方の心に入り込むことがあります。

ただ、実践するにはいくつかの注意点があります。
そして、寂しい気持ち、どうしても今、これをしなきゃとこだわる気持ち、わからなくて不安な気持ちなど、気持ちの変化するきっかけになるのです。いわゆるBPSDが音楽療法で減少する背景の一つではないでしょうか。
ただ、実践するにはいくつかの注意点があります。
強制するのではなく、自然な様子で促すこと
歌いかけてだめならすぐに引くことも大切
とにかく一緒に楽しみ、体験を共有すること
介護者自身も心から楽しむこと
「歌いましょう」とあえて声をかけず、好きな曲をただ提示することが大切

前回の記事(「症状」と一括りにしていませんか?真実は症状の「理由」にある!)にも書かせて頂いたように、ご本人の気持ちに寄り添うことが必要です。楽しい時間を共有した相手には、心を許しやすくなります。ぜひ、皆様も困ったことがあれば試してみて下さいね。

さいごに

私の住む地域では、長い春が終わり、やっと暖かい春がやって参りました。我が家のおばあちゃんは、春になり、明るくなるのが早くなったためか、一時間ほど早く起床するようになってきました!来月は、めでたく98歳の誕生日を迎えるおばあちゃん。いつまでも元気でいて欲しいな~と思う毎日です。そんな、私の祖母ですが、認知症は少しずつ進行している様子。

先日、はじめて、「朝ご飯を食べてないからお腹がすいた」と発言があった様子。父が朝食を食べたことを伝えると「私もついに老人のボケが始まったのか・・・」とコメントしたようです。短期記憶の衰えが顕著に見られる最近ですがにこやかな笑顔で過ごしてくれる日々が多くなるようなケアを心がけていきたいと思います。
認知症になっても大切な祖母と

この記事を書いた人

小森亜希子

大学、大学院と音楽療法について学んだ後、認知症対応型グループホームに勤務。認知症の方とのコミュニケーションの取り方や終末期について多くのことを学び、音楽が様々な記憶と結びついていること、気持ちを落ち着かせるために有効であることを実感。認知症介護実践者研修、認知症介護実践者リーダー研修を終了。現在、介護老人保健施設で介護業務に携わりながら、音楽療法の効果をケアに結びつける具体的な手段を模索中。同居しているアルツハイマー型認知症の祖母(96歳)と出かけることが日課。【保有資格】日本音楽療法学会認定音楽療法士、介護福祉士

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