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日本食好きすぎてガイドブックまで出したドイツ人のアクセルさんに聞いた「和食の魅力って?」

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まだまだ極寒のヨーロッパからこんにちは!

ドイツ・ミュンヘン在住メシ通レポーターの溝口シュテルツ真帆です。

ドイツといえば、ビールと肉料理、じゃがいもばっかりのイメージ?

はいそれ、正解です。

もちろん寿司やラーメンなど、ドイツ人に愛される日本食も登場していますが、生の魚に「私はムリ」と顔をしかめ、上品な懐石料理などに首をかしげる人も少なくないのが現状。

今日はそんなドイツにおいて大変珍しい、「日本食通」のドイツ人男性をみなさんにご紹介したいと思います。

和食店ガイドの著者に会いたい

彼との“出会い”はかれこれ2年前。私がドイツに移住して、まだ半年足らずのころのことです。自宅カウチの上でスマホを眺めるひとときが幸せな地味生活を送っている私ではありますが、時に非常に“アガる”瞬間があります。それは、日本のごはんを食べるとき!

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(これはこの前作った天ぷら。がんばりました……!)

ドイツで手に入れられる食材でなんとか「なんちゃって和食」を作ることもありますが、幸いミュンヘンには約100軒の日本食レストランがあり、日本にある名店にはもちろん及ばないまでも、急に日本の味が食べたくなったときや、ドイツ人のお客さんをもてなすときなど、けっこう重宝しています。

日本食レストランを訪れる際には、口コミを頼ったり、自身の足で少しずつ開拓したりするほか、活用しているのがこちらのハンドブック『JAPAN in München』(「JAPAN」は、ぜひドイツ語風に「ヤーパン」と発音してください)。

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全編ドイツ語のレストランガイドブックですが、ミュンヘン市内の寿司店はもちろん、気軽な定食屋さんから日本風のケーキ屋さん、雑貨店まで計73店をレポートしてあり、シンプルかつリアルな評価が大変参考になる一冊なのです。

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数少ない機会ゆえ絶対に失敗は許されないお店選び。なめるように読んで愛用していましたが、あるときふと気になりました。

「そういえば、これを書いたのはいったい誰……?

奥付を見れば、Axel Schwab(アクセル・シュヴァブ)とあり、どうやら著者はドイツ人。そこにはこんな自己紹介がされています。

私は5年間日本に住んでいたことがあり、そのときに日本の食と文化は素晴らしいものだと学びました。2005年からふたたびミュンヘンに戻り、それ以来、いつでもおいしい本物の日本食を探求し続けています。

……なにこの人、会ってみたい……!

ハムとチーズとパンがあれば満足なドイツ人の夫や、お刺身すら口にできない義理の家族に囲まれている私。「日本食通」とも言うべきこのアクセルさんに、あっという間に心ひかれてしまったのです。

“お茶会”で本人に初遭遇

それに追い打ちをかけたのが、昨夏の英国庭園(ミュンヘンにおけるセントラルパークだと思ってください)での日本人の友人主催のイベントでのこと。イベントといっても、「水ようかんを作りすぎたからみんなに配るよ!」という気軽なピクニックで、水ようかん食べたさにひょこひょこ出かけていったのですが……なんと、レジャーシートの上に10人ほどのお客さんとともにそのアクセルさんが座っているではないですか!

さすが日本の食べ物あるところにアクセルさんあり!?

「ああ、あれは(自分のなかで)話題の彼じゃないかしら?」

お話をしてみたくてモジモジしながらまずは水ようかんを味わっていると、アクセルさんのほうからこう尋ねてくれました。

Möchten Sie Macha trinken?(抹茶、いかがですか?)

何を聞かれたのかとっさにわからず、「ハッ? まっ?」と慌てると、アクセルさんは手に持っていた大きな水筒を掲げました。

ああ、マッチャ、抹茶ですね! は、はい、ぜひぜひ!

すると、彼はきちんとした椀に抹茶を入れ、水筒のお湯を注ぎ、茶筅(ちゃせん)でシャカシャカとお茶をたて始めたのです!

「す、すごい……!」

お茶の作法もまともに知らない私は、アクセルさんがたててくれたお茶を不格好に傾けるばかり。その日は大勢のなかでまともにお話をする時間もないままになってしまい、残念に思っていたのです。

……ということで、前置きが長くなりましたが、どん!

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こちらが私的超有名人のAxel Schwab(アクセル・シュヴァブ)さん

気になる彼に再度会って、根掘り葉掘りお話を聞いてきましたよ! というのが今回の趣旨です。

日本食関連本を7冊も出していた

ある日の午後、ミュンヘン市内のカフェに現れたアクセルさんは、やはり本と第一印象通りの真面目で優し気な印象。

溝口:「アクセルさん、おひさしぶりです。日本滞在はいかがでしたか?」

※以下、超がんばってドイツ語で会話をしています。

アクセルさん(以下敬称略):「なかなか大変でしたが、面白かったですよ」

そう、この日の約束を取りつけるためにアクセルさんに『JAPAN in München』 の公式サイト経由でメールを送ってみたところ、直後からちょうど1カ月の東京滞在を予定しているとのお返事。

その後、ミュンヘンに戻ってきたところで会えることになったというわけです。

溝口:「大変……? 東京ではどんな風に過ごしていたんですか?」

アクセル:「すでに出ている東京のガイドブックのアップデートのための取材だったんですよ。毎日毎日、お店やスポットを回って大忙しでした」

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実はアクセルさんが出版した日本関連本は『JAPAN in München』のみではなく、同シリーズの『JAPAN in Berlin』、最新刊『JAPAN in Hamburg』、東京を訪れるドイツ人のために書いたガイドブック『Genießen in TOKIO』『Labyrinth Tokio』『JAPAN』、それに寿司のうんちくをまとめた『SUSHI GUIDE』と実に7冊!

今回は、2015年に出版した東京の食スポットを紹介している『Genießen in TOKIO(ゲニーセン イン トキオ)』のデータを最新のものに差し替えるための日本滞在&取材だったとのこと。

アクセル:「この本は2015年秋の出版でしたが、載せたレストランの中でもすでに3店が閉店してしまっていました。そのほかにもメニューや価格の変更もあったりで……」

溝口:「東京のお店の変化はすさまじいですものね。それで、改めて印象に残ったお店はありますか?」

アクセル:「たくさんありますよ! 銀座の寿司店もずいぶん行きましたし、品川の居酒屋さんで食べた鰹(カツオ)のタタキもおいしかったです。目黒『とんき』のとんかつは相変わらず絶品だし、銀座一丁目の『akomeya』でランチどきに出している小鉢膳もよかったですね……。そうそう、東京に行ったときは新宿『高野フルーツパーラー』のマスクメロンパフェは必ず食べるんですが、やっぱり最高でしたね……。2,160円とちょっと高いですけど」

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▲「とんき」の「ロースかつ定食」1,900円。ごはん、お味噌汁、おしんこが付きます

とたんに冗舌になるアクセルさん。

なにやらスマホのなかに収められた写真を探していたかと思うと、

アクセル:「ほら、この寿司を見てくださいよ。素晴らしいでしょう!」

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そこにはそれぞれ産地の異なる国産ウニを使用した5カンの寿司が。

おいしいウニになんて、ドイツではまずお目にかかれません。思わず前のめりに。

溝口:「おっ、おいしそう……っ!」

アクセル:「フフフ……でしょう?『築地虎杖 うに虎 喰(つきじいたどり うにとら くらう)』の食べ比べ握りです。でも、これは5,880円」

溝口:「うっ、いいお値段ですね」

アクセル:「でもその価値があるおいしさでしたよ」

溝口:「お酒のほうはどうでしょう?」

アクセル:「バーもかなり回りました。僕はそれほどたくさん飲めませんが、日本酒に焼酎、泡盛に日本のウイスキー……どれもいいですね」

溝口:「日本のビールのお味はいかがですか?」

アクセル:「ドイツのものとは違うので比較するのは難しいですが、日本のビールもとても好きですよ。とくにエビスとキリンかな。最近流行のマイクロブリュワリーのクラフトビールもおいしいですね」

抹茶を常飲するドイツ人

ミュンヘンを拠点とするアクセルさんが日本のお店を紹介するときには、ときには勘を働かせつつ普通のお客さんとしてお店に入り撮影&実食。「ここぞ」と思ったお店にはその場で本への掲載を依頼するという、ガチンコ取材です。

日本語も話せるアクセルさんですが、お店を訪れた旅行者が困らないかどうかを確かめるため、あえて英語を使うこともあるそう

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▲東京の酒蔵、澤乃井の敷地内にある「澤乃井園」でくつろぐアクセルさん

日本にいたころは、約5年をグルメ雑誌の編集者として過ごした私。最新の東京を食べ歩いてきたアクセルさんをうらやましがりつつ、私のおすすめ店情報もシェアしたりとひとしきり大盛り上がり。

溝口:「そうそう、前回お会いしたときに、英国庭園で抹茶をたててくれたのには驚きました」

アクセル:「特別に習ったりしたことはないのですが、家でもオフィスでも、僕はいつでもコーヒーのかわりに抹茶を飲んでいますポイントは軟水で入れることですが、困ったことにドイツの水は硬水です。ミネラルウォーターをいろいろ試してみた結果、ボルヴィックだとおいしく入れられるということがわかりました。茶筅を使うひまがないときは、コーヒーのミルクを泡立てるときに使う電動ハンディ泡立て器を使ったりもしますよ」

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▲アクセルさんの抹茶セット

溝口:「でもアクセルさん、ドイツ人でありながらこれほどの日本食通って珍しいですよね? 失礼ですが、ドイツ人って食において保守的な考えの方が多いですよね。うちの夫もハムとチーズとパンがあれば十分という人ですし、納豆や梅干しなんかのちょっと個性的な日本食となるとさっぱりダメなんです

思わず愚痴モードになると、アクセルさんからは意外な答えが。

アクセル:「あ、大きな声では言えませんが、納豆は実は僕も苦手なんです」

溝口:「そうなんですか! おいしいのに、納豆……」

アクセル:「出身は関東ですか?」

溝口:「あ、いえ、石川県なのですが、両親が関東で。比較的関東でのほうが納豆が好まれるとされていることをご存じだとはさすがですね~」

アクセル:「納豆に限らず、日本の朝食メニューは、実はあんまり得意じゃないんですよ。もちろん味噌汁はとても好きですし、温泉旅館に泊まったときなどはおいしくいただきますが、普段はもっぱらパン(笑)。朝は典型的ドイツ人です」

溝口:「あはは、そうでしたか。でも日本の朝ごはんが苦手なのはどうしてでしょう?」

アクセル:「おそらく第一印象がよくなかったのかもしれません。大学生のときに初めて日本に行ったんですが、埼玉のビジネスホテルで食べた朝食が僕の初めての“日本食体験”だったんです。干物、ワカメの味噌汁、ごはんと、いまにして思えばごく普通の朝食だったのですが、あまりに食べ慣れないものばかりで……ちょっとがっかりしました。だから、僕ははじめから日本食ファンだったわけではないんですよ」

溝口:「なるほど、たしかに初めてがビジネスホテルの朝食では、そんな印象になってしまうかもしれませんね」

「乾いた小さな魚ばっかり出てきてさ~」なんて、ドイツ人たちが、日本出張後に必ずしも日本食のことをよく言わないのをすでに耳にしていた私もこれには納得。

アクセル:「その後に少しずつ、寿司はもちろん、ココイチのカツカレー、ロイヤルホストのオムライスなど、これはイケる! と思える日本食を口にする機会が増えて、気付けばすっかりのめり込んでしまいました

溝口:「ココイチにロイヤルホスト! 恋しいです~(笑)。でもそんなアクセルさんを見て、周囲の方たちはなんて言っているんですか?」

アクセル:「面白がってくれていると思いますよ。月イチくらいで同僚と日本食を食べる機会もあるのですが、もう僕はすっかりガイドブック扱いで『おいしいお店に連れて行ってくれ』なんてしょっちゅう言われますし、注文係はいつも僕です(笑)」

BMWエンジニアと二足のわらじ

“同僚”という言葉が出たところで、お仕事の話題へ。

実はアクセルさんがこれまで出版してきた本は、すべてがいわゆるセルフパブリッシング。一部一般書店にも流通するシステムを使っていますが、出版社を通して出した本ではありません。当然、経費も自分持ち。この本の売り上げだけで暮らしが成り立つのでしょうか

溝口:「失礼ですが、アクセルさんの日本食における活動は、“壮大な趣味”という理解でよいのでしょうか?」

アクセル:「いえ、僕の名前で出す本のほかに、他媒体でライターとしての仕事をすることもあって、もちろん本業と考えていますよ。ですが、実は週のうち3日はBMWの社員として、電気自動車の部門でエンジニアもしているんです」

溝口:「ええっ、 BMWで! それは驚きですが……でも最高ですね。安定した収入が見込める仕事と、情熱を傾けられるライフワークを両立できる。契約次第で柔軟な働き方が許されるドイツならではですよね」

アクセル:BMWでは一昨年の夏まで週40時間の契約で働いていたのですが、本の仕事が軌道にのってきたので、週20時間に減らした週3日に変更し、残りの時間をこちらの仕事にあてられるようになったんです。ライターとエンジニア、それぞれ違った集中力が必要な仕事なので、双方が刺激し合って面白いですよ」

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▲エンジニアと著者、ふたつのキャリアを両立!

溝口:「へえ~、それはなんともうらやましいです」

アクセル:「当面の目標はきちんと週末に休むことですけどね。あとは、ドイツ人が寿司店でサーモンや“uramaki”(※)以外も積極的に注文するようになってくれるといいですね(笑)」

※裏巻き。寿司めしが外側になっている巻きもの。のりを苦手とするドイツ人は多い。

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ドイツ人においしい日本食を紹介したい!

その一心で活動するアクセルさんに、日本人としてとっても共感。彼の本はamazonなどで購入可能なほか、新宿の紀伊国屋書店の洋書コーナーにも並んでいるそうなので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

※この記事は2017年3月の情報です。

※金額はすべて税込みです。

書いた人:溝口シュテルツ真帆

溝口シュテルツ真帆

1982年、石川県生まれの編集者。(株)講談社にて楽しく週刊誌→グルメ誌編集者をしていたはずなのに、なんのご縁か2014年、ドイツに嫁ぐことに(自分でもびっくり!)。現在はフリーランスとしてドイツのあれこれなどを研究、発信中。

ウェブサイト:南ドイツの旅と暮らし / am Wochenende

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