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△特集:Music Seleciton by Tsutomu Noda

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 △で真っ先に思い浮かんだのは、クラフトワークの「ツール・ド・フランス」である。何故ならその12インチが、家のレコード棚に立てかけてあるからだ。理由? 極めて個人的に、その曲にハマっていた時期があったからで、そのままおよそ1年ほど模様替えもされない部屋のなかで放置されていたからに過ぎない。つまりおよそ1年ほど毎日、「ツール・ド・フランス」(のジャケ)を見ている。え? ぜんぜん△じゃないと仰るかもしれませんが、自転車のフレーム(ロードバイクの場合)、フレームはふたつの△を組み合わせているのだ。▽の真下にペダルがあり、その左右どちらでもいいので△を足すと下方先端にタイヤのホイールがハマる具合だ。さらにいうと、がちっと▽になっている(つまり、フレームのトップが、傾斜せずに地面と水平になっている)フレームはホリゾンタルといい、クラシカルなタイプなのだ。「ツール・ド・フランス」に描かれている自転車はこのクロモリタイプで、まあ、「ツール・ド・フランス」が歴史ある大会なので当たり前といえば当たり前なのだが、さすが自転車好きで知られるクラフトワーク(ラルフ・ヒュッター)だけあるなと感心する。

ラルフ・ヒュッター……、こういっては失礼な話だが、テクノ・オタクの最大ヒーローである彼は、イメージ的にスポーツとは結びつかないのだが、ものの本によれば、彼は長いときで1日200キロも走っていた、かなりのタフガイである。この1日200キロという数字は、いくら平地が多い欧州はドイツとはいえけっこうな距離で、ヒュッターは、ツアー中でさえ途中から自転車を漕いで会場に向かったという話もある。「気晴らししたければ自転車に乗れば充分」とは彼の言葉だが、これが意味するところは、休日になればどこかにレジャーしなければいけないというプレッシャーからも自分は解放されているということ。いずれにせよ、無心になってサイクリングしているときと、無心になって音楽にハマっているときは、最高に気持ち良いのだ。

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 さて、もう1枚の△は、いまさらなにをおまえは言っているのだという話なのだが、水曜日のカンパネラの12インチ「トライアスロン」だ。ジャケのデザインがまず△だ。ぼくのようなマニアックな音楽を聴いているリスナーは、これだけメディアが細分化された世界では売れている音楽──といっても全人口からすればかなりの低い比率なのだが──を知らないままでいることが多い。そしてこういう人間にとって、いまだレコード店はありがたい情報源である。ネットでは自分の好みの方向性ばかりを掘ってしまうところ、いろんなタイプのリスナーを相手にしたお店では、自分の関心外にあった音楽が耳に入ってくるわけだ。彼らが12インチを出したおかげでぼくのようなリスナーにも届くのである。で、メディアに関わっている人間にあるまじきこの遅さで、その素晴らしさに気が付くと。本当に感動した。このご時世、これほどまでのナンセンス・パワーを持った音楽があり、それが売れている、それが人気があるという事実に勇気づけられもした。ありがとうありがとう。

Sensuous cover

 最後に、△なので3枚と、もう1枚を選ぼうと思ったときにぼくが思い出したのは、なぜかコーネリアスなのだ。自分でいうのもなんだが、この回路はかなり独特である。まず、ぼくの脳裏に浮かんだのは、エイフェックス・ツインだった。あのAマークは、△っぽい。クラフトワーク、水曜日のカンパネラ、そしてエイフェックス・ツイン。完璧な並びじゃないか。しかしそれはあまりにも完璧すぎて、意外性がない。エイフェックス・ツインの遊び心に負けず劣らずのアーティストが日本にはいるだろう、そう、コーネリアスだ。じゃ、コーネリアスでいちばん△っぽいジャケってなんだっけ? そう思って「これだ!」と思ったのが『センシュアス』だった。実際見てみると、うーん、△じゃないし、かなりこじつけだなと思ったのだが、まあ、いいではないか。久しぶりに聴いてみてこのアルバムが先に行きすぎていたことをあらためて思った。この音のマテリアル感は、いま聴くとなおすごい。消費速度が進み、いろんなものが流行っては消えていく、60年代、70年代、80年代、90年代はリヴァイヴァルするが、2000年代はなかなか振り返られない。そう、しかしね、『センシュアス』はいいよ。いま最高に気持ち良いね。

Tsutomu Noda/野田 努
1963年、静岡市生まれ。1995年に『ele-king』を創刊。2004年~2009年までは『remix』誌編集長。2009年の秋にweb magazineとして『ele-king』復刊。著書に『ブラック・マシン・ミュージック』『ジャンク・ファンク・パンク』『ロッカーズ・ノー・クラッカーズ』『もしもパンクがなかったら』、石野卓球との共著に『テクノボン』、三田格との共著に『TECHNO defintive 1963-2013』、編著に『クラブ・ミュージックの文化誌』、『NO! WAR』など。現在、web ele-kingとele-king booksを拠点に、多数の書籍の制作・編集をしている。
http://www.ele-king.net/

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