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沖ちづる、次への出発点となった弾き語りライブの集大成

沖ちづる、次への出発点となった弾き語りライブの集大成

3月31日、六本木Varitで沖ちづるが2ndミニアルバム「僕は今」リリース記念「わたしたちの時間 vol.2」を開催した。

2014年から弾き語りでのライブを重ねてきた沖ちづるにとって、この夜は「弾き語りライブ」の集大成のステージ。二部構成となっており、第一部では活動初期の曲、第二部では2016年2月にリリースされた2ndシングル「旅立ち」以降の曲が歌われた。

<10代の自分を慈しめる大人に>
2014年の春、高校を卒業した沖ちづるは本格的に弾き語りを始め、時には月に10本というハイペースでライブをこなしてきた。その頃のホームグラウンドは新宿と下北沢。毎日のように下北沢にいたときもあったという。

この夜の第一部で披露されたのは2014年の自主制作盤「はなれてごらん」、2015年2月の1stシングル「光」、同年6月の1stミニアルバム「景色」、8月の1stアルバム「わたしのこえ」に収録された10曲。「私は歌うんだ」と闇雲に突っ走っていた頃の曲だ。

2014年からの2年間、沖ちづるは立て続けにCDをリリースし、全国放送の歌番組にも出演。「光」はNHKのドラマの挿入歌にもなった。若干19歳の新星として驚きをもって迎えられた。向こう見ずな勢いに突き動かされていたあの頃の曲を、今の沖ちづるはどう歌うのだろうか。

沖ちづるは「街の灯かり」のミュージックビデオで着ていたワンピースを着てステージに現れた。今はスタンディングで歌っているが、あの頃のようにステージには椅子が置いてある。

「きみのうた」を皮切りに、「はなれてごらん」「あたたかな時間」「まいにち女の子」「母さんと私」と懐かしい曲が続く。「私には何もうまくできない」とコンプレックスにまみれていた頃の自分を慈しむように、やさしく歌いかけていた。右も左もわからないなかで弾け、様々な人と出会った喧騒のときを、適度な距離感で振り返れる大人の視線があるように見えた。

今、沖ちづるは21歳。18歳から21歳への移り変わる、いわば大人になっていく渦中にある。

続いて、2015年5月の北沢タウンホール・ワンマンライブで披露された「春は何処に」「下北沢」に。「下北沢」を歌う前に、沖ちづるはこう振り返った。

「毎日のように下北沢にいて、当時は周りの人はみんな年上だった。でも、今は自分と同じくらいの年の人や年下の人もいっぱい。今の方がドキドキします」

「下北沢」は刺激を求めて下北沢に集う若者たち、そして、昔からそこで暮らしてきた人たちの喧騒を描いた群像劇だ。新しい世界に飛び込んだ興奮とともに、どこか冷めた、あるいは苛立つような目線を交えて眺めている。

以前の「下北沢」は、その「登場人物を眺めている」感が強かったが、この夜の「下北沢」では沖ちづるも登場人物のひとりとなっているような月日の流れを感じさせた。沖ちづるは「年上」になり、街の傍観者ではなくなった。当事者となったということか。

第一部は、「歌をうたっているおかしな子」と見られていた自分を「歌ってもいいんだ」と自己認証した「光」、「たとえ美しくない景色が待っていても歌うんだ」と決意する「景色」をクライマックスにして、「小さな丘」「街の灯かり」で幕を閉じた。

<変わっていくもの/変わらないもの>
第二部。沖ちづるは「僕は今」のブックレット中の写真で見られる白いワンピースをまとって現れた。ステージからは椅子がなくなっている。ハーモニカホルダーをセットし、夢を追い人生という旅を続ける者と歩調を合わせる「旅立ち」で始まった。

そして、昨年2度行った一人芝居と歌を融合させた舞台「歌語り」の核となった「二十歳のあなたへ」、ピーターパンの登場人物に自己を投影した「タイガーリリー」へと続く。

第二部は2016年2月の2ndシングル「旅立ち」、11月のデジタル・シングル「誰も知らない」、2017年1月のデジタル・シングル「僕は今」、2月の「僕は今」からの曲が歌われた。

昨年から沖ちづるの曲には、「歌手になる」という夢の入り口に立った後に訪れる夢を追い続けることの覚悟と痛み、孤独が濃く滲んでいる。CDをリリースしたといっても、それがゴールではない。まだ何も始まっていない。歌い続けることの誇らしさと苦しみが濃くなっているようだ。

ただ、そういった葛藤は沖ちづるのストーリーテラーの才を磨くための源になっているようで、綴られる物語では自分も含めた登場人物がより生身感を持って迫ってくる。

井上陽水のカバー「傘がない」、中学時代になくなった友人に「僕らは大人になったよ」と語りかける「クラスメイト」、映画『くも漫。』の主題歌「誰も知らない」、志をともにする離れた友へ送る「メッセージ」、うつろいゆく物事、季節に添えない心情を綴る「うつろいゆく者たちへ」。ステージは進む。

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