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会社を生き残らせるために、経営者が「してはいけない」ミス

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会社を生き残らせるために、経営者が「してはいけない」ミス

どんな仕事でも、人が関わっているかぎり、ミスを100%なくすことはむずかしい。

もちろんミスをしないに越したことはないが、ミスをしてしまったのなら、できるかぎり早く頭を切りかえ、いかにリカバリーするかに知恵をしぼったほうが得策だ。

だが、なかには取りかえせないミスもある。企業経営の場合でいえば、黒字なのにもかかわらず資金繰りの判断を誤ってしまったために起こる「黒字倒産」などはその典型例といえよう。

では、取りかえしのつかないミスをさけるために、起業家はどのような能力を身につけておくべきなのか。『事業に失敗しないための 起業家宣言』(こう書房刊)の著者で、ソニーマーケティングに29年間つとめた経験も持つ小室雄次氏にお話をうかがった。

■致命的なミスをさけるために必要なビジネスの「勘どころ」

――今回のタイトルには「事業に失敗しないための」というフレーズが入っています。小室さんが、本書のなかで「失敗」という言葉をどのようなイメージで使っているのかについて、まずはお話をお聞かせていただけますか。

小室:起業後10年で生き残る会社の数は20社中1社といわれています。それだけ会社を存続させるのは難しい。そのことをふまえ、この本のなかでは終始、「倒産」をイメージして、失敗という言葉を使っています。

――では、致命傷にならない範囲での小さな失敗はむしろすべきだと思われますか。

小室:その意味での失敗であれば、どんどんすべきです。特に創業期においては、失敗から得られる情報が何かしらの糧になることは珍しくありませんから。私自身、創業してからの10年間で、その手の失敗は数多くしてきました。

――創業直後にしてしまった小さな失敗として、たとえばどのようなものがありましたか。

小室:卑近なものでいえば、ある年、法人税の具体的な額を納税する直前まで把握していなかったことがありました。この年は例年にくらべてかなり大きな額だったので、知ったときはかなり焦りました。

このケースの何が失敗かといえば、税金関連の仕事を税理士にほぼ丸投げしてしまっていたことです。状況をまったく把握しておらず、資金繰りにも余裕がなかったため、いざ「今年の法人税は900万円」と分かったときに慌ててしまったのです。

――事業がまだ安定していない時期は、そうしたミスが企業にとって命取りになることもありますよね。

小室:おっしゃる通りです。だからこそ、経営者は四六時中「売上をあげつつコストをさげるための最適な選択はどれか」の判断を迫られますし、その判断の精度を高めていかなくてはならないのです。

創業して間もないころの私は、当然そうした判断をすることに慣れていませんでした。それでも致命傷を負わずにすんだのは、約30年にわたりソニーでビジネス経験を積んでいたからだと思います。

そういった経験がベースとなって、決定的な失敗を回避するための判断力を養うことができたのではないかと。

――ソニー時代の経験ということでいえば、長年、営業や企画の仕事をしていたことが、創業直後から大きな武器になったとも書かれていますね。

小室:売るための販売企画から実際に営業活動をおこなうまでの一連のノウハウを体得していたことは大きかったと思います。

10年ほど販売企画の仕事にたずさわっていくうちに、新商品を見た瞬間、「これは売れる/売れない」「こういう売り方をすれば可能性はある」ということが瞬間的に分かるようになっていたんです。ビジネスのいわゆる「勘どころ」が身についたといいますか。

創業して間もない段階ですでにこうした力を身につけていたことは、致命的なミスをさける意味でも重要だったように思います。

――その勘どころは、どのようにして身につけたのですか。

小室:私がいたのはソニーマーケティングという会社で、主な仕事はソニーの商品をヤマダ電機やヨドバシカメラなどのような家電量販店に卸すというものでした。つまり、エンドユーザーではなく、代理店の人たちを相手に仕事をしていたんです。ただ、会社に入って最初の2年間、私はまったく売上の立たない営業マンでした。

会社としても、新人にいきなり重要な顧客を任せることはできないという事情もあったのでしょう。当時、担当させられたのは、こちらに好意をもっておらず、コミュニケーションもままならないようなお客さんばかりだったので、仕方のない面もあったのですが。

ただ腐っていてもしょうがないので、ある取引先にお願いをして、エンドユーザー向けの販売活動に同行させてもらいました。

――つまり、そのエンドユーザー回りが、ビジネスの勘どころを身につけることにつながったと。

小室:その通りです。それまでの自分は、上司から「売上をたてろ」といわれても、「販売店の人に売ればいい」としか考えませんでした。でもあるとき、「エンドユーザーに買ってもらって初めて、自分の売上に跳ねかえってくるんだよな」と腑に落ちたんです。

それは私の営業活動の原点ともいえる気づきでした。それ以来、販売企画をつくる際、「この商品を売るのはむずかしそうだな」と思ったら必ず、営業活動をするまえに販売店の人をともなってエンドユーザーのところに商品を持っていき反応をみるということを徹底するようになりましたね。

そうした機会をとおして、どんな商品をどういう見せ方でプレゼンテーションすれば、お客さんからどんな反応がかえってくるかが分かっていった。つまり、「こうすれば、こうなる」という、ビジネスを展開していくうえでの予測能力を磨くことができたんです。

――そうした勘どころを身につけたことで、致命的なミスを回避することはもちろん、チャンスをつかむことにもつながったという感覚はありますか。

小室:創業直後、ソニーマーケティング時代の部下で、後に私の会社のメンバーとなるT君から「太陽光発電をビジネスにするのはどうか」とアイディアを持ちかけられたとき、すぐに「これはいける!」と確信しました。

というのも、T君からその話を持ちかけられたとき、私のなかで、ソニー時代のマーケティング経験からくる勘と、起業する直前の2年間学んだMBA理論が融合したような感覚があったからです。

そのとき私の頭のなかには、「数百万という超高額な商品だから参入障壁も高いのでは」「起業後にコンサルタントとして関わった太陽光事業の実態を多少把握している」などといった、いくつかの成功要因が浮かんでいました。

こうして言葉にすると理屈っぽく感じるかもしれませんが、当時は閃きに近い感覚をおぼえ、T君からその言葉を聞いた瞬間、「おもしろい!やろう!」と即決しました。まさに、ビジネスの勘どころを身につけていたおかげだと思います。

――そう直感した1年後に、ビジネスを始められたわけですが、営業活動はスムーズにいったのですか。

小室:弊社のビジネスの顧客単価は300~400万円ほどです。また、主なターゲットは、年齢層が30代~40代、住宅を購入して5年~10年ほど経過した世帯で、経済的にはそこまでゆとりがない人々と設定しています。

これぐらいの経済レベルのお客さんにとって、300~400万円という額は高い。しかも、商品自体に今ほどの知名度がなかったですから、営業活動は大変でしたね。

――そのような状況のなか、実際にどのような営業トークをして、お客さんに商品を買ってもらったのでしょうか。

小室:これは当時もいまも変わらないんですけれど、「イニシャルコストは高額。でも、減価償却がすめば、月々の電気代を節約できますよ」という話をするようにしています。

特に3.11の震災以降、私たちがビジネスの拠点としている北海道でも、節約意識がかなり高まりました。北海道の冬はとても寒く、暖房の使用量もすごいため、もともと電気代のかかるエリアなんですよ。

それらの事情もあいまって、「一定期間たてば、それ以後は確実に月々の電気代が下がりますよ」という話をすれば、ほとんどのお客さんは納得してくれる。

これも後になって振りかえると、ソニー時代の「モノを売るのではなく、コトを売れ」という教えが生きたような気がします。

(後編へ続く)

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