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「津田沼戦争」「谷津遊園」…懐かしさと戦後教育の問題描く長編『みかづき』について森絵都さんに聞く

「津田沼戦争」「谷津遊園」…懐かしさと戦後教育の問題描く長編『みかづき』について森絵都さんに聞く

出版業界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!

第87回に登場するのは作家・森絵都さんです。

森さんの最新長編小説『みかづき』(集英社刊)は、「2017年本屋大賞」にもノミネート(発表は4月11日)されており、「王様のブランチブックアワード2016大賞」を受賞、評論家や作家、各メディアから絶賛の声が上がった感動巨編。昭和から平成の塾業界を舞台に、親子三代が奮闘を続ける、家族と教育をめぐる物語です。

どんな世代でも必ず心を打つ風景が出てくる本作について、森さんにお話を伺いました。今回はその中編です。

(インタビュー・記事/金井元貴)

■津田沼戦争、戦後教育…。土地と時代が繰り広げる物語

――本作を執筆されるにあたり、かなりの調査や取材を行ったと思います。

森:まず時代を調べないといけなくて、いつ何が起きて、その時の空気はどんな感じだったのか。教育業界の出来事だけではなく、その頃の風潮も含めて時代を調べていくということをしましたね。

――最も印象に残っている時代は?

森:「津田沼戦争」という塾同士の熾烈な抗争があったことを聞いたときは「この時代のことは絶対に書きたい」と思いました。

もう一つは、1999年の塾と文部省の歴史的会談。文部省が塾を学校の補完機関として容認したという出来事です。自分の中で必ず抑えたい時代の転換期だったので、この2つは特に力を入れて調べましたね。

――津田沼戦争は1980年代半ばに実際にあった出来事だそうですが、昔、津田沼で塾を経営されていた方にお話をうかがったのですか?

森:そうですね。実は津田沼戦争については、紙で残っている資料がほとんどないんです。だから、当時塾を経営されていた方に話を聞くということがほとんどでした。

――物語のリアリティを高めているのが、千葉県習志野市や八千代台という場所です。

森:もともと習志野の近くに住んでいたことがあって。場所は八千代台よりももっと田舎の方だったのですが、当時の私からすれば八千代台はものすごく華やかな街という印象がありました。

――では、この『みかづき』という小説はある意味で森さんご自身のルーツを辿られているところもあるんですね。

森:小説には自分のことを重ねないようにしているのですが、どこかで滲み出ているのかもしれません(笑)。

――本作は戦後教育を追っていく形で物語が進んでいくわけですが、その部分で気付きはありましたか?

森:日本の教育は本当に行き当たりばったりできたのだなということを痛感しました。

骨太の方針があって、きれいなラインを辿ってきたのではなく、どこを目指しているのか分からない、その時その時にいろんなことを考え、やろうしては潰れて、ということの繰り返しで今に至っているんですよね。

ただ、おそらくその時代ごとにおいて、本気で教育をよくしようとしていたのだと思います。だけど、長期的な考えに基づいた太い政策は見られなかったですね。

――この物語からも伝わってきますが、方針が右往左往していますよね。

森:そうなんですよね。日本の教育の課題は、教育界の問題だけではなく、その時その時で経済界の介入があったり、海外からの干渉もあったりしました。だから必ずしも文部省だけの問題ではないというところも根深い部分です。

ただ、それは教育界に限らないこともそうだと思うのですが。

■「異なる時代を表現する」ために気を付けたことは?

――昭和から平成とはいえ、10年違うだけでもまったく文化なり生活が変わってきますよね。その部分で気を付けたことはありますか?

森:文体ですね。文体自体にその時代が染み込むようにしました。例えば、吾郎と千明が出会った頃は、あまりカタカナを使わないようにしたり。あとは言葉遣いも。それらすべてが物語を作っていく要素になるのですごく気を付けた部分です。

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