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早稲田の名門文芸サークル「ワセミス」を半年でフェードアウトした直木賞作家

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早稲田の名門文芸サークル「ワセミス」を半年でフェードアウトした直木賞作家

出版業界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!第88回に登場するのは、先日『蜜蜂と遠雷』(幻冬舎刊)で、第156回直木三十五賞を受賞した恩田陸さんです。

『蜜蜂と遠雷』は、ある国際ピアノコンクールを舞台に、ピアニストたちの邂逅と葛藤、成長、「才能」という罪深い言葉が併せ持つ蜜と毒、そして音楽を描いた青春群像小説。

読んだ者をコンクールの興奮に巻き込み、脳裏に音楽を響かせるこの作品がどのようにできあがったのか、ご本人にお話をうかがいました。今回はその中編をお届けします。(インタビュー・記事:山田洋介)

■「これまでとは違うことをやらないと」という強迫観念

――物語の冒頭に、嵯峨三枝子の友人の猪飼真弓が、ピアノコンクールと小説の新人賞の類似を指摘する場面がありますが、その他にも、恩田さんが「音楽を仕事にすること」と、「小説家のお仕事」を重ね合わせているように思える場面が作中にしばしば出てきます。

たとえば、マサル・カルロス・レヴィ・アナトールの回想にある「聴衆の聴きたい曲とピアニストの弾きたい曲は必ずしも一致しない」というのは読者と小説家の関係にも当てはまるのではないですか?

恩田:自分についていえば、読者の読みたいものと作家の書きたいものが違う、というギャップはあまり感じることはありません。毎回ちがう雰囲気の小説を書いているので、読者の方々もそういうものだと思ってくれている節があります。

でも、たとえばシリーズものをずっと書いてきて、そのシリーズじゃないと嫌だという読者の方が多い場合は、読者の求めているものと作家の書きたいものが違ってきてしまうことはあるかもしれません。

――作中に出てくる「作曲者は自分の作った曲をどこまで理解しているのか」という問いも、小説に引き写してみると大事な問いですよね。

恩田:作者といえども万能ではないですからね。私は小説は読者のものだと思っているので、どう深読みしてもらっても構いませんし、それぞれに自分なりに解釈してもらえればいいと思っています。「そういう読み方もできるんだ」とこちらが驚くこともよくあるので。

曲は作曲家のものであると同時に演奏者のものでもあるという意味では、確かに小説家と読者の関係に似ているのかもしれません。

――毎回作風ががらりと変わる恩田さんの小説ですが、ご自身としても常に作風を広げていきたいという思いがあるのでしょうか。

恩田:新しい芸風を開拓しないとすぐに縮小再生産に陥るというのはわかっていますから、「これまでとは違うことをやらないと」という強迫観念のようなものは、デビュー当時からすごくあります。

――1992年にデビューされてから、25年以上小説家として第一線で活躍されている恩田さんですが、小説家になろうと思ったのはいつ頃ですか?

恩田:子どもの頃から、いつかは小説家になりたいという気持ちはあったのですが、作家って漠然と「お年寄りがなるもの」というイメージがあって、自分がなるにしても立派な大人になって、それなりに社会人経験を積んでからだと思っていたんですよ。

ただ20代の頃、日本ファンタジーノベル大賞という新人賞の第一回受賞者の酒見賢一さんが私の一つ上だということを知って、この年代でも小説を書いてもいいんだと思ったんです。それで、「じゃあ私ももう書こう」ということで書いたのがデビュー作です。

――大学時代は「ワセダミステリクラブ」に在籍されていたと聞きました。当時は何か書いたりはしていなかったんですか?

恩田:学生時代はまったく書いてないです。当時は作家になるということを現実的に考えていませんでしたし。

それと、実は「ワセダミステリクラブ」にいたのは一瞬なんです。すごく有名なサークルだったので入ってみたのですが、当時はファンタジー小説が全盛で、私が好きだった本格ミステリを読んでいる人はほとんどいませんでした。

――サークル内にも流行があったんですね。

恩田:ちょうど「機動戦士ガンダム」が人気だった時代で、アニメとかSF、ファンタジーが盛り上がっていました。作家でいうと田中芳樹さんとか。

だから、ミステリを語りたいのに語れる人がいない、という感じで、他のサークルで忙しかったこともあって半年くらいでフェードアウトしてしまいました。

最終回 「上手な人は増えたけど…」小説家を目指す人に伝えたいこと につづく

第一回 構想から完成まで12年!『蜜蜂と遠雷』ができるまで を読む

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