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2日で37回のプレゼンを聴いて思ったこと─澤円が伝えたい「本番で役立つ6つのプレゼンテク」

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TECH LAB PAAK報告会、LINE BOT AWARDでのプレゼンを聴いて

皆さんこんにちは、澤です。

つい先日、二日連続でITイベントに参加して、たくさんのプレゼンを聴くことができました。

一日目は、TECH LAB PAAKさんの第7期生成果報告会。こちらの報告会では、13組のプレゼンが披露されました。

私はコメンテーターとして参加し、それぞれの報告に対するコメントをさせていただきました。非常に多岐にわたる独創的なソリューションが紹介され、とても楽しいイベントでした。

二日目は、LINEさん主催のLINE BOT AWARDS。こちらでは優勝賞金1000万円をかけた作品発表を控えた皆さんに対して、プレゼンの直前講習を実施するという、なかなかの重責を担わせていただきました。

LINE BOT AWARDSファイナリスト向けプレゼン直前講習の風景

このイベントでは、24組のプレゼンターが登壇し、LINEのchatbotを使った素晴らしいソリューションが披露されました。

どちらのイベントも、登壇者の皆さんが自分たちで作り上げた製品やサービスを紹介するもので、様々なアプローチ方法で特徴やメリットをアピール。プレゼン時間はどちらのイベントもやや短めに設定されていて、5分から10分程度でした。

これだけ数多くのプレゼンテーションをまとめて聴く機会は、今までなかなかありませんでした。おかげさまで、大変多くの学びを得ることができました。

そこで感じたことをお伝えしつつ、実践的なプレゼンのテクニックを紹介したいと思います。

<機器接続>「つながらなかった場合」を想定した準備をする

いきなりテクニカルな内容ですが、とにかく目立ったのが、機器接続で手間取ってしまうグループが多かった印象です。

映像が出ない、音声が出ない、そもそも接続用アダプタを持ってきていない…。発表の場で自分たちのコンピュータがうまくつながらないことは、本当によくあることです。それを「会場のスタッフが悪い」と怒ったところで、自分たちは何も得ることはできません。

「つながらなかった場合」を想定して、いろいろな準備をしておくことは、エンジニアが自分の成果を多くの人に伝えるためには絶対に不可欠なことです。

ディスプレイケーブルはVGA、HDMIの両方を準備しておけば、現地のプロジェクターに合わせて選択することができます。MacとWindowsの両方のPCが準備できていれば、機器の相性によるトラブルを避けられる確率が大幅に向上します。

音が出なかった場合を想定して、外付けのポータブルスピーカーを持ち歩くのもおすすめです。いざとなれば、そのスピーカーをつなげて会場のマイクを前に置けばいいわけですから。

<登壇人数>人数は絞った方が絶対にプラスに働く

複数人で登壇するグループが結構いたのですが、ほとんどの場合「意味もなく並んでいる」という状態でした。

おそらく、チーム全員で発表に臨むぜ!ということだと思うのですが、見ている側からすれば一言も発することなく立っている人たちは視覚的なノイズでしかありません。

複数人で登壇する場合には、「なぜこれだけの人数が登壇しているのか」の必然性が大事です。その必然性が説明できないなら、登壇する人数は絞る方が絶対にプラスに働きます

もしメンバーの紹介もしたいのなら、最後に全員出てきて「ここにいるみんなで作り上げたサービスです!」というようなプロデュースをした方が、聴いている側も納得感があります。ぼけっと立ってるのだけは、避けるようにした方がいいですね。

<自己紹介>製品やサービスに関係ないなら徹底的に省く

出身大学や業務経歴を事細かに書いたスライドを読み上げる自己紹介を、30秒以上話してしまう登壇者がいました。

聴いている側からすれば、「話している人が何者か」よりも「どんな製品・サービスで、自分にどんなインパクトを与えてくれるのか」の方がはるかに大事な情報です。

数分程度のプレゼンテーションにおいて、製品やサービスの内容に直接関係なかったり、アイスブレイクなどの効果を期待できない自己紹介は、徹底的に省きましょう

「私は医大を出ているので、このメディカルサービスを思いつきました」とか「私は流通業で働いていたので、この物流可視化のアプリケーションの必要性を強く認識しています」といった、プレゼンテーションに厚みを持たせる内容であれば、どんどん入れ込んでいきましょう。

あるいは、サービス内容と大きなギャップによって聴衆にインパクトを与える、という方法もあります。

TECH LAB PAAKでの成果発表会で、私が賞を授与させていただいたCuelebre社CEOの梅津さんは、「妖精のいる生活」を目指して、真剣に開発に取り組んでいます。

そのユニークな内容も素晴らしかったのですが、プレゼンテーションの終盤に組み込んであった本人の自己紹介でなんと「防衛大学出身の元自衛官」ということをカミングアウト。

妖精とのあまりにも大きなギャップに、聴衆は非常に盛り上がりました。これなら、自己紹介もプレゼンを際立たせる効果がありますね。

<スライド構成>「もたらされる未来」のユーザー体験を語れ

とにかく製品やサービスを説明したがっているのがにじみ出るようなスライドがとても多かった印象です。

ビジョンや実現される未来、という視点ではなく、「この製品/サービスは何ができるか」という「モノ視点」のスライドが目立ちました。

スペック表や機能説明は添付資料で十分で、プレゼンでは「もたらされる未来」にフォーカスして、ユーザーたちの「体験」を語るのが一番大事です。

エンジニアは、ついつい機能説明に走りがちな習性があるのですが、せっかくのプレゼン機会をただの説明会にしてしまうのはあまりにもったいない。

ぜひとも、開発した製品やサービスが、聴いている人たちの生活にどんないいインパクトを与えてくれるのかを語ってください。

また、文字が多めのスライドも散見されました。短時間でしっかりとインパクトを与えるなら、文字よりも画像、さらにはデモやビデオでしょう。

できる限り文字を減らして、視覚に訴えるスライド構成にすることが大事ですね。

<立ち居振る舞い>スクリーンではなく、聴衆に顔を向けて話す

こちら、めちゃくちゃ多かったのが、「スクリーンを振り返りながら話す」という人。半分くらいがこれに該当していたのではないかと思います。

ちゃんと映っているかどうかが気になるのはわかります。でも、手元のモニターと同じものを映しているのなら、スライドやデモの切り替えの時にちらっとみれば十分ではないでしょうか。

聴衆側に顔を向けて話をしないと、せっかくのプレゼン機会を生かしきることはできません。聴衆の反応を確認することができないわけですから、プレゼンがウケているのか滑っているのか分からないままに話し続けることになります。

複数の登壇者が出てくるイベントでは、審査員やコメンテーターは「記憶に残るプレゼンをした人」だけが脳内メモリに書き込みます。そこにいかにして割り込むか。これが勝負です。

そのためには、やはりしっかりと前を向いて話さないとなかなか印象付けをすることは難しいです。私が覚えているのも、何度も視線が合ったプレゼンターの人たちばかりでした。

せっかくの晴れ舞台ですから、ぜひ聴衆の皆さんの表情を読み取りながら、全力でプレゼンテーションをしていただきたいと思います。

心配しなくても、日本のITイベントでのプレゼンで襲いかかられる可能性は高くないですし、聴いている人たちは失敗することを望んでもいません。しっかり向き合って話してみてください。

<デモ>トラブルに備えた「プランB」を用意しておく

デモは、本番でこける。これはもはやIT業界における鉄則であり不変の真理であるといえます。リハーサルではうまくいっていても、本番ではなぜかネットにつながらなかったり意味不明のエラーを吐いたりするんです。そうできてるんです、仕方ない。

このような「魔物」に襲われて撃沈している人は何人もおられました。

なので、プランBは必須です。デモが予備のデモ機を用意したり、ネット接続がなくてもできるデモを用意したり、うまく動作している状態を録画したビデオを用意したり。事前に準備できることはいくらでもあります。

一番いただけないのは、その場でどうにか復旧しようとして時間を使ってしまい、肝心のことを言えずにタイムアップ、というパターンです。だめならすぐに切り替える判断力が求められます。

むしろ、こけたことをネタにして笑いを取るくらいの余裕を持ちましょう。

独自の世界を展開した男・若狭さん登場

以前、この連載の中でLTを話題にして記事を書いたこともありますが、澤のショートプレゼンテーションへのアドバイスは以下のようなものです。
スライドの枚数は少なめに
文字数もなるべく少なく、画像などを使った印象付けにフォーカス
まっすぐ堂々と立って、落ち着いて話す
時間がないからと言って慌ててスライドを飛ばしまくったりしない

しかし、LINE BOT AWARDにおいて、上記のような定石を打ち破るプレゼンで、澤を感動させてくれた方がおられます。

若狭正生(@wks)さんという方なのですが、これはもう彼にしかできない、完全にオリジナルスタイル満載のプレゼンでした。

立ち居振る舞い、というポイントでは、ずっと体をくねらせるように動かしていて、堂々と話す・落ち着いて話すというポイントからはかけ離れていました。また、恐ろしく早口で、あまり聴く側に気を配ってないようにも思えます。

スライドも、5分間の持ち時間に対して明らかに多すぎる枚数。なんと26枚。しかも、かなり文字の多いスライドも混じっています。それに加えて、PC2台とスマホを持ち込んで、ネット接続ありの高リスクなデモまで準備していました。(運搬には台車が必要なくらいの重装備。持ち時間5分なのに)

若狭さんは、このイベントが始まる数時間前に澤が実施したプレゼンテーション講習を受けておられました。にもかかわらず、立ち居振る舞いやスライドに関するアドバイスは、ほぼ完全に無視していると言っていい状態でした。

では、実際のところ、失敗プレゼンだったのでしょうか。

とんでもない。聴衆は爆笑の連続でしたし、結果も「Geek賞」で50万円をゲット。

つまり、若狭さんのプレゼンはすべて計算しつくされた上でタブーを犯していたわけです。

これは、若狭さん自身が「どのようなキャラクターなのか」をしっかりと理解していて、どう見せれば面白いのか、そして印象付けられるのかがわかっているからできるわけです。
自己紹介のスライドも秀逸です。

まさかのチーム一人。
これを真面目な顔して話すのです。反則です。
そして、トーキングポイントをわかりやすく記したスライドがこれ。

このスライドを複数回見せて、「何を解決するツールなのか」を強調します。

このサービスは、イベントにおける「スライドの見にくさ」を、LINE BOTを使った写真共有によって解決するというものです。

イベントの「あるある」を体験エピソードとして面白おかしく紹介しつつも、どうやってそれを解決するのかデモも交えてしっかり説明する、という勘所はしっかり押さえていました。

そして、これまたタブーともいえる「スライドを飛ばす」という行為も意図的に行います。

一瞬だけ見せて「これは飛ばします」と言ったスライドがこれ。

そう、サービスの問題点を説明しなかったのです。当然これは聴いてる方は気になりますよね。

もちろんこれは意図的で、当然プレゼン後の審査員の質問としてここが問われるわけです。そうすれば、プレゼン時間中に慌てて話す必要もない。あえて質問の余地を残すためにスライドを飛ばすという高等テクニックでした。

誰にでもできる芸当ではないですが、自分のオリジナリティを十分に駆使した、非常に参考になるプレゼンテーションでした。

なお、私がこの連載でも何度か触れた「ビジョン」や「核」はしっかりと備わっており、話し方やスライド構成が枝葉のテクニックであることを再認識できるプレゼンでもありました。システムのスペックの説明で時間を浪費することなく、オーディエンスの共感を呼ぶための「イベントあるあるエピソード」を準備したりするあたり、さすがの一言でした。

ぜひまたプレゼンを聞かせていただきたい、IT業界のタレントの一人であることは間違いありません。

皆さんも、機会あればぜひ「若狭ワールド」を体験してみてくださいね。


澤 円(さわ まどか)氏
日本マイクロソフト株式会社 マイクロソフトテクノロジーセンター センター長   立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、マイクロソフト(現日本マイクロソフト)に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEへ。競合対策専門営業チームマネージャ、ポータル&コラボレーショングループマネージャ、クラウドプラットフォーム営業本部本部長などを歴任。2011年7月、マイクロソフトテクノロジーセンター センター長に就任。
著書に「外資系エリートのシンプルな伝え方
CodeIQ MAGAZINEで「澤円のプレゼン塾」連載中!
Twitter:@madoka510

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