体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

「症状」と一括りにしていませんか?真実は症状の「理由」にある!

春が近づいてくる今日この頃、いかがお過ごしですか?暖かい日差しに誘われる様に冬の歌から春の歌に変わる季節になりました。今回は、音楽療法を通して感じた相手の気持ちを考えることの大切さを、私の体験談と合わせてお話いたします。

認知症の方がしっかりしていると感じること

施設の中で異動があり所属部署が変わるということがありました。所属が変わったことで入所部門のご利用者様の日常の過ごし方を知ったり、音楽療法以外の時間をご利用者様と過ごすことができたり、他部署との情報共有がスムーズになりました。
異動して1週間が過ぎたある日、上司が「最近どう?」と声をかけて下さいました。


小森

ご入所されているみなさんの普段の姿と、音楽療法時の姿が違うのです。認知症が意外と進んでるんだなぁと思いました


上司

音楽療法のとき、しっかりしているような反応をしているのであれば、それが音楽療法の持つ力なんだね!

私は、この言葉を聞いたとき、「なんで音楽療法の時は、皆さんがしっかりしているように感じたんだろう?」と疑問に思いました。皆さんはなぜだと思いますか?

行動と気持ち

ここでAさんのお話をご紹介したいと思います。Aさんは、アルツハイマー型認知症を患っています。言葉の表出はありますが、ご自身のことを長い文章で伝えることはできなく、スタッフからの言葉での話しかけも理解できるときと理解できないときがあります。

また、集中が長く続かず、ウロウロと歩き回ることも多い方です。夕方になると、「わからなくなった。帰りたい。」と悲しい気持ちになって歩き出すことが多くなる日もあります。そんなAさんは、文字を読むことはできないですが、音楽はお好きなので、音楽療法ではよく大きな声で歌を歌っていらっしゃいます。

そして、楽器を鳴らす活動でも、楽器を逆さまに持っていることもありますが、積極的に演奏をして下さいます。「タン、タン、タン」という規則的なリズムもあれば、伴奏に合わせるように「タン、タタタン」と細かいリズムを刻まれることもあります。(タの所で手をたたいてみて下さい。後半の方が手をたたく頻度が多くなると思います)

簡単なことと思われるかもしれませんが、認知症を患っている方にとって、歌いながら楽器を鳴らすことは難しく、規則的なリズムではなく、細かいリズムを刻むことはもっと難しいことです。なぜならば、歌うことと楽器を鳴らすことを同時に行うことは、脳の様々な部分を活用する必要があるからです。そして、Aさんは音楽療法中、お茶目な様子を見せながらすてきな笑顔を見せて下さいます。

ある日、Aさんは、いつものように午前中の音楽療法に参加していました。そしてその日の午後、Aさんは悲しい気持ちになられたのか、室内を、「わからない。私はだめなんだ。帰りたい。」とウロウロさまよいながら歩いていました。午前中の様子をたまたま見ていたスタッフが私に、「太鼓を持ってきて欲しい」と声をかけました。

午前中、上手に太鼓をたたいていたから、太鼓をたたきながら好きな歌を歌えば元気が出るのでは…と考えたようです。ところが、スタッフが太鼓を鳴らし出すとAさんは「私は嫌だ。」と立ち上がり、歩き出してしまいます。

1 2次のページ
認知症ONLINEの記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。