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「どこでもオフィス」「週休3日制」…ヤフーが目指す理想の働き方とは?

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インターネット企業大手のヤフー株式会社は、近年積極的に「働き方改革」に取り組み、新しい働き方を提示しています。2016年10月、新たに本社オフィスを構えた東京ガーデンテラス紀尾井町には、日本最大級のコワーキングスペース「LODGE」を開設したり、全館フリーアドレス制を導入したりするなど、その取り組みはますます加速しているように見えます。

ヤフーで人事戦略に携わるコーポレートPD本部長・湯川高康さんに話を伺い、ヤフーが目指す理想の働き方を探りました。

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湯川高康さん

ヤフー株式会社 コーポレートPD本部長

2003年採用担当としてヤフー株式会社に中途入社。人事本部にて人事厚生室長、人事企画室長などを歴任。2014年ピープル・デベロップメント戦略本部長に就任。2017年4月より現職。

オフィス移転が「働き方改革」の契機に

——ヤフーが「働き方改革」に着手しはじめたのはいつからだったのでしょうか。

段階的に進めてきているので明確にいつからとは言えませんが、大きな契機となったのは2016年10月のオフィス移転ですね。それまでの東京ミッドタウンのオフィスが手狭となり、2014年からプロジェクトを発足して移転への準備を進めてきました。

——オフィスの移転とともに働き方について検討するようになったのはなぜですか。

ユーザー環境がパソコンからスマートデバイスへと移り変わる中、我々がデスクに張りついて、パソコンを叩くだけでいいのだろうか、という意識変化はありました。部分的にリモートワークを取り入れたり、試験的にタブレットのみで作業する日を設けたり、それまでもトライアンドエラーでさまざまなことに取り組んではいたんです。

オフィス移転という機会に際し、改めてより働きやすい環境や働き方を考えてみようということになりました。移転プロジェクトにはバックオフィス部門だけでなく、デザイナーやエンジニアなど、各部門の実務層から担当者を集め、兼務で取り組むことになりました。

——プロジェクトはどのように進めたのですか。

外部の有識者やパートナーにも入ってもらいながら検討しました。特に時間をかけたのはコンセプト作りです。さまざまなアイデアを検討する上で指針にもなりますから。そうやって生まれたのが(1)オープンコラボレーション、(2)グッドコンディション、(3)ハッカブル、というコンセプトです。

オープンコラボレーションに関しては、2016年11月にグランドオープンしたコワーキングスペース「LODGE」が象徴的なものとなっています。身分証明書さえあれば誰でもコワーキングスペースとして使うことができますし、ほぼ毎日イベントが行われていて、多くの方々に参加いただいています。

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コワーキングスペース「LODGE」にはコミュニケーターが常駐し、利用者同士の交流を生んでいる。

——先ほど立ち寄りましたが、春休み期間中ということもあって、学生さんたちがワークショップに参加しているのも印象的でした。本当にどなたでも入れるんですね。

今のところ(※2017年4月現在)ドロップイン(1日)利用の無料キャンペーンを行っているので、口コミでどんどん広がってきているようです。普段ならあまり関わることのない人同士が集まり、コラボレーションすることで新たなアイデアやビジネスが生まれることを期待しています。

グッドコンディション、というのはその名の通り、社員にとっていい環境で働けるということ。プロジェクトでは「やたら空気のいい空間」なんていうアイデアも出ていましたが(笑)、実際、ここは見晴らしのいいオフィスですし、私自身も朝、LODGEに併設されているカフェで焼きたてのパンとコーヒーを買って、朝食をとりながらメールチェックをするのが日課になっています。ランチビュッフェやマッサージルームなど、社員が心地よく働ける環境が揃っていると思います。

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LODGEには社員食堂「BASE17」とカフェ「CAMP17」が併設されている。

ハッカブル、というのはいちばんIT企業らしい言葉ですね。常に進化しつづけるというか、変化しつづけるという意味です。オフィスレイアウトも変更できますし、床や壁などもわざと未完成のような感じになっています。働き方としてもさまざまな取り組みをはじめていますが、いろいろとトライアンドエラーしながら進めていきたいと考えています。

コミュニケーションが活発になる環境と仕組みづくり

——新しいオフィスに来られて、社員の働き方はどう変わったのでしょうか。

全館フリーアドレス制になって、よりコミュニケーションを意識するようになりました。以前は同じチームの社員がだいたい周りにいて、話さなくてもなんとなくわかったような気になっていましたけど、今は本当にバラバラ。約6000人の社員が社内でノマドワークをしている感じです。社内サービスを使えば、該当の社員が今、社内にいるのかいないのか、社内のどこにいるかがわかるようになっていますし、各フロアの混雑状況もわかるようになっています。ですから、誰かと話したい場合はきちんとセッティングしなくてはなりません。

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執務スペースのデスクはあえてジグザグに置かれ、会話が生まれるような仕掛けとなっている。

——上司からすると、部下が近くにいないというのは不安になりませんか? どこかでサボっている人がいるのではないか、と考えてしまうとか……。

むしろ、今までは多くの企業で、そういった部分が曖昧だったのかもしれません。目の届く範囲にいれば、「仕事している」と思われて、こっそり業務に関係のないネットサーフィンをしていても問題なかった(笑)。けれどもこれからは、明確に成果が問われますし、上司は部下が何をしているのか、どんな課題に取り組んでいるのか、厳密に理解しておかなくてはならなくなった。上司と部下とのコミュニケーションを重視し、信頼関係を築くことが重要となったのです。

だからこそ、対面して話し合う時間の重要性が高まったと言えます。IT企業ですし、「メールやチャットでいいんじゃない?」と思われがちですけど、これだけの規模になると、社員ひとりで完結するような作業はほとんどありません。チームワークが主体となりますし、前提となるんです。エンジニアも「ひとりで黙々とコードを書いている」ようなイメージを持たれがちですけど、実際には直接会話したほうが早いんですよね。

ヤフーでは2012年から上司と部下で約30分間対話をする「1on1ミーティング」を週次で実施するようになりました。おそらく、これが「働き方改革」の前提となっていることだと思います。当初は上司ばかりが一方的に話してしまったり、「何を話したらいいのかわからない」という戸惑いの声もあったりしました。けれどもこれはあくまで部下のための時間なのです。部下の課題や業務の進捗状況を確認しながら、それに対してアドバイスを行います。導入当初は毎回サーベイを行い、部下の満足度の低かった上司を中心に、対話のための研修を行いました。現在ではマネージャーにも「部下のための時間を取る」という意識が定着し、習慣化したと思います。

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——対話の時間を習慣化することで、上司と部下とのコミュニケーションが活発になるということですね。

そうですね。そもそも、マネジメントのあり方が変わってきたのです。それまでは「俺の背中についてこい」というようなリーダーシップでガンガンやっていたけれど、後ろを振り返ってみたら誰もついてきていなかった……ということが起こり得ました。「自分が手を動かしたほうが早い」というようなプレーヤータイプの上司は特にそうですよね。

けれどもこれからは、フォロワーシップ。「この上司についていきたい」と思われるような上司がいて、部下が能動的に考えて職務を果たしていくのが理想です。ただ、そうなると前者の行き場がなくなるのかというと、そういうわけではなくて、プレーヤーとして優れた人は専門職として評価していく、ということ。「配役」というか、それぞれにふさわしい役割や働き方を考えていく、ということですね。

また、会社と社員との関係性、組織のあり方も変わってきたように思います。これはプロジェクトのアイデアが採用された例ですが、当社はフロアの最下層に社長や役員の執務スペースがあります。典型的な組織はピラミッド型で、なんとなく「上にいる人がえらい」みたいなイメージがありますけど、これからは会社と社員がイコールパートナー(対等な関係性)のような感じ。社員一人ひとりが輝ける環境、舞台を会社が用意していくことになると思います。

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労働時間はまだまだ最適化できる

——新たな取り組みといえば、「週休3日制の導入検討」も話題となりましたね。

そうですね。ただ、それが絶対的なゴールというよりは、あくまで選択肢の一つとして考えています。産業革命以降、テクノロジーによって労働時間がどんどん減ってきた歴史があります。けれども週休1日から2日になって、これだけ世の中が進んでいるにもかかわらず、なぜ労働時間がなかなか減っていかないのだろうというのが率直な疑問ですよね。インターネット企業として、もっと解決できることはあると思いますし、率先してチャレンジしていくべきだと考えています。働き方をアップデートしていく中で、労働時間を最適化し、自分のための時間や家族との時間も含めて全体バランスを良くしていきたいんです。

これまでは日本人の場合、労働時間が大半を占めていましたが、そこにもっとも最適化の余地があると思うんですよね。当社には「最大の成果を最少の時間で」というのが標語としてあり、それを実現すべく会議の削減や労働時間削減、生産性の向上に取り組んでいます。

——ビジネスパーソンの中には、既に最大限生産性を上げているつもりだけれど、なかなか労働時間が減らないという悩みを抱えている人もいます。

そうですね。自分自身としても、「最大の成果を最少の時間で」というのをどれだけ達成できているかどうか、というのはいつも自問自答しています。今、個人的に実践しているのは、基本的に19時までしか残業しない、ということ。そうすると、どうしてもそれまでとは異なる進め方をしないと時間内に収まらないんです。

たとえば、以前なら惰性で出ていた会議を思い切ってやめてみるとか、いつもよりちょっと早めに出社して業務に充てるとか。でも、そうやって働き方を変えてみると、むしろメリットのほうが大きいんですよね。「自分がやらなくては」と思っていた業務も、意外となくても困らなかったり、私が会議に出ないほうがむしろ部下も自律的に考えられるようになったりする。全社的にも、「自分が発言をしない会議には出ないようにしましょう」といった形で、会議を削減する取り組みを行っています。ただの情報共有を目的としているなら、議事録や資料で十分じゃないですか。

ヤフーでは2016年10月に「Yahoo! Value」という社員の行動指針を新しくしたのですが、掲げているのは「All Yahoo! JAPAN」「個のチカラ」「発見・提案・改善」「圧倒的当事者意識」「やりぬく」というもの。「IT企業で、今さら『改善』?」なんて思われるかもしれませんが、「オープンコラボレーション」とか「ハッカブル」などと掲げる以上は、やはり足元にはしっかりとしたベースが必要なんですよ。それが、細かいところも改善していく姿勢を失わないことだと思います。

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働き方を選び取ることで大きな幸せが得られる

——「どこでもオフィス」や「週休3日制の導入検討」など、傍目にはまさに今、先進的な働き方を実現しようとされているように感じるのですが、ヤフーにとっての「理想の働き方」はどういったものになるのでしょうか。

究極的には、やはり社員一人ひとりの幸せを実現していきたい、というのがあるんですね。その理想に向かって、どんな働き方があるんだろうか、と試行錯誤しているところです。社員と会社がイコールパートナーとして、社員が活躍できるための舞台を会社が用意していくわけですが、そこに働き方の選択肢を増やすことで、多様な社員のあり方が可能となります。そしてそのぶん、社員には会社や社会に貢献するようなアウトプットが求められているということです。

働き方の選択肢が増えることは一見ラクそうに見えるのですが、一方で責任を伴うとも言えます。厳格な就業規則の中で「これはダメ」「こうしなさい」と決められているというのは、厳しそうに見えて、意外とラクなんですよ。けれども柔軟なルールで「これはやっていいんだっけ?」「こうしたほうがいいのでは?」と考えないといけないというのは、社員にとっても難易度が高いんです。

——今までなら「大企業勤めで、そこにいれば一生安泰」みたいなところがありましたけど、選択肢が増えるということは、まずそれを選び取らなきゃいけない、ということですもんね。

そうなんです。「自分がどう働きたいか、どう生きたいのか」というのを答えられるようにしていかなければならない世の中に変わってきていると思うんですよね。興味深い例があるのですが、当社の「どこでもオフィス」というのは、テレワークを行うことで、さらにいいアイデアを生み出したり、業務効率の向上につなげたりするための制度なんです。連絡が取れるのであれば、どこにいてもいい。それを月5回まで(※2017年4月時点)認めているのですが、案外、みんなそこまで積極的に使わないんですよ(笑)。

もちろん、この場所を「社員が来たくなるような快適なオフィス」にしたから、というのはあるのですが、おそらくこれには日本人的な性格も関係しているのではないかと思っていて。やはりどこか「見られている」ほうが安心するというか、まだまだ振り切れていないのかもしれません。これが、本当に社員一人ひとりが自律的になっていけば、みんなバンバン「どこでもオフィス」を使って、パフォーマンスをさらに上げられるようになってくるのでしょう。

新しい働き方は、上司と部下双方にとって難易度の高いものではありますが、それがうまく機能していくと、より強い個人、強い組織になって、それだけ一人ひとりが得られる幸せも、大きなものになるのではないかと思いますね。

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WRITING:大矢幸世+プレスラボ PHOTO:伊藤圭(人物)

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