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寺井尚子『ピアソラモール』インタビュー、「ピアソラへの感謝や尊敬の気持ちを込めて」

寺井尚子『ピアソラモール』インタビュー、「ピアソラへの感謝や尊敬の気持ちを込めて」

 ジャズヴァイオリニスト寺井尚子が3月29日にリリースする最新アルバム『ピアソラモール』。本アルバムのタイトルはピアソラと愛=アモールを繋げた造語で、ピアソラをオマージュした1枚だ。

寺井尚子 インタビュー写真(全3枚)

 「ピアソラの音楽の魅力は、何と言っても曲の持つ力です。まるでコンチェルトのような構成で、どの作品もドラマティック。想像力を刺激してくれるので、聴いていると自分がどう表現したいかイメージがどんどん広がるんです。今回、収録したピアソラの曲のうち、「リベルタンゴ」以外は私がアレンジしましたが、1曲目を4ビートにしてみたり…。色んなアイディアが沸いてきました」

表題曲「ピアソラモール」は、寺井によるオリジナル曲。タイトルにピアソラの名前を含んでいるが、タンゴではなく美しいワルツとなっている。

 「これが私のピアソラへのストレートな気持ちです。ピアソラが亡くなって、今年でちょうど25年。今もなお、私や多くの皆さんの心の中に生き続けている、ピアソラへの感謝や尊敬の気持ちを込めて作りました。」

 アルバムには佐山雅弘と北島直樹の2名のピアニストが参加しており、彼らがピアソラをイメージしたオリジナルも収録されている。

 「アルバムを作ることが決まった時、全曲ピアソラの曲にするのか、違う作曲家の作品も混ぜるのか、とても悩みました。自分のオリジナルも入れたいけれど、ピアソラのように強い個性のある作曲家と同じアルバムに収録した時に、1枚のアルバムとして融合させられるのかは容易いことではないですから」

 そんな時に誕生したのが、北島による「まだ見ぬブエノスアイレス」だった。

 「この曲を聴いて、“いける”と思いました。むしろ、ピアソラの曲とピアソラに刺激された3人のアーティストの曲を1枚のアルバムに収録できたら、すごく良いなって。佐山さんはオーケストラのように幅広い表現力をお持ちのピアニスト。そして北島さんは作曲家やアレンジャーとしても活躍されていて、とてもロマンティックな演奏をする方です。アルバムの中で、2人の違いも楽しんでいただきたいですね」

 今回、ピアソラをテーマにアルバムを作るきっかけになったのが、2016年の東京JAZZでのパブロ・シーグレルとの共演だった。パブロはピアソラが亡くなる前の10年間ピアニストを務めた経験を持ち、ピアソラの音楽を継ぐアーティストとして欠かせない人物の一人だ。

 「メンバーはパブロさん以外も、みんなアルゼンチンの方でした。事前のニューヨークのリハーサルではパブロさんと2人でお互いの音を確認し合い、気が付けば4時間が過ぎていました。アルゼンチンの情熱を肌で感じましたね」

 そして寺井とタンゴを結びつけたもう一人の重要な人物が、アコーディオン奏者のリシャール・ガリアーノだ。ピアソラの後継者であるリシャール・ガリアーノと初共演したのは、2001年にリリースした寺井のアルバム『オール・フォー・ユー』。その共演で手ごたえを感じた2人は、お互いの公演にゲスト出演するなど、パリや日本で交流を深めていく。そして2人の絆の強さを決定付けたのが、2008年の東京JAZZでの共演だ。度胆を抜く演奏で、客席を熱狂の渦に巻き込んだ。

 「2008年の東京JAZZ公演にガリアーノさんとザ・タンガリア・カルテットが出演することになっていたのですが、メンバーのうちのヴァイオリニストの方が急遽来られなくなってしまったんです。ガリアーノさんが主催者の方に「ナオコに連絡してくれ」と伝えたようで、私のところに代役としてのオファーがきました」

 オファーがきたのは公演のたった3日前。不安はあったがリシャールと演奏したいという一心で引き受けた。ただタンガリア・カルテットは日頃オリジナル曲を演奏しており、寺井が弾いたことのない曲ばかり。少しでも早く練習に取り掛かる必要があったが、当の本人は既に飛行機に乗ってしまい連絡が付かず、曲目が分からない。

 「とりあえずCDショップに行ってタンガリア・カルテットのCDを買い、自分なりにプログラムを考えることにしました。ライブ盤も発売されていたので、なんとなく予想がついたんです。そして彼らのレパートリーから5曲選んだのですが、練習したくても楽譜がない。ないなら作るしかないと思って、CDを聞きながら自分で楽譜に書き起こしました。到着後の打ち合わせで知ったんですが、リシャールさんは、「さすがにこのタイミングだから、今まで共演したピアソラの曲を何曲か弾いてもらおう」と思っていたようです。でもプログラムを見たら、予想した5曲が全て並んでいました。そして「全部、弾ける」と言ったんです。彼は、とても驚いていましたね(笑)」

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