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コンピュータも空気を読む? IBMのWatsonにみる、「コグニティブ」が目指す世界とは

コグニティブと人工知能はなにが違うのか?

英語の「コグニティブ」を辞書で引くと「認知」と出てくる。で、今度は「認知」を辞書で引くと、「知識を得る働き」と出てくる。つまり、なんてことはない。人間の「物事を知り、考え、問題解決する」という能力が「認知」ということなのだ。この、とても人間的な「コグニティブ」という言葉をICT界隈で使い始めたのがIBMだ。最近CMで目にする機会があるIBMのスーパーコンピューター「Watson(ワトソン)」のことを、コグニティブ・コンピューティングと呼んだのである。

コグニティブ・コンピューティングとは、つまり人間の認知能力のような高度な働きをするコンピュータということ。そのため、IBMは「コグニティブはコンピュータの第3世代である」と説明するのだ。ちなみに第1世代のコンピュータは計算機の時代、第2世代はプログラムによって動く時代(=つまり現在)、第3世代はコンピュータが与えられた命令を処理するだけでなく、人間の判断を助けるための情報を提供する時代だと定義している。

しかし、コンピュータが自分で考えて結論を導き出すということは、つまりAIと同じなんじゃないかという疑問が浮かぶ。将棋や囲碁の世界でプロ棋士にAIが勝利するというニュースがたびたび報じられているが、人工知能研究が目指すのはコンピュータが人間のように考え、人間と同じように振る舞う存在になることだ。

これに対してコグニティブを提唱するIBMは、AIの技術が活用されてはいるが、立ち位置が違うのだという。つまり、コグニティブが目指すのはAIのように「人間のかわりをする」のではなく、「人間の判断をアシストする」ことだと説明しているのだ。開発ポリシーが違うということらしい。

コグニティブのWatsonは、いったいなにができるのか?

長い前置きになってしまったが、つまりコグニティブの普及によって私たちの生活にはどんな変化が生まれるのだろうか? とりあえず、下記の動画を見ていただきたい。2015年2月、みずほ銀行のコールセンター業務支援として稼働を始めたWatsonの紹介だ。

動画0:58から顧客とオペレータのやりとりを再現しているパートがあるのだが、会話のやりとりに応じて、ディスプレイの表示がコロコロと切り替わっていく。Watsonが会話の内容をモニターし、案内に必要な情報を随時探索しているのだ。人間がいちいち検索して必要な情報を見つけるよりも、はるかに短い時間でスムーズに対応できている。これは、ちょっと、すごい。できればウチにもWatsonに来てほしい!

医療現場での活用にも注目が集まっている。医師は患者の診察を行う際、それまでの現場経験や多くの論文などを参考にして患者に適切な処置方法を検討する。しかし、業務の合間を縫って論文や文献に当たるのは想像するだけで大変なことだ(医師は年間200本の論文を読むのが限界だという説がある)。Watsonは4,000ページの論文を1秒間で正確に読んでしまううえ、一度読んだら忘れない。当然ながらこれは人間の能力をはるかに超えたものだ。この蓄えた知識のなかから、Watsonは最適と考えられる処置方法を医師に提示する。1分1秒を争う医療現場で、コグニティブの存在は間違いなく大きくなるだろう。

教育現場でもすでにコグニティブの導入事例がある。アメリカのジョージア工科大学に「Jill Watson」というティーチング・アシスタントの女性がいた。生徒は日頃の相談を彼女にしていたのだが、その正体はWatsonだった。生徒たちは相談相手がコンピュータだったと気づくことはまったくなかったそうだ。

コグニティブの可能性と人とのつながり

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