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「メッセージよりもスタイルが大事」 若者たちの”お祭りデモ”とは 愛知淑徳大・伊藤昌亮准教授<インタビュー「3.11」第4回>

 そこで新しい社会システムや市民アイデンティティを創り出していこうという動きが、そのプリミティブなかたちとして、自分たちのスタイルや感情を持ち寄る新しいデモのスタイルに出ていると思うんです。これは、まさにアメリカで起きている「ウォール街を占拠せよ」とまったく同じ構造です。

――ウォール街デモと日本のデモは、どのような点で同じなのでしょうか?

 ウォール街デモは、一見はっきりとメッセージを持っているように見えますが、よく言われているのは「何がやりたいのか分からない」ということです。「我々は99%だ」と彼らは言っているんですが、だからどうしろとは主張しない。彼らがやったのは、ウォール街の近くにテントを張って、そこで共同生活の場を設け、自分たち独自のシステムを創ることでした。

 たとえば『ジェネラル・アセンブリー(総会)』という自分たちだけの集会をして討議のやり方を決めたり、自分たちでレストランや図書館まで開いたり、ウォール街という巨大な社会の片隅に「小さな社会」を自前で創っていったんです。その「社会を自前で創る」ということ自体が、「自分たちで1から創り出すんだ」という彼らなりのメッセージなんですね。

 だから「彼らにメッセージはない」という批判もやはり間違っていて、個別のメッセージよりも大事なメッセージが彼らにはあるんです。同じことが、日本とアメリカで起きています。そして、アメリカで起きた運動の元となったのは、『インディグナードス』というスペインでの運動なんですが、スペインでは若者の失業率が50%近い状況で占拠運動をやり、公園で寝泊まりして、新しく社会を創っていこうという運動を国中の若者がやったんです。

 そんなふうに全世界的に社会システムがあてにならなくなってきている中で、若い人たちが独自に「自分たちの社会」を創ろうとしている。そのきっかけをデモに求めているんです。それが新しいデモのあり方であって、そのツールになるのが音楽やダンス、グラフィティやファッション。スタイルそのものから、自分たちのアイデンティティを集合的に創り上げて、社会を創り上げるという、大きな共通性と趣旨がそこにはあります。

――日本とアメリカとスペインとでは、デモに参加している若者たちの年齢層も同じなんでしょうか?

 ウォール街デモに関しては調査した人がいて、それによると平均年齢は33歳でした。ただ最初の2週間ぐらいは、ほとんどが20代のもっと若い人たちだったようです。運動が進むに連れて40代とかもいる状況になりました。

 日本も、少なくとも『素人の乱』のデモを見てみるとやはりそれぐらいの年齢ですね。ただしその後『原水禁』のデモがあり、運動が広がっていくと、かなりバラつきが出ています。20代ぐらいの人たちと60代ぐらいの人たちの二極化現象が起きていて、両者が入り交じっているデモもあれば、別々になっているものもあるみたいです。若者グループはサウンドカーを使って、大音量で踊ったりしている。一方で、中年以上のグループはシュプレヒコールをする。それぞれ違うスタイルです。

 だから融合しているのか分離しているのか分かりにくいですね。若い人たちが見ている「社会」と中年以上の人たちが見ている「社会」は違うので、運動の眼目も違います。中年以上は「社会を変えよう」としている。若者たちは「社会を創ろう」と思っています。これは同じようでいて、ずいぶん違います。

■システムを「敵視」することで連帯を高めている側面も

「さようなら原発 5万人集会」(2011年9月19日)

――日本で「脱原発デモ」に参加している若者たちは、具体的に「敵」を想定していると思いますか?

 旧来の「市民運動型デモ」にとっては「システム」自体が敵でした。端的には「政治システム」と「経済システム」のことです。それは国家によって担われている「政治・経済の連合体」。今回の福島第1原発の事故で言うと、国家の名の下で経済産業省と東電、つまり政治と経済が結託して作っていた「システム」が、「市民運動型デモ」にとって敵だったことは間違いありません。

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