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「メッセージよりもスタイルが大事」 若者たちの”お祭りデモ”とは 愛知淑徳大・伊藤昌亮准教授<インタビュー「3.11」第4回>

――現在でも続いているデモでは、デモをすることで得られる感覚を確認して強めることが目的になっているということですか?

 当人たちは、もちろん「原発反対!」ということでやっているんだと思いますが、デモの場で確認して確信したものを日常に持って帰って、それが枯れる前に皆でデモをして集まって、確かめ合う行為は必要になるんじゃないでしょうか。エネルギーや高揚体験、政治的なものになる前の、感情的なものだったり文化的なものだったりする新しい価値。それを世の中に持って帰った人たちが、会社を創ってもいいわけですし、NPO(非営利団体)を立ち上げてもいいわけです。仕事を含めて、日常で新しい価値を広めていくことです。

 『デュアルパワー(二重権力)』というレーニンの言葉があります。ウォール街デモの人たちもよく使う言葉なんですが、要するに、既存の権力を打ち負かすことが「革命」なのではなく、むしろ別の「力」を創り上げていって、その既存の力と新しい力が「二重」にある中で、「新しい力」が強くなっていけば、新しい力の方向に否応なく世の中が変わっていくということです。

 長い革命をするための戦略論だったんですが、ある意味で、その「新しい力」を創り上げていくためのシンボリックな集いが「デモ」なんだと思います。デモの中で承認し合ったものを皆が持ち帰れば、既存の国家や組織は打ち倒されるというよりも、どうでもいいものになっていきます。そこまで「新しい力」を強めることは相当大変なことだとは思いますが。

 新しい力を勝手に創り上げていくことを実践しているのが、ウォール街デモの人たちなんですが、でもそこにはやっぱり危険があって、極端な方向にいけば『オウム真理教』みたいになってしまいます。可能性もあれば危うさもあるのですが、そういうことをやっていかないともう仕方ないんじゃないでしょうか。アメリカでもヨーロッパでも日本でも、あるいはアラブ諸国でも、そういう模索をしていかないと立ち行かないところまで来ています。

 どんな社会運動でもそうですよね。フランス革命でも、ロシア革命でもそうでした。まったく新しい社会を創り上げようとすると、それが急進的に変な方向にいってしまうのは何度もあったことです。社会を創ることには付きものの「怖さ」というか、危険性です。「だから社会を創ることはダメか」というと、そうなると何も創り出せないので、時間をかけてゆっくりとやるしかありません。

――危険な方向にいく可能性もあるが、その先に新しい社会が生まれるということでしょうか?

 危険な方向にいってしまうとそこで終わりだと思います。そんなふうに終わってしまった運動はたくさんありますから。変な方向にいってしまうものもあれば、持続的に広がっていくものも生まれるんだろうということです。ただその出発点にあるのは「集合的沸騰」であって、それが今起きているんでしょう。

――今の若者たちは「出発点」に立っているんですね?

 そうです。出発点にいて、この高揚感や、何かを創り出せるという自信、そのきっかけになる新しいライフスタイルを提示する感覚、新しい価値のあり方の雰囲気などを持っていて、それらがこれから広まって、あるいは行き詰まり、展開していくんだと思います。

■ネットが新しい社会の「見取り図」になる

愛知淑徳大学メディアプロデュース学部の伊藤昌亮准教授

――それでは最後に伺いたいのですが、その「出発点」に立つ若者たちは、「新しい社会」を創るために何をしていけばいいのでしょうか?

 「新しい社会」を構築していく中で、その社会のプロトタイプ(原型・先がけ)としてあるのが、ソーシャルメディアだと思います。「ソーシャルメディア」は、「ソーシャル」というぐらいですから「社会そのもの」ですよね。ソーシャルメディアから今の社会運動が発生しているのはどこの国でも同じで、そういう意味ではソーシャルメディアが運動の起点であるとともに、そのあり方を実現していくひとまずの到達点にもなるでしょう。今のソーシャルメディア、2ちゃんねるやニコニコ動画、TwitterやFacebookを含めた新しいメディアの世界で、どういう社会を創り上げていくか、何を大事にしていくかということが、おそらく次の社会の見取り図になっていくんじゃないでしょうか。

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