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ドクター・ジョンがニューオーリンズ音楽をロックに浸透させた傑作『ガンボ』

エンタメ

70年代初め、ザ・バンドやリトル・フィートがセカンドライン(ニューオーリンズ音楽独特のリズム)を取り入れることで、ニューオーリンズ音楽は広くロックの世界で知られるようになった。日本でも久保田麻琴&夕焼け楽団が『セカンドライン』(‘79)という、そのものずばりのアルバムをリリースするなど、ニューオーリンズ音楽がロックに与えた影響は計り知れない。ザ・バンド、リトル・フィート、久保田麻琴、ボ・ガンボスらを虜にしたアルバムが、今回紹介するドクター・ジョンの『ガンボ(原題:Dr. John’s Gumbo)』である。本作は、ロック好きの若者に向けてドクター・ジョンが発信したニューオーリンズ音楽の入門編であり、永遠のマスターピースでもある。
『Dr. John's Gumbo』(’72)/Dr. John (okmusic UP's)

音楽番組『ナウ・エクスプロージョン』と『イン・コンサート』
僕がまだ小学校4年生の頃、ビージーズの「マサチューセッツ」が日本で大ヒットし、この曲が大好きになってシングル盤を買いに行ってから、洋楽にどっぷりはまることになった。お小遣いで洋楽のシングル盤を買い集め、買うたびに幸せな気分になるわけだが、当時はインターネットもケータイもないので、情報を得るのは知り合いの音楽好きの話を聞くか、音楽雑誌からだけ。中学生になるとラジオやテレビでもロックやポップスの番組が放送されるようになり、新聞のラテ欄に洋楽のことが載ると見逃さなかった。中でも、金曜か土曜の深夜に放送されていた『ナウ・エクスプロージョン』という、さまざまなロックのプロモーションビデオ(まさにMTVのような番組)を流す画期的な番組は、眠い目をこすりながらも必ず観ていた。
もちろん、僕がまだ13〜14歳の頃なので、知らないアーティストがでているほうが多かったが、気に入った音楽が流れるとメモしておいて、翌日情報を集めるということを繰り返していた。その番組に出ていたメラニー、ニュー・シーカーズ、バッファロー・スプリングフィールド、ジョニー・ウインター、 CSN&Y、ジミヘンなどに惹かれ、テレビで気に入ったのをレコード屋さんで買うというパターンだ。
しばらくすると、UHF局のサンテレビ(ローカルネタですみません。関西在住なので…)で『イン・コンサート』という番組がスタートする。これはロックのライヴの模様を流すという凄い企画で、毎週(記憶が曖昧で申し訳ないが、ひょっとすると不定期放送だったかもしれない)欠かさず観ていた記憶がある。特にぶっ飛んだのはレコード発売前のベック・ボガート&アピス。当時の最高のテクニック(今観てもすごいけどね)をテレビで観られるという幸せを味わった。
この番組で毎週のように登場する奇妙なアーティストがいた。山高帽にキンキラキンのタキシードを着て、エレピを弾くおじさんだった。そのおじさんは演奏の途中、踊りながら金粉を撒いたのである。そして、すごいダミ声で唸りながらファンクっぽい曲を演奏していた。そのヘンなおじさんが今回紹介するドクター・ジョン、その人だ。

ザ・バンドとリトル・フィートが取り入れたセカンドライン
ザ・バンドが72年にリリースしたライヴアルバムの傑作、『ロック・オブ・エイジズ』の1曲目に収録されている「ドント・ドゥ・イット」や、リトル・フィートが73年にリリースした、これまた傑作アルバムの『ディキシー・チキン』のタイトルトラックは、紛れもなくロックの世界でニューオーリンズ特有のリズム、セカンドライン(1)を採り入れた最初期の試みである。この2作を聴いて人生が変わったという人は多いと思うが、この2グループが当時もっとも影響を受けていたアーティストがドクター・ジョンであった。日本やイギリスのリスナーも、この2作品を通してニューオーリンズ関係のレコードを入手した人が多かったはずだ。
それからはニューオーリンズのミュージシャン(ドクター・ジョン、アラン・トゥーサン、ミーターズ、プロフェッサー・ロングヘアなど)に注目が集まるようになり、日本ではキャラメル・ママや久保田麻琴が、イギリスではジェス・ローデンやフランキー・ミラー、ロバート・パーマーらがニューオーリンズの音楽に魅力に惹かれ、次々とニューオーリンズ風味のアルバムをリリースしていく。

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