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オリヴィエ・アサイヤス監督『パーソナル・ショッパー』インタビュー

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シャネルが衣装提供したことも話題のオリヴィエ・アサイヤス監督の最新作『パーソナル・ショッパー』が、ついに日本上陸する。本作では前作『アクトレス~女たちの舞台~』で助演を務めたクリステン・スチュワートを主演に迎え、パリを舞台に型破りなサスペンスを完成した。多忙なセレブリティーの代わりに服やアクセサリーを買い付ける“パーソナル・ショッパー”として働く主人公が、別人になりたいという秘めた欲望に飲み込まれ、不可解な出来事に巻き込まれていく。本作でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞したフランスの鬼才に、作品に込めた思いを聞いた。

—まずは本作の具体的なアイデアが生まれたきっかけについてお聞かせください。そのきっかけに、主演のクリステン・スチュワートの存在は関係していますか?

アサイヤス「前作『アクトレス~女たちの舞台~』の直後に、本当はトロントで別の作品を撮る予定だったんだ。でも、撮影直前に頓挫してしまった。それで僕はパリに戻り、新しいプロジェクトを書き始めた。その時はもちろん、『アクトレス~女たちの舞台~』の持つエネルギーや同作が受けた反響にインスピレーションを受けた状態だった。僕にとって、あの作品における最もエキサイティングなエレメントは、クリステンとの関係だったんだ。映画の制作過程で、彼女が非常にユニークな女優で、今後も一緒に模索できることがたくさんあると気づいた。僕はおそらく、そのことがきっかけでこのストーリーを書き始めたのだと思う。『パーソナル・ショッパー』はある意味、表面下にある目に見えないものを題材にした『アクトレス~女たちの舞台~』に続くストーリーなんだ。本作にもそのような側面が描かれている。僕は目に見えない存在を主題にした映画を撮りたかった。そして、それにはクリステンが必要だった」

—「ティーン向けのヴァンパイア映画(『トワイライト』シリーズ)の女の子」というイメージが強かったクリステンですが、前作『アクトレス~女たちの舞台~』で新たな魅力を感じました。そして本作『パーソナル・ショッパー』でも、等身大の女性を良い意味で生々しくリアルに演じられていますが、どのような演出をしたのでしょうか?

アサイヤス「僕は以前から彼女の演技が好きだったんだ。『トワイライト』シリーズは2本くらいしか観ていないけれど、ショーン・ペンが監督した『イントゥ・ザ・ワイルド』や『ランナウェイズ』、『オン・ザ・ロード』などを観て、とても特別な女優だと思っていた。そして、『トワイライト』シリーズを終えた彼女が、自己の再改革を必要としているように感じたんだ。当然ながら、ああいう映画を永遠にやっているわけにはいかないからね。僕らはお互いにとって、ちょうど良いタイミングで出会った。
『アクトレス~女たちの舞台~』は決してクリステンを念頭に置いて書いたわけではなく、あの世代のアメリカ人女優であれば誰でも演じることができた。でも、僕は彼女に魅了されてキャスティングした。とはいえ、お互いがここまでうまく機能できるとは予想していなかった。こんなにも共通点が多いとは思いもよらなかったよ。それは『アクトレス~女たちの舞台~』の制作過程で気づいたことなんだ。僕たちは世代もバックグラウンドも全然違うけど、直感的、本能的、そして分析的に映画にアプローチするという点で、共通点がたくさんあって驚いたんだ。クリステンとの関係は、演技だけではなく、映画自体への思いが似ているところにある。映画製作において、お互いに同じ理想を掲げているんだと思う。
一緒に手掛けた作品、中でも『パーソナル・ショッパー』は、我々の奇妙なコンビネーションによる産物だ。この映画では、彼女はただ単に私にこの映画を作らせてくれた女優というわけではなく、映画にとってのインスピレーションというだけでもなく、この映画を僕と一緒に作ってくれた共同クリエイターなんだ。映画作家として、自分と同じ感覚を持った、自分を投影できる存在が作品の中心にいてくれるのは、とてもエキサイティングなことだよ」

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—前作『アクトレス~女たちの舞台~』と本作『パーソナル・ショッパー』はセレブリティーの世界を描いていますが、実生活でセレブの世界に生きるクリステンは、劇中ではアシスタント役を演じています。彼女にこのような役柄を与えた理由は?

アサイヤス「最もわかりやすい説明としては、クリステンはメジャーな映画スターであり、現代のセレブ文化の大きな一翼を担っているけれど、それを重荷に感じているように思うんだ。演技やキャリアといった観点からして、彼女はセレブ文化をさほど好きではないように思えるし、それによって助けられることもあまりないのではないかな。僕たちは一緒に手掛けた作品の中で、そのようなセレブ文化から距離を置いている。2つの作品では、セレブとしての重荷を彼女の背中から下ろして、他の誰かに背負わせているんだ(笑)。『アクトレス~女たちの舞台~』ではジュリエット(・ビノシュ)、そして『パーソナル・ショッパー』ではノラ(・フォン・ヴァルトシュテッテン)にね。言い換えれば、どちらの作品でも、僕の興味が映画スターやセレブとしてのクリステンではなく、人としての彼女にあることを示している。そういった意味では、これら2つの作品では、セレブというフィルターを通していない、最もありのままのクリステンの姿を見ることができるんだ」

—クリステンが本作の共同クリエイターだとおっしゃいましたが、彼女の右腕に入っているゲルニカのタトゥーは、『アクトレス~女たちの舞台~』の役作りでフェイクタトゥーとして入れたものだそうですね。彼女はそれを後に実際のタトゥーとして入れたそうですが、それも共同クリエイターであることの証なのでしょうか?

アサイヤス「そうなのかな、わからないよ(笑)。僕の記憶の限りでは、確かに『アクトレス~女たちの舞台~』の役作りで入れたフェイクタトゥーの一つだったように思う。なぜ本当に入れたのかは聞かなかった」

—これまでに作品の中で多くの女性を描かれていますが、監督にとって、創作の源としての女性とはどのような存在ですか?

アサイヤス「難しい質問だね。僕は女性にインスパイアされた初めてのアーティストというわけではないし、それは人類の歴史の一部だからね。僕はそこにものすごく小さい一章を加えただけで(笑)。それはさておき、僕は自分がなぜ女性にインスパイアされるのかを理解しようとしている。究極的には、僕らが生きる今世紀やその一つ前の世紀における最も魅惑的な歴史上の事件は、女性たちがそれまで持っていなかったステイタスを得たことや、社会がそれを受容するようになってきたということではないだろうか。女性たちが社会における自分たちのポジションを、自分たちの手で改めて獲得している、それはすごく大きな出来事だと思う。そして、僕はそれに必要とされるエネルギーにとても感じるものがあるんだ。そういったエネルギーはエキサイティングでモダンな登場人物を作り上げる。さらに、本質的に僕はフェミニストなのだと思う。現代社会のすべての悪はマチズモ(男意気)の危機から生まれるんだ。戦争もギャングスタラップもね(笑)」

—冒頭から主人公のモウリーンが霊媒師だったりと、パラノーマルな要素が含まれています。でも、彼女は自身のアイデンティティやジェンダーに疑問を抱く、多くの人が共感できそうなキャラクターで、本作の主軸には彼女の成長物語が描かれているように感じました。そこにあえてホラー的な要素を取り入れた理由は?

アサイヤス「自分が思い描いていたように物語を伝える上で、必要な要素だったから。モウリーンはとても孤独で、一人で過ごす時間が多い。彼女の周りの多くの出来事は想像の中で起きていて、現実世界との交流は非常に少ないんだ。不安や恐怖、混乱といった彼女の感情や、そういった感情が生み出すバイオレンスを、観客に分かち合ってほしかったんだ。それに、ジャンル的な要素を付与することによって、そういった感情をより物理的にすることができる。僕にはそれが必要だった。キャンバスに絵を描くようなもので、ジャンル的な要素も色彩のように使っているんだよ。特定の場所に赤が必要だからといって、キャンバス全体を赤く塗る必要はないんだ」

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—モウリーンはファッションという非常にマテリアリスティックな世界において、非常に孤独な生活を送っています。その中で彼女は2つのコミュニケーションで世の中とつながりを持とうとしているように思えます。一つはテキストメッセージで、前作でも使われていましたが、本作でテキストメッセージを使用した意味は?

アサイヤス「僕はただ、テキストメッセージを今の世界を描く上で無視できない事実として捉えている。良いとか悪いとか特定の意見を持っているわけではなく、それは今の世界で起こっていることなんだ。もし現代の世界や人物を描写したければ、スマートフォンを含むコミュニケーション方法やネットワーク間における機能、僕たちの周りにある目に見えない波長は必要不可欠だからね。
テキストメッセージのシーンの撮影は本当に難しかった。画面上の内容を撮って、それに反応する役者の演技を撮るのはすごく難しい。でも、その複雑さこそが現代社会を表しているんだと思う。それに、目に見えない誰かと交信するということは、インターネット文化の一部でもあると思う。世の中にはびこっているもので、そこには何ら奇妙なことはない。今のカルチャーの一部なんだよ」

—劇中ではスピリチュアルなコミュニケーションも描かれています。ヒルマ・アフ・クリントやヴィクトル・ユーゴーら、19世紀の人物がフィーチャーされていますが、時代的な奥行きを取り入れることを意図されたのでしょうか?

アサイヤス「そういうわけではなくて、現在に何か過去と関係するものを投影するというアイデアに興味があったんだ。目に見えないものと交信することがファンタジーではなく科学として信じられていた、特定の時代だよ。19世紀末の短い期間には、写真や電磁波、X線、電話など、衝撃的な新発見がたくさんあった。それだけに、死者とも真剣に交信しようとしていた時代だった。ヴィクトル・ユーゴーのような偉大な現実主義者や作家でさえ、そういった新しい現象に魅了され、2年間毎晩スピリットと交信し、心の底から信じていたそうだ。つまり、スピリチュアルな存在や見えないものを信じるのは、そうクレイジーなことではないということを描きたかった。
ヒルマ・アフ・クリントはとても重要なアーティストで、モダンアートの生みの親だ。すごいのは、彼女の作品は一世紀に渡って発見されなかったということ。我々は今になって、100年越しの視点で、彼女が当時の美術史における重要な存在だったことに気づいたわけだ。20世紀の抽象画が生まれた源でもあり、それが無名の女性アーティストだったというのは、すごいストーリーだと思う。
たとえばアメリカのジャンル映画では奇妙な宗教観があって、見えるものが善、見えないものが悪で、現実という見えるものの裏に邪悪な何かが渦巻いているというような世界観が定番になってしまっている。僕はそれとは違う見せ方、つまり目に見えないものと交信することを、よりポジティブなもの、何かクリエイティブなものとして見せたかったし、そういったものによって得られる恩恵もあったという事実を描きたかったんだ」

Photo : Eisuke Asaoka

Photo : Eisuke Asaoka

photo Eisuke Asaoka(Portrait)
interview&text Nao Machida
edit Ryoko Kuwahara

『パーソナル・ショッパー』
5/12(金)TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー
監督:オリヴィエ・アサイヤス(『夏時間の庭』『アクトレス ~女たちの舞台~』) 出演:クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガ―、シグリッド・ブアジズ
原題:Personal Shopper/2016年/フランス映画/英語・フランス語/1時間45分/シネマスコープ/カラー/5.1ch
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
公式サイト:personalshopper-movie.com
©2016 CG Cinema – VORTEX SUTRA – DETAILFILM – SIRENA FILM – ARTE France CINEMA – ARTE Deutschland / WDR
http://personalshopper-movie.com

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