ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
ワンダーウーマン

たったひと言のアレで認知症の症状が消えたはなし

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫
たったひと言のアレで認知症の症状が消えたはなし

介護福祉士1年目の川上陽那です。介護現場で働いていたり、家族介護をしていたりすると、本当にどうしようもできない状況になる時ってありませんか??教科書通りに、周りからのアドバイス通りに動いてみても、上手くいかない。わたしは普段、特別養護老人ホームで働いていて、そんな状況に結構ぶち当たります。

前回の記事:認知症になっても大丈夫!!!って教えてくれたポジティブばあちゃんの話

叫び続けるばあちゃんに「耐える」しかできない

うちの特養に入居されている、脳血管性認知症を持つ要介護5のばあちゃんの話。いつも、机をバンバン叩いて、「ぎゃーーー!!」って叫び続ける、ばあちゃん。

「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
投げかけてみても、教科書通りの「傾聴」をしてみても、全く止まらず、エスカレートすることも少なからずありました。

「ああもうどうしたらいいの!?!?!?!?!?!?
 私じゃどうしょもできないよーーーーーーーーーー!!!!!! 」

ってなった時、今までは耐えて耐えて耐えまくる。たまに、逃げる。どうしようもできない自分に腹がたつのと同時に、自分を押し殺して我慢することしかできてませんでした。日に日に何も出来ない自分が情けなくなってきて、
「プロとしてどうなの?!」「いやいやかっこ悪くない?!」
と自問自答するようになりました。

たった一言の挨拶で、症状がピタリと止まった

毎日、不甲斐なさをどうにかしたくて、何か変えられることはないかな~って思いながら働いていました。そしたらある日、びっくりする発見をしました。

それは何かというと、“挨拶をすると穏やかに戻る瞬間がある”ということ。日々接している中で、不穏とよばれる症状がでている時でも、挨拶をすると、ふっと我に返る時があるなぁと気づいたんです。

ある日も、ばあちゃんは机をバンバンたたきながら、叫んでいました。
「わ~今日も叫んでるなあ~。どうしようか~」なんて思いながらも、普段は仕事に入る最初の時にしか挨拶をしていなかったのを、その日はばあちゃんが叫んでいる途中に、あえていつものように挨拶をしてみました。

「◯◯さん、こんにちは~」

そうすると、すごいんです。今まで叫んでいたばあちゃんが不思議と我に返ったように、わたしの顔をみて「あら、こんにちは~。」って返してくれるんです。

「本来の姿に戻ってるやんけーー!!!」
と、叫びたくなるくらいの感動でした。

しかも!(ここからが本題です!)
こちらから「◯◯さん、どうしたんですか?」って聞くまでもなく、はっきりと、「今自分がどうして欲しいのか」を言葉で教えてくれたんです。

「あのー、ちょっと私ね、トイレに行きたいの…」
ちょっと恥ずかしそうに、小声で。認知症の症状がなくなる瞬間をみました。

「ああ、ばあちゃんこんなことが言いたかったんだ!」
と腑に落ちた瞬間でした。

本来のその人が戻る瞬間を見逃さない

そのばあちゃんが正常な状態に戻るのは、20秒~5分くらいの短い間です。けれど、それ以来私は、ばあちゃんの気分が乱れるたびに挨拶をして、「本当は何が言いたいの?」とたずねています。もちろん、失敗することもありますが、「実はお寿司が食べたいの・・・」なんて本音をこぼしてもらえる度に、心の中でガッツポーズをしています。

他の認知症を持つ利用者さんでも、似たようなケースが見られます。きっかけは挨拶だったり、こちらの他愛無い冗談だったり、色々です。ふとした瞬間に、正常な状態に戻る認知症の人は結構多いと感じています。

認知症という病気の世界に、こちらが入ろうとしても、うまくいかないことは多いです。突然スイッチが入って、興奮状態にある時には、どうしても話が通じなかったりします。

でも、「本来の自分に戻る瞬間」が分かれば、その時になにがしたいのか、なにを伝えたいのか、聞き出すことができる。

ってことをわたしはこの時、体感しました。
「本来の自分に戻る瞬間」って、たぶん我々介護者側が気がついていないだけで、いっぱいあるのかもしれない。そんな瞬間を意識してつくって、見逃さず、声を聞き続けていきたいなぁと思います。だって、じいちゃんばあちゃんのために聞いた声が、結局、介護者である自分のためになるんだもん。

※トップの写真は、私を育ててくれた大好きなばあちゃんと私です。(本文とは関係ありません)

前回の記事:認知症になっても大丈夫!!!って教えてくれたポジティブばあちゃんの話

この記事を書いた人

川上 陽那

介護福祉士。2015年に介護福祉士養成校を卒業後、20歳で上京し、都内の特別養護老人ホームに勤務。今年で2年目。2015年11月に都内の介護系イベントに登壇。2016年1月に中央法規出版「おはよう21」の3月号の表紙とインタビューを受ける。2016年3月に公開された、国境を越えた仕事(介護)を描いた映画「つむぐもの」に大きな影響を受ける。現在は施設に勤務しながら、自分が現場で体験していることと世の中の情報とのギャップを埋めるための活動をしている。旅が大好きで、将来は世界で働く「旅する介護福祉士」を目指す。

カテゴリー : 生活・趣味 タグ :
認知症ONLINEの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。