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リュクスでキュート、そしてヴィヴィッドなステージを堪能させてくれるベリンダ・カーライル。女性として理想的に成熟したショウを満喫する早春の宴。

リュクスでキュート、そしてヴィヴィッドなステージを堪能させてくれるベリンダ・カーライル。女性として理想的に成熟したショウを満喫する早春の宴。

 2017年2月28日、ビルボードライブ東京にてベリンダ・カーライルの単独公演が開催された。

ベリンダ・カーライル 公演写真

 まるで南国の花が鮮やかに開いたように、ベリンダが現れると、その場がパッと華やぐ。開演前の穏やかな空気が一変し、一瞬にしてワクワクしたムードが充満していく。そして会場が躍動し始め、ステージと客席が一体になっていった――。

 リュクス&キュート!

 「久しぶりにビルボードに戻ってきたわ。とても嬉しいの!」と話しかけると、間髪入れずに次のナンバーを繰り出してくる。この軽快なテンポ。ポップでありながらコクもあるサウンドに飲み込まれて、気分がスカッとしていくのがわかる。

 キャッチーなメロディとタイトな縦乗りの8ビートで、1980年代にアメリカを代表するガールズ・ポップ・ロック・グループになったゴーゴーズ。その真ん中で愛くるしい歌を聴かせてくれていたのがベリンダ・カーライル。ジェリー&ゴフィンやモータウンのガールズ・グループのレガシーを受け継いだ、ポジティヴながらもキュートで親しみを感じさせる彼女のキャラクターは、ゴーゴーズ最大のセールス・ポイントと言っても差し支えないだろう。特に81年にリリースされたデビュー・アルバム『ビューティ&ザ・ビート』は、激しいビートと耳になじむ麗しいメロディが溢れている、まさにタイトルを象徴するような内容で、チャートでも6週間全米1位の快挙を成し遂げている。

 その後、グループは解散し、ソロになったベリンダ。それまでの「元気のいいお茶目さん」から、リュクスでエレガントな“大人”へ、少しずつイメージを変えていきながら、21世紀の女性として理想的な成熟を見せ続けてくれている彼女。87年にヒットした「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」は、その前向きな歌詞もあってビルボードの1位に輝いた。今、聴いても、まったく色褪せていない「名曲」と言っていいだろう。

 そんなキャリアを持つベリンダ・カーライルが日本に還ってきた。キレのいいポップ・ロックはもちろん、ソロになってから打ちだしてきた“絶妙な陰影を感じさせるナンバー”が、会場の人たちをエキサイティングに、そして爽やかな気分に誘ってくれる。彼女でなければできない“キュート”で“しっとり”した表現による優雅な空気の膨らませ方。ブロンドの髪と透き通るように白い肌、そしてヒールの高いパンプスがエレガントだ。さすが、米国の音楽界やショウビズの世界を生き抜いてきたベリンダの“真骨頂”が開花し、会場全体にふくよかな甘さを湛えたフレグランスのように振りまかれていく。グループ時代とは異なり、ノーブルな雰囲気さえも纏ってきた彼女。MTV時代のヒット・チャートに親しんできた同世代のファンはもちろん、若い世代の女性にとっても、彼女は“ポップ・クィーン”なのは間違いない。西海岸出身らしい、開放的で明るいキャラクターに、大人としての奥行きも加わった、まさに理想の女性像。その存在を目の当たりにできる瞬間が、遂に訪れたということだ。

 決して「最先端の音」におもねることなく、アメリカン・ポップスの伝統をアップデイトしてきた自らのスタイルを、いささかも揺らぐことなく披露していくベリンダ。タンバリンでリズムを取りながら優雅な振る舞いを見せる彼女は、ステージを華やかに彩り、バンドが弾き出す音に生命力を与えているかのよう。もちろんゴーゴーズ時代の「泡いっぱいの恋」などが披露されると同時に、ソロになってからのナンバーも惜しみなく演奏されていく。まさに、六本木という“都会”で聴くのがフィットする楽曲が矢継ぎ早に歌われていくのだから、会場の盛り上がりは最高潮だ。

 中盤には、短いMCのあとに「ヴィジョン・オブ・ユー」が語りかけてくるように歌われ、会場の空気をシックに染め上げていく。それにしても、本当に美しい。決して短くはない人生を歩んできた世代だから、きっと辛いときもあったに違いないはず。それでも、ステージの上ではポジティヴで、なおかつフェミニンで――。男性でも“憧れてしまう存在感”を、オーラとしてしっかり放っている。

 ハイライトは、ここに来た誰もが聴きたかった「ヘヴン・イズ・ア・プレイス・オン・アース」が。最初の小節をスロウにして聴かせ、やがてイン・テンポに――。耳に馴染んだ旋律が頭の中でいつまでもリフレインする。
そして2度に及ぶアンコールでは、名刺代わりの1曲「ユー・ガット・ア・フィール」も。激しいビートをバックにしながらも威風堂々とした佇まいに、ベテラン・シンガーとしてのプライドが滲む。さらにはカーペンターズの名唱で有名な「スーパースター」まで。「今夜はありがとう」という挨拶を残してステージを去って行ったベリンダ。会場は爽やかな後味に包まれた。

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