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災害も「しょうがない」 何事も大らかに対処するタイの人々

洪水でも楽しむことを忘れない子供たち(佐藤氏が撮った写真)

 東日本大震災からまもなく1年を迎える。2012年1月25日、ニコニコ生放送では日本に多大な支援をするとともに昨年は自身が洪水による被災国となったタイの大使館次席公使シントン・ラーピセートパン氏をむかえ、タイへの支援活動を行う福留功男氏らとともに、タイと日本の被災地を考える討論が行われた。

■国民的歌手による日本支援ソング

 親日国のタイでは、東日本大震災の3日後には政府が5.4億円の支援予算を組んだのを始め、一般市民はもちろんスラム街からも義捐金が集まり、支援物資と合わせ総額100億円を超える支援を日本に対し行った。これには震災直後に、タイの国民的歌手「バード」が日本の支援ソング「Thai For Japan」をつくり、国民に広く援助を呼びかけたことが大きいという。また驚くべきことに、タイは福島第1原発の事故に伴う電力不足を懸念し、244メガワットのガスタービン発電所を分解して運び、2基丸ごとを貸与してくれた。シントン氏によると、分解して運ばれたこの発電機は現在、品川と川崎の発電所に設置されている。

■支援が被災者に届かなかった現状

日本とタイの違いを語る福留氏とシントン氏

 震災後、不平不満を言わずに整然と配給の列に並ぶ日本人の姿は、世界からの賞賛された。一方で、その真面目すぎる姿勢はともすれば融通が利かない対応につながり、支援の足かせにもなったようだ。現地を取材した福留氏によると、震災後、ある都市にタイが軍用機を飛ばして支援物資として毛布を持って行ったが、日本の規格に比べて20センチ短いため受け取りを拒否され、揉めに揉めた経緯があったという。また、派遣された医師に対し「日本の大学出てないからダメ」、「災害救助犬は検疫を受けてないから拒否」ということもあったようだ。

 被災地への炊き出しを行ったシントン氏によると、避難所では例えば弁当などが届いても、避難所生活をしている人数分がなければ受け入れを拒否することがあったという。せっかくの支援が被災者に届かない現状に、シントン公使は

「タイ人だったらじゃんけんをしたり、あるいは大きい子が小さい子に譲ったりするのに」

と首をかしげた。

■大災害でも悲壮感はナシ

洪水の中、盆栽の手入れをする僧侶(佐藤氏が撮った写真)

 そんななか、10月にタイで大洪水が起こり、タイ自体が被災国となる悲劇が訪れた。死者381人以上、被災者250万人以上、被害総額は3000億円以上という悲惨な災害だ。しかし、ここで注目すべきはタイ人の姿勢だ。みな笑顔で助けあい、子どもたちは洪水の中でも水遊びを楽しむなど、生活基盤が揺るがす大災害にもかかわらず、悲壮感がない。現地の様子を撮影した写真家・佐藤慧氏は、

「(タイの洪水では)悲壮感漂う写真と撮りに行くことになるのかなと思ったけど、そうではなかった。みんなが助けあっていてむしろ力強さ、温かさを感じた」

と語る。シントン氏によれば、

「タイ人は何か悪いことが起こっても自分の運命だと受け入れる。昔悪いことをしたからバチが当たったんだ、しょうがない。今度からいいことしよう。そうすれば生活も良くなるだろう」

という楽観的な姿勢で対応する人が多いという。

被災地を記録し続ける写真家・佐藤慧氏

 今回の震災で「自然の前に人間の無力さを知った」と肩を落とす日本人が多かったが、タイ人は自然の前に人間が無力であることをみなが昔から知っているようだ。だからこそ、必要以上に落ち込むのではなく、災害を受け入れ、すぐに前向きになれるのではないか。

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