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Backlog、Confluence、Qiita:Team──コラボレーションツールによる情報共有で成果を上げる

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ヤフー全社員が「Confluence」でコラボレーション

今回のテーマは「コラボレーションツールを介したチーム開発の事例共有」。Backlog、Confluence、Qiita:Team──各製品のユーザー企業がキーノートスピーチに登壇。その製品をなぜ選んだのか、またどのように使っているのか、どんな成果が得られたのかなど、それぞれの導入事例が披露された。

最初に登壇したのは、ヤフーでAtlassianの「Confluence」の運用を担当している高橋邦洋さん。スピーチタイトルは「みんなで使おうConfluence」。高橋さんはAtlassian User Group Tokyoというユーザーグループのリーダーも務めている。

ヤフー株式会社 情報システム本部 高橋邦洋さん

ヤフーでは2005年にConfluenceを導入しており、高橋さんがヤフーに転職してきたときはすでに導入されていた。導入のきっかけは当時、ヤフー社内ではコラボレーションツールが乱立していたこと。

そこでACL(アクセス制御リスト)が提供されていたことから、Confluenceの導入を決めた。現在のデータ量はスペースが7300。ページ数は履歴込みで約1700万。カレントデータのページ数は220万となっている。

1日当たりの更新回数は2万5000。ユーザー数9800のうち85%ぐらいが利用している。単純計算すると、約8000人が1日2~3回更新している。

AtlassianではConfluence4から誰もが簡単に使えるよう、エディタを従来のマークアップからWYSIWYGへと変更した。これにより利用者は幅広く増加したが、これまでのユーザー(エンジニア)からは不評だった。

出典:Confluence for All Team by kunihiro takahashi

一方、新たにユーザーとなった非エンジニアからも、マークアップを覚えなくて良いのはよいが、マクロのWordやExcelのような使い勝手はないという不満があった。

つまりみんなが気持ちよく使うのは非常に難しいことだが、徐々にお互いが歩み寄ることで、みんながConfluenceを使えるようになっていったのだ。

Confluenceという1つのツールで情報共有したことで、得られたメリットがある。

第一は横断的な技術情報の共有ができたこと。ほかの部署が先行して作業したトライアンドエラーや手順などを共有できたり、エラーメッセージの参考となる情報がみつかるようになった。

つまり担当した作業をConfluenceに記録するだけで組織横断的な情報共有が実現した。

第二に社内での過ごし方が豊かになったこと。例えば新しいオフィスの過ごし方、駅からの最短経路、永田町のランチ情報など、全社的に興味のあるものが共有され得るようになった。

第三は全員が同じツールを使うことで組織間、業種間の壁がなくなったことだ。

今はConfluenceを使うのが当たり前の状況になっており、例えば新入社員の多くはConfluenceに日報を書いたり、Confluenceで社内の情報を知るのが当たり前になっている。

また何か知りたいと思ったら、Confluenceを検索することが身についている。

このように当たり前になるためには、まず会社として共通のツールを使わせること。そうして使っているうちに勝手に情報共有され、それが文化になっていく。

課題もある。第一は情報の責任者(不確実性)だ。第二は情報の鮮度。これらはいずれもインターネットでは当たり前なので、情報を扱う側の自己責任としている。

第三は無駄にACLをかける人がいること。あまりにもこういう人が多くなると横断的な共有にならないので、見かけたら、注意するようにしているそうだ。

Qiita:Teamを活用して全社員が情報共有

続いて登壇したのは、VASILY CTOの今村雅幸さん。VASILYは2008年に今村さんが起業したファッション×テクノロジーをコンセプトにさまざまなサービスを開発している会社である。

会員数250万人を誇る女性向けファッションアプリ「IQON(アイコン)」の他、ディープラーニングを活用した「SNAP by IQON」など、テクノロジーを活かしたサービスを提供している。

株式会社VASILY CTO 今村雅幸さん

Appleでは2012年にベストアプリ、Googleでは2014年から3年連続でベストアプリに選出され、2016年にはGoogle Playベストイノベーティブアプリ大賞を受賞している。VASILYではQiita:Teamを導入して情報共有を図っている。そんな今村さんのスピーチタイトルは「Qiita:Teamをハックして成果をあげるための情報共有方法」。

Qiita:Teamの導入は次の5つの観点で選んだ。まず第一は料金体系。スタートアップなので安いことがやはり正義で決裁もおりやすい。Qiita:Teamは安価なベース料金と人数単位での従量課金制を採用していた。

第二に安全性。重要データを多数含むため、運営会社の信頼性をチェックした。

第三は運用の手軽さ。サーバを自社で抱えることなく運用できるSaaS一択だった。

第四は権限管理があること。記事ごとに最低限の閲覧権限を設定できるものを選んだ。

第五はMac用クライアントソフトの存在。これはエンジニアからの強い要望があり、重視した。

VASILYでの情報共有の基本方針は、Qiita:Teamは「成果をより上げるため」に利用するというもの。そのため実際に会社で起こったことを、社員はもちろん、社長や取締役、アルバイト、インターンも全員Qiita:Teamに書くことにしている。

会社に関わるすべての人が閲覧・投稿できるようにしており、閲覧制限は人事情報以外、極力かけることはしていない。とにかく、ミーティングの終わり時には「Qiita:Teamにまとめといて」というのがお決まりになっている。

利用ユーザーは約35人。記事数は2万2000と、人数に対して非常に多いのが特徴だ。利用日数で割ると1日、数百記事投稿されている計算になる。タグの数は2700以上になる。

利用例の第一は日報。当社ではデイリーリポートと読んでおり、毎日、役員を含め全員が書くこととなっている。内容はその日に行った業務、うれしかったこと、困ったことなど。うれしかったことを書くのは良いフィードバックループとなるからだ。そして困ったことを書くことで、助け合いの文化が醸成される。

プロジェクトでも利用している。社内ではプロダクトごとにいろいろな施策が走るため、毎回、プロジェクト単位で記事を作成し、情報を共有。チーム間での認識の齟齬をなくしている。

その記事を見ればプロジェクトの目的は背景、スケジュールや議事録、要求仕様、デザイン、画面一覧、見積もりなどの情報とリンクされており、すべてが分かるようになっている。

また従業員一覧もQiita:Teamで共有している。SlackAPIと連携してメンバーリストを自動更新。従業員一覧にはあだなやポジションなども記述され、座席表も添付されている。コミュニケーションの円滑化に結びつけている。

その他、プロフィールやある社員の名言集など、他の社員をよく知るための面白コンテンツも共有しているという。

Qiita:Teamで情報共有し、エンジニアの成果を上げる

エンジニアの成果を支える取り組みとしては、次のようなVASILYエンジニアリングマニフェスト(行動指針)を定めている。

1.技術でユーザーの問題を解決する
2.技術的チャレンジをし続ける
3.品質に責任を持つ
4.誰にも負けない分野を持つ
5.インターネットに貢献する

この5つができる仕組みをQiita:Teamで実現した。特に5のインターネットに貢献する上で大事になるのが、アウトプットである。

OSSへのコミットや、自らの学びをOSS化して公開、テックブログや個人のブログなどで知見を発表するほか、勉強会への参加や開催、登壇を率先して行ったかなどを評価する軸として設けており、これをQiita:Teamを使って共有している。

VASILYでは毎週1回、エンジニア間で情報共有するため、TECH MTGを開催しており、その議事録もQiita:Teamで共有している。フォーマットは決まっており、テックブログスケジュールやQiita:Teamの発信量、勉強会の登壇や参加情報を掲載するほか、採用活動状況やファッション関係のIT技術、論文などを共有している。

また議事録下にはコメント欄を設けており、その週流行った記事を貼り付けるようにしており、毎週金曜日のランチ時間に、張られたリンクを紹介し合うということも行っている(TECH LUNCH)。これによりインプットすることや情報共有することを習慣づけているのだ。

Qiita:Teamの特徴はAPIがたくさんあること。そこでAPIを活用し、記事検索や記事投稿、メンバー取得、コメント投稿など、エンジニアが勝手にハックして自動化している。

例えばTECH MTGの記事を作る作業を効率化するため、Slack/Hubotと連携し、TECH MTGの資料を自動作成している。またHubotの活用し、リリースノートも自動作成できるようにしている。またbitbar拡張を活用し、TECH MTGの資料へのアクセスをショートカットできる仕組みも提供している。

さらにChrome拡張を活用し、TECH MTGへのコメントをブラウザから1発で投稿できる仕組みも作っている。このChrome拡張についてはOSS化している。

Qiita:Teamを導入したことで、社員の8割以上がOSSに貢献、勉強会への参加や登壇回数も増加。テックブログも毎週更新できるようになるなど、インプット&アウトプット量が増加している。

特に入れ替わりが激しいスタートアップの組織で成果を出すためには、情報共有は必須。Qiita:Teamは多くのAPIがあるので、いろいろハックもできるし、有効活用すればエンジニアリング組織の成長にも役立つツールだ。

CodeZine編集部ではBacklogを活用し制作物の進捗を管理

最後に登壇したのは、翔泳社「CodeZine」編集部長の斉木崇さん。

スピーチタイトル「Backlogを使って、デジタルファーストの新規事業を立ち上げてみた」からもわかるとおり、「CodeZine」編集部ではヌーラボが提供するコラボレーションツール「Backlog」を新規事業の立ち上げに活用しているという。

株式会社翔泳社 CodeZine/MONEYzine 編集長 齊木 崇さん

翔泳社は「CodeZine」や「MarkeZine」「EnterpriseZine」などのオンラインメディア、開発者のためのイベント「デベロッパーズサミット」などの運営、技術書の出版などの業務を展開している。

CodeZine編集部では、2014年3月からBacklogを使っている。Backlogを導入する前、当編集部ではオンラインメディア「CodeZine」の記事、ニュース、書籍制作、イベント運営などタスクが多岐にわたり、進行管理が煩雑になっていた。

また、いち編集部あたり1.5~3人の少人数でまわしているため、仕事が属人化しがちになる、という課題もあった。例えば急に1人が休むと状況がわからず、業務を引き継ぐことができなかった。

これらの課題を解決するためツールを導入することにした。Backlogを選んだ理由はいくつかある。

第一にASPサービスであること。最初はVPSを借りてRedmineの導入を検討したが、メンテナンスコストを考えるとASPサービスの方が、コストを抑えられると考えた。

第二に編集部の状況把握にガントチャートを使えること。

第三に原稿を著者の方にも見てもらったり、履歴が管理できるようクローズドなGitレポジトリがあること。

第四は請求書支払いに対応していること。

第五はユーザー数無制限の月額課金プランがあったことだ。

当時抱えていた課題をが解決できたことが最大の成果だが、そのほかにもメールの転記などにより、編集部員動詞が互いの状況や、連載企画の重複などを把握できるようになった。

また、思った以上に検索機能が便利ということにも気付いた。例えば書籍「システムテスト自動化 標準ガイド」の制作にBacklogを活用。同書は執筆者が複数人おり、そのいずれもがエンジニア。したがってGitでの原稿管理から、課題による連絡までフル活用した。

また翔泳社デジタルファーストという新たな事業のプロジェクトにも活用。デジタルファーストでは電子書籍やプリントオンデマンド(POD)といった新たな出版方式を利用して、従来の書籍では企画が成立しづらい書籍を提供するプロジェクトを進めている。

海外ではすでにベータブック(β版からの提供)、サブスクリプション(定額課金)といった電子書籍を活用した技術書の提供が以前から行われており、それを日本でももっと流通させたいと考え、現在制作ノウハウを蓄えて低コストを図っている。

すでに流通しているデジタルファーストの商材としては「『シェル芸』に効く!AWK処方箋」「ITは本当に世界をより良くするのか?」などの新刊やデブサミと連携したキャリアインタビューモノ、さらには技術系同人誌改訂版などがある。

デジタルファーストの制作の流れは、自動組版(ページレイアウト)の技術を活用している。日本語組版で実績のあるReVIEWを採用。POD本の制作については、当初はTexを使用していたが、いまはCSS組版のViVliostyleを採用している。

デジタルファースト制作は通常業務+αの活動となっているため制作が停滞しがち。そこでWeb連載を加筆修正したカットアップ書籍にターゲットを絞っている。

またWeb記事からの原稿整形や組版を編集プロダクションに協力してもらっている。執筆者、編集プロダクション、編集部が原稿の管理から連絡まですべてコラボレーションして制作するため、Backlogの活用が欠かせないのである。

Backlogを使って制作した結果、「プロジェクト・デザイン・パターン」は17年2月時点で2650部を売り上げた。その結果、書店流通も実現した。

デジタルファースト事業自体の現状は、ロングテールのバラツキはあるものの、中にはヒット作も出てくることがわかった。

来期は各編集部を巻き込んで定期的な刊行を計画している。ただデジタルファーストは書店には置かれないので、プロモーションで売れ行きが変わる。そのためマーケティングの体制づくりが必要になるだろう。

今後はWebhookの仕組みを利用し、自動化/CIの形に持っていくなど、さらにBacklogの活用を検討している。

ベータブックやスマホアプリのような電子書籍のアップデート提供、サブスクリプション提供という選択肢も視野に入れている。

ただ、他の編集部だとソフトウェア開発の知識がないので、原稿管理などの部分で仲介が必要になるといったことは今後の課題である。

3人のキーノートスピーチに対し、Q&Aも活発に

3人のキーノートスピーチの後には、登壇者へのQ&Aタイムが設けられた。

「Qiita:Teamを使って日報を書くのは面倒に思う人たちもいると思う。そういう人はどうすれば書くようになるのか」という質問に、今村氏は「トップダウンで必ず絶対書いてほしいと言っている。定着するまではあまり良い方法ではないが、日報を書いていない日は休んだと見なすと伝えている。1年ぐらい経つと、日報に書く有用性を感じ、自主的に書くようになった」と回答した。

ヤフーの高橋さんへは「新入社員にもどうやってConfluenceを定着させるのか」という質問が投げかけられた。「新人研修を行う部署に、その辺の教育を任せている。ただ、最初から自発的に使うことはあまりないですね」と回答。最初からバンバン書く人もいるが、そういう人は「尖ったエンジニア」だと高橋さん。

また「投稿されたコンテンツの質を向上するためにやっていることがあれば」という質問に、今村さんは「例えば同じテーマで古いドキュメントを見つけると、見つけた人が削除している。そうすることで、ノイズを削除している」と回答。

斉木さんは「まだ編集部単位でしか使っていないので、とにかく情報を入れていく段階。基本は自分のための進捗管理に使って、それが他の人に役に立てばいいというスタンスで使っている」と回答した。

最後のアクセス制限に関する質問に対しては「最低限のアクセス制限だけで、社員一人ひとりの考え方が見えるので、ほとんどのものは公開してもいいのではないか」(高橋さん)、「採用時の情報など、一部、マネジャーしか見られないコンテンツもあるが、基本はフルオープン」(今村さん)、「社外秘のものは別にしているが、後はプロジェクトに任せている」(斉木さん)と回答した。

フリードリンク、フリーフードでざっくばらんな雰囲気の中で行われる「Geeks Who Drink in Tokyo」。Q&Aの後には懇親会も行われ、参加者は大いに盛り上がっていた。今度はどんなテーマで開催されるのか、気になる人はこちらの「Nulab Events」をチェックしてみよう。



美味しいケータリングの料理や参加企業のTシャツやノベルティグッズなども振る舞われた。

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