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「ご意向」に始まる混乱の最終責任は安倍首相にある

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 天皇陛下の生前退位をめぐる混乱はどこから生じたのか。陛下自らが「ご意向」を昨年8月に発表しつつも、「有識者会議」と意見がずれた。ジャーナリスト・東谷暁氏は、安倍政権にこそ責任があると指摘する。

 * * *
 ここで述べようとしているのは、今上天皇の「ご意向」にもかかわらず、それを実現しようとしない有識者会議への抗議ではない。そもそも、今上天皇の「ご意向」から始まった今回の譲位問題が、いまのような混乱に陥ったのは誰の責任なのかを再考し、その上で有識者会議を見直してみたいと思う。

 そもそも、今上天皇が「ご意向」を表明することが報道された事件は、いったい何と呼ぶべきだろうか。私はこれまで聞かれるたびに「これは宮内庁の一部とNHKの皇室担当者によるクーデターだ」と答えてきた。もちろん、この答を聞いて驚く人は多い。NHKテレビによる「ご意向」のスクープが報じられた直後に、ある雑誌に渡した拙文は「クーデター」という言葉ゆえに、結局、発表することができなかった。

 しかし、天皇制度をめぐる憲法および皇室典範という法制度を、「ご意向」という法制度には存在しない力によって変更する行為は、「法制度外の威力によって政体の転覆・変更を企てる」ことになる。政治学および法学からいって十分に「クーデター」に相当する。

 同じく「クーデター」という言葉を用いて、天皇ご自身のクーデターであると論じる人もいるが、それは適当ではない。今上陛下の「ご意向」が、憲法改正を望んでおられたのかどうかは不明だが、法制上は問題にならない。

 周知のように、現行憲法では天皇の国事行為は内閣の「助言と承認」によって行われる。国事行為に記載されていない公的行為もまたそれに準ずるものとされてきた。天皇誕生日に際しての「おことば」にあったように、この行為が「内閣とも相談しながら」なされたのであるとすれば、内閣は天皇への「助言と承認」を行っていたことになる。

 しかし、安倍内閣の「ご意向」表明についての「助言と承認」は憲法に基づくものとはいえない。内閣が助言をして天皇に「ご意向」を発表していただくなどという条項はどこにもないし、そうした解釈の根拠にすべき条項も見当たらない。

 したがって、安倍内閣は恐るべきことに、天皇の国事行為あるいは公的行為ではない行為に「助言と承認」を行ってしまったことになる。内閣の責任者は安倍首相だから、今回の「ご意向」に始まる混乱の最終責任は安倍首相にあり、結果的にせよ違憲行為に及んだのは安倍首相本人なのだ。

【Profile】ひがしたに・さとし●1953年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。論壇誌『発言者』編集長などを歴任し、1997年よりフリーのジャーナリストに。『不毛な憲法論議』『預言者 梅悼忠夫』など著書多数

※SAPIO2017年3月号

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