ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
「ジャスティス・リーグ」特集サイト

脳からみる!変性性認知症高齢者の食事動作能力について

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫

アルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症などの変性性認知症(※)は、時間の経過とともに進行します。進行の速度はそれぞれの認知症の種類によって異なりますが、進行度合いによっては、ADL(日常生活動作)に大きく影響します。

脳血管性認知症は、片麻痺など「目に見えてわかる」症状があります。ところが、変性性認知症は見た目では分かりにくいことが多いため、認知症と診断されていても対応が遅れることがあります。特に「食事」という行動は、日常生活において人間の基本的欲求における行動であるため、入浴や着脱、歯磨きといった日常生活動作よりも比較的長期に「食事」という動作が成り立っています。

そのため、認知症が進行すると食事動作能力が突然低下するといったことも見受けられます。ここでは変性性認知症に絞りお話をさせていただき、読者の皆様の介助のヒントになれればと思います。

※脳の神経細胞そのものが変化して起こる変性性認知症(アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症)と、脳梗塞などの疾患や脳挫傷といった外的要因で起こる認知症(脳血管性認知症)がある。

脳の部位により変わる症状

変性性認知症は、侵される部位によって神経心理学的症状と食事に関する問題が生じます。症型毎に異なる点として、侵され(萎縮が起こる)始める部位が違うことが挙げられます。漠然と「認知症」と捉えるのではなく、その人をよく観察(人物像やその人の歴史なども含めて)し、病気の種類や侵されている部位、障害されている箇所などを把握してケアにあたるのはケアの質も違ってきます。

アルツハイマー型認知症の動作について

前頭葉が侵されていると、注意障害や感情の起伏が激しかったりといった症状が観察されます。そのため、食事に集中できない問題が発生します。側頭頂では、失行や失認などの高次脳機能障害を発症しますので、食べ物自体がわからない、お箸やスプーンの使い方がわからない、側頭葉内側ですと海馬がありますので、記憶障害を発症し食べたことを忘れる、食べる行為を忘れるといったことがあります。

前頭葉が萎縮されている型は、先ほども述べたように注意障害があります。そのため、大勢の方と一緒に食事をすることは注意散漫となる場合もあります。食事が配膳されているにも関わらず、手をつけていないといったことが観察されたら、他者の会話が気になって食事が取れていないかもしれません。私の経験ですが、ひとりで食事を摂れる環境を設定することで、食事が摂れるようになったことがあります。

レビー小体型認知症の動作について

幻視が特徴的ですが、視空間認知障害も見られます。そのため、食事に虫がいるなどと言い、食べないことがあります。またスプーン(お箸)と自分の口の距離感が合わず、勢いがついたまま口に入れてしまうなどの行動が観察されることがあります。

床にわざと食物を落とす方が観察されたりしますが、もしかしたら本人だけに見えている「虫」を投げ捨てているのかもしれません。介護者から、「どうして食べ物を床に落としているの?」と注意を受けると、苦痛を感じられる方もいらっしゃいます。

変性性認知症の場合、麻痺などがないために「自分は正常だ」と認識されている方が多いです。周りの環境に注意を奪われたり、虫を捨てているだけなのですから、注意を受けることで自分の行動は正しいのかと不安に陥ります。会話や社会性が成り立っていることが多いので、取り繕う言動や不安や苦痛によるBPSDを進行・増加させてしまいます。

前頭側頭型認知症の動作について

前頭側頭型認知症で前頭葉が障害された場合、代表的な神経心理学的症状としては脱抑制・常同行動などがあります。隣の人の食事を食べたり、お腹がいっぱいでもさらに食事を要求したりといった症状が現れます。前頭側頭型認知症の側頭葉が障害された場合は失語があります。脳血管性認知症でなくとも会話ができなくなり、何を食べたいのかわからないといったことがあります。

リロケーションダメージによる食事力低下

以前、リロケーションダメージについて述べさせていただきましたが、施設や病院などにおける入所・入院直後はリロケーションダメージを受けやすい時期です。

そのため、認知症の方の「食べる機能」がいつもよりも低下していることがあります。変性性認知症の種類とその神経心理学的症状を把握し、入所・入院以前の食行動をご家族などから詳細に聞き取りアセスメントを行う事が必要と思われます。

関連記事:なぜ周辺症状(BPSD)は起きてしまうのか?脳機能から見る認知症ケア

食事を食べないという息子さんからの訴え

以前、私が相談を受けた事例を紹介したいと思います。

相談者:息子
相談内容:「母が食事を摂らない。せっかく料理したから何度も促すが、食べないのでイライラするんだ。」

対応方法

事前にお母様の脳MRIを診させていただきましたが、前頭葉の萎縮が著明でした。次にお母様の普段の食事の様子を観察するため、朝昼晩の食事の時間帯に自宅に訪問させていただきました。すると、テレビをつけていたことや、テーブルクロスが花柄であったため、そこにお母様の注意が注がれていたことが見て取れました。

早速、テーブルクロスを外し、テレビも消してもらいました。また、息子さんは別の部屋で食事を摂ってもらい、できる限りお母様が集中して食事を摂れる環境を作りました。環境設定をして3日後には、全量摂取が可能になりました。

息子さんは仕事で忙しい中、母親の介護に一生懸命でした。後で息子さんから伝えられたのですが、ついついイライラしてお母様にあたることもあったようです。

さいごに

嚥下機能の5つの過程(先行(認知)期→準備期→口腔期→咽頭期→食道期)が正常であるにも関わらず、なかなか食事に手をつけない場合は、認知症の種類に応じたアセスメントと、それに基づく支援を行なっていただければと思います。

本人にとっては食事を摂らない(摂れない)理由があります。私が用いるポイントですが、アルツハイマー型認知症などの変性性認知症は進行性ですので、侵されている部位と病期に応じたケアを実施しております。脳血管性認知症の場合は階段状に増悪しますので、損傷部位に応じたケアを実施します。

食はケアの始まりとも言われますので、この記事をお読みになられた方の日々のケアの一助になれたら幸いです。

関連記事:認知症の病型別!摂食嚥下障害の特徴、食事介助のポイント

この記事を書いた人

中村洋文

鹿児島県沖永良部島出身
介護福祉士 / 理学療法士 / 実務者研修教員/その他
病院、知的障害者施設、デイサービス管理者、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム等の医療・福祉施設にて勤務。現場だけではなく、行政側の立場としても市役所勤務の中で介護保険にも携わる。介護保険認定審査委員も歴任。現在、福祉系専門学校での講師及び居宅介護支援事業所、訪問看護等の介護保険事業を手掛ける会社の共同代表として活動中。介護医療現場、また行政側の様々な経験をもとに認知症高齢者本人とその家族の想いを教育現場や全国各地での講演会等で発信しています。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
認知症ONLINEの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。