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カメの選択、「2億年生き延びる」

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カメは不思議な脊椎動物だ。箱のような構造はなぜ、どのように生まれてきたのか。
その進化に注目すると生き延びるための選択が見えてくる。

背筋や腹筋はないけれど

私はカメの化石に基づいて彼らの進化の研究をしている。カメをカメたらしめている特徴は何といっても全身を覆う甲羅(こうら)である。甲羅は盛り上がった背中の部分(背甲・はいこう)と平らな腹の部分(腹甲・ふくこう)から出来ている。生きているカメの甲羅の表面は鱗板(りんばん)と呼ばれる板状の薄い鱗で覆われているが、その下には硬い板状の骨(骨板)がある。

つまりカメの甲羅は鱗と骨の二重構造で非常に丈夫になっているのである。背甲は、肋骨と背骨が変化して出来たものであるが、腹甲の由来はより複雑で、肩の骨の一部と祖先のお腹にかつてあった骨(腹肋骨・ふくろっこつ)が進化したものと考えられている。

カメには他のあらゆる脊椎動物に見られる背筋や腹筋が存在しない。我々の背筋や腹筋が骨に置き換えられて胴体が頑丈な箱のような構造に変化するという、いささか想定外の状態がカメの甲羅なのである。

カメの甲羅は想定外

カメの甲羅の表面を覆っている鱗板は毛髪や爪と同じ皮膚の一部であるが、その下にある骨板は手足の骨などに比べて頑丈に出来ている。50枚前後の骨板が組み合わさって甲羅を作っているが、死後に甲羅が壊れてバラバラになってしまっても、それぞれの骨板は化石として残りやすい。

カメの化石が見つかる最古の時代は中生代三畳紀、今から2億年以上も前のことである。当時は恐竜や我々の祖先である哺乳類が出現したばかりであった。2009年、中国の約2億2000万年前の地層から原始的なカメが見つかり「オドントケリス」という学名が付けられた。「歯のあるカメ」という意味の名前で、口に歯が残っていたことに由来している。ちなみに後の時代のカメでは歯がなくなり、代わりに鳥のような嘴(くちばし)で口が覆われている。オドントケリスが奇妙なのは、腹甲が完全である反面、背甲が不完全で隙間だらけであることだ。

カメの甲羅は、まず腹甲がしっかりとでき上がった後に、肋骨と背骨から成る背甲が付け加わったらしいのだが、これは現生カメ類の甲羅の成長過程からも支持されている。

守りを固めてしぶとく生きる

それでは、カメの甲羅は何のために進化したのだろうか? やはり身を守るためと考える他ないだろう。カメの登場以前の時代(古生代)には、甲羅や鎧(よろい)などで防御した陸上の脊椎動物はほとんど見当たらなかった。

ところが恐竜の仲間が登場する三畳紀になると、カメや空を飛ぶ翼竜(よくりゅう)、あるいは泳ぎがうまいもの、逃げ足が速そうなものなど、多様な方法で守りを固めた脊椎動物が進化する。初期の恐竜はいかにも素早い攻撃的な捕食動物であったと考えられるが、その淘汰(とうた)圧力がカメのような動物を進化させたと言い換えることもできよう。

カメの進化は甲羅の完成で終わったわけではない。

約1億5000万年前のジュラ紀の終わりには、首が長く伸びて柔軟になり、頭を甲羅の中に引っ込めることが出来るようになった。さらに恐竜の絶滅後は甲羅の一部を動かして、頭や手足を完全に収納するハコガメの仲間が進化してくる。

カメは、恐竜など多くの動物が絶滅していくのを横目で眺めながら2億年以上を生き延びてきた。次は人類の絶滅を目撃するのかもしれない。

執筆:平山 廉

絵:大坪紀久子

上記は、Nextcom No.29の「情報伝達・解体新書 彼らの流儀はどうなっている?」からの抜粋です。

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Ren Hirayama

早稲田大学 国際教養学部 教授
1956 年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。京都大学大学院地球科学地球科学研究科博士課程中退。
早稲田大学国際教養学部助教授などを経て、2006 年より現職。理学博士(鹿児島大学)。
専門は化石爬虫類。著書に『カメのきた道』(NHK出版)など。

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