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ソニー出身の起業家が語る 松下幸之助の「本当の凄さ」とは

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ソニー出身の起業家が語る 松下幸之助の「本当の凄さ」とは

20世紀日本を代表する起業家のひとり、松下幸之助。

いまなお彼の名を冠した書籍は売れつづけている。

また、そうした書籍のなかの言葉に触発され、「尊敬する経営者」として彼の名前をあげる起業家も少なくない。

『事業に失敗しないための 起業家宣言』(こう書房刊)の著者で、ソニーマーケティングに29年間つとめた経験も持つ小室雄次氏もそんな起業家のひとりだ。

松下幸之助の「凄さ」とは何なのか。小室氏の実体験もまじえながら語ってもらった。

■周囲を巻き込むために、営業マンが絶対にしてはいけないこと

――本書では、Dean Alfangeという政治家が「アメリカ人であることが意味するもの」と題した文章のなかで書いたとされる「アントレプレナーシップ」の全文を引用・紹介されています。まずは、この文章との出会いがどのようなものだったのかを教えていただけますか。

小室:これはビジネススクールの授業にゲストスピーカーとしていらした、とある大手IT企業の元社長が、講話のなかで紹介していたことがきっかけで知りました。


(本書『アントレプレナー宣言』より全文引用)

――ではなぜ、小室さんにとって、この文章が大切なものになったのですか。

小室:それはやはり、起業家としての心構えが記されている文章だからです。さらにいえば、ここに書かれている言葉一つひとつに、私自身が起業を目的に退職する際、自分に誓った思いが表現されていたように感じました。

――小室さんは本書のなかで、創業後、この文章を幾度となく読み返してきたと書かれていますが、それはたとえば、どのようなときでしたか。

小室:大きな商談のプレゼンがあるときなど、当日の朝にこれを読むことが多かったです。

「自らの権利として、限りなく非凡でありたい」「常にロマンを追いかけ、この手で実現したい」といった刺激的な言葉が散りばめられているこの文章を読むと、やはり気合いが入るので。その習慣は今も変わりません。

ありがたいことに、周りの方から「順風満帆だね」といわれることがあります。でも、私のなかでは、創業してから今日にいたるまで、毎日が不安との戦いでした。

特に最初の2年間は、「自分たちの考えた事業は、ほんとうに成り立つのか」と、常に自問自答していましたから。そういうギリギリの状況にいると、「アントレプレナーシップ」のような言葉がないと身がもたない。この文章にはほんとうに救われました。

――言葉から活力をもらうという意味では、「アントレプレナーシップ」以外に、たくさんの経営哲学書を読んできたとも書かれていました。

小室:これもMBA時代、授業の課題本に指定されたことがきっかけで読むようになったものですが、松下幸之助さんの本は読むたびに「ほんとうに勉強になるな」と感じています。

ソニー時代、ライバル会社の創業者ということもあって、松下幸之助さんの本を手にとることはありませんでした。でも実際に読んでみると目から鱗の内容で、起業家としての生き様を教えてもらえた。

それと、松下さんの本を読んでいると、ソニー時代に、「松下はトップの意思が組織の隅々までちゃんと行きわたっているなあ」と感じたことを思いだしたりもして。

――松下電器(現パナソニック)のどんなところを見て、「松下幸之助さんの意思が、組織の隅々まで行きわたっている」と感じたのですか。

小室:インタビューの前半で、ソニー時代、量販店相手の仕事をしていたという話をしましたが、そのころ担当していた業務のひとつに「看板がえ」というものがありました。

これは、東芝、日立、三菱などの看板をかかげて営業している地域の電気店に営業をかけ、ソニーの看板にかえもらうという仕事で、いま挙げたようなブランドはこちらが本気になって営業すれば、たいてい口説き落とせたんです。

でも松下系列の電気店だけは、なんど足を運んでも絶対に口説き落とせなかった。そのときですね、「幸之助氏の意思が、隅々まで行きわたっている」と思ったのは。

――ではなぜ、松下電器ではそのようなことが可能になったのだと思いますか。

小室:それはやはり幸之助氏自らが「松下信者」をつくることに成功したからだと思います。幸之助氏の本を読むなかで、このことを改めて実感しました。

そしてこの学びは、自分の事業を継続していく上でも、大いに参考になるものでした。周囲の人を信者レベルにまで巻き込むことができれば、それが卸業者であれ顧客であれ、そう易々と他社製品に乗りかえられることはありませんから。

――営業という観点から、周囲を深いレベルで巻き込むために、絶対にやってはいけないこととは何でしょう?

小室:焦って売上を上げようとすることですね。焦ってしまうと営業マンはたいてい近視眼的になり、安売りに走ってしまいがちだからです。

ちなみに、松下幸之助さんにからめていえば、彼が部下に対して安易な値引きを絶対に許さなかったというのは有名な話です。

これは、彼が丁稚奉公時代にうけた「商品には正しい価格というものがあり、値引きして売るということはその商品の価値を自ら否定しているようなもの」との教えを守ってのことだったらしいのですが、私自身のビジネス経験に照らし合わせても、本当にその通りだなと思います。

――ここまで「アントレプレナーシップ」や松下幸之助さんの本などを「読む」体験を中心にお話をうかがってきました。ところで小室さんは、メルマガやブログを定期的に「書く」ことにもこだわられています。これはどのような目的があってのことなのでしょうか。

小室:これらの記事を書きつづけるには、当然、情報源が必要になります。つまり、様々な情報源にあたらざるを得なくなる。その結果、自然と市場の変化を感じることができる。

経営者である以上、市場の変化に敏感であることは必須条件です。したがって、そうした力を維持することが、情報発信にこだわる主な目的です。

――最後になりますが、読者の皆様へメッセージをお願いします。

小室:先ほど、創業直後の話をした際に、「ギリギリの状況で自問自答しながらがんばってきた」という言い方をしました。では、なぜここまでのプレッシャーを感じながらもがんばることができたのか。

それは、家族や、ソニーや、ソニー時代の部下たちに対して「裏切れない」という、一種、使命感のようなものを感じていたからだと思います。つまり起業した以上、志半ばでビジネスを頓挫させてしまったら、それは彼らへの裏切りになると思ったのです。

私にとって、「アントレプレナーシップ」の文章があれほど心打たれるものだったのは、そこに書かれていることが、私の感じていた使命感と一致していたからだとも思います。

ただ、サラリーマンとしての人生を全うするほうがいいのか、起業家になるほうがいいのか、簡単に「どっちがいい」といえる問題ではありません。

ですので、読者の皆様には、「安易に起業するな」ということをお伝えしたいですね。そして、私が先ほど話した使命感のように、何か自分を突き動かすものを感じていて、ほんとうに起業したいと思うなら、ぜひ本書を手にとっていただきたいなと思います。

(新刊JP編集部)

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