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【謎】まぼろしのハンバーガーチェーン「グリコア」のメニューを再現してみた【グリコアの謎・後編】

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「ひとつぶ300メートル」のキャッチフレーズや、道頓堀のシンボルマークでおなじみの「グリコ」が、かつてハンバーガーチェーンを展開していたことをご存知だろうか?

その名も「グリコア」。

1973年から1993年頃まで約20年間存在しており、ネット上に数々の証言が挙がっているにも関わらず、首都圏でそこらじゅうの人々に訪ねても「聞いたことがない」という言葉しか返ってこないという、まぼろしのハンバーガーチェーンだ。

こちらが、当時実際に使われていたメニュー表(1979年頃)の全貌である!

お話を聞かせてくださったのは、江崎グリコ株式会社グループ広報部・社史資料室の窪田さんだ。かつて、大阪の江崎グリコ本社内の社員食堂にも「グリコア」があり、実際に「グリコア」製品を食べた経験をお持ちだという。

今回は、実際に「グリコア」に行ったことがあるという都内在住のTかつさん(仮名・40歳・茨城県出身)の記憶スケッチや、ライター・増山によるメニュー再現も交えながら、当時の秘密に迫っていく!

江崎グリコ本社に直撃取材! 驚くべき事実が明らかに!

──お菓子の「グリコ」がハンバーガー店を出していたというのがとても意外に思えるのですが、どんなきっかけでスタートしたのでしょうか?

江崎グリコ株式会社グループ広報部・窪田さん:1973年、アイスクリームディッシャー専門店としてショッピングセンター内に展開したのが始まりです。もともと当社では一般小売店向けのアイスクリームを生産していましたが、昭和40年代後半に、ファストフードチェーンで使う業務用アイスを委託生産することになりまして、それだったら、うちでもお店をやろうということで始まった事業です。

──もともとはアイス専門店だったのですね! グリコといえば、「アイスの実」や「パピコ」などがありますもんね。当時、どんなメニュー展開をしていたのでしょうか?

キャッチフレーズは「アメリカン・スナックレストラン」。1975年からサブメニューとしてハンバーガーを加えて、1978年から正式メニューになりました。1980年よりフライドチキンを開発し、他のファストフードチェーンにないバラエティー豊かなメニューが特長になりました。一部の店舗では、ピザも販売していました。

──すると、アイス専門店の時代を経て、ハンバーガーチェーンとしての「グリコア」が確立されたのは1975年から1980年頃ということになりますね。当時、テレビCMは行われていたのでしょうか?

テレビ広告は実施せず。加盟店募集の新聞広告程度です。

──そうなると、現在東京にいる人が「知らない」と言うのも納得できますね! 店舗は、どのようなものだったのでしょうか? 行ったことがあるという証言は、なぜか都心ではほとんど見られず、郊外に偏っているようなのですが……。

店舗のタイプは、路面店型とインショップ型の2モデルがありました。出店エリアは、東北から九州まで。住宅地に近いショッピングセンター内への出店が多かったのですが、ショッピングセンターは郊外に立地することが多かったものですから、都心ではなくおのずと郊外店が多くなったというわけです。

都心での出店は少なく、おもに新宿サブナードにあった程度だという(上の写真は2017年現在のもの)。

こちらは、窪田さんに送っていただいた、岐阜県の某店舗写真だ。「グリコア」の店名ロゴは、お菓子の「グリコ」と共通のもののようで、独自の書体デザインが素晴らしい。頭上のメニューからは、「ホームパック(3ピース)¥510」「お子様セット ¥370」などの文字が読み取れる。

おなじみの「ゴールインマーク」も、はっきりと描かれている。

アイスクリーム提供用に大きなスペースが割かれているのが非常に特徴的だ。

──アイスクリームは、どんなものだったのかが気になります!

バニラ、オレンジダイス、チョコマーブル、ピーカンファッジ、コーヒー、ココナッツ、バターブリックル、ラムレーズン、レモンフレーク、ライム、チョコチップ、ペパーミント、オレンジシャーベット、チーズケーキ、リコリス、ココナッツパイン、チョコアーモンド、ストロベリー、グレープシャーベットなど、150種類のうち、16種類を季節やお店によって選択していました。

現行商品で近いものはないのですが、自販機のセブンティーンアイスに、バニラ、グレープシャーベット、チーズケーキ、チョコレートなど共通のフレーバーがあります。ただし配合は違います。

──:アイスのほか、インターネット上の証言では、焼きそばが売られていたという話もあるのですが、本当でしょうか……?

そうですね、主なターゲット層は、主婦を中心とする女性や、学生さんだったのですが、エリアに合わせてよく売れるメニューを各店が独自に品ぞろえしていたため、お店によっては焼きそばやたい焼き、フランクフルトといったメニューもあったのは事実でございます。それなりに人気はあったようですが、正式メニューにはなっていません。

──:グリコ+ハンバーガーというだけでも驚きなのに、そんなバラエティーに富んだメニュー構成だったとは! まさにショッピングセンターのフードコートのような存在だったのですね。ますます、撤退してしまったことが悔やまれるのですが、江崎グリコ社員のみなさんの間では、このまぼろしのハンバーガーチェーンの存在は、常識なのでしょうか?

撤退後20年以上経つので、社員の半数以上はその存在を知らず、現在は社内で話題にも上りません。現在、おみやげ菓子などを販売する「ぐりこ・や」というショップを全国17店で展開しているのですが、「グリコア」のことを聞かれると「ぐりこ・や」のことを思い浮かべる社員のほうが多いくらいで、「グリコア」と言われてピンと来る人は少ないですね。

──社員の方すら知らないのなら、一般消費者が知らないのも納得ですね。もし仮に、現在も「グリコア」が営業されていたとしたら、どんなメニューが出ていたと思われますでしょうか?

個人的には、「カロリーコントロールアイス」「アーモンド効果」などを使った、健康・美容に特化したメニューや……

「ZEPPIN」「クレアおばさんのクリームシチュー」などを使ったメニューが登場していたのではないかと思うのですが……。

「他社とは差別化した独自性のあるもの」というのが本来のグリコの商品開発の考え方なので、ユニークなメニューを開発したと思います。ご指摘のように「健康志向」メニューを採用している可能性は高いです。

当時の「グリコア」の雰囲気を再現

このように、インターネットでの公式情報がほぼゼロに近いにも関わらず、いざお聞きしてみると、まるで自分も「グリコア」を体験したかのような気持ちになれるほどの臨場感あふれる事実が、次々と浮き彫りになってきた。

ここまで知ってしまうと、私も「グリコア」に行きたいー! という気持ちが抑えきれず、窪田さんの承諾を得て、当時の実際のメニューや証言をもとに、「グリコア」店内の様子の再現を試みることにした。

材料は社外秘であり、パッケージもインターネット上の証言をもとにアレンジしているため、あくまでイメージにとどまるが、ぜひ当時を疑似体験してみようではないか。

まず、肝心のハンバーガーから。

窪田さんによれば、ハンバーガーは日本人の味覚に合うようアレンジされており、パティを含め手づくり感の高い仕上がりだったとのことだ。

メニューを見る限り、バンズと1枚のミートパティに、レタスのような葉野菜、ケチャップ、マヨネーズが使われているのがわかる。

また、当時を知るTかつさんによれば、刻み玉ねぎは入っていなかったとのこと。

ハンバーガーを自宅で作るときにまずぶち当たる難題が「ハンバーガーバンズが売られていない!」という問題だ。

近所のスーパーマーケット数店や、パン専門店をまわってようやく見つけることができた。素朴な形で、手作り感を醸し出すのにうってつけだ。

ここに、あらびき肉で作ったパティなどを挟む。

ひとまず、見た目はまあまあ再現できたのではないだろうか。Tかつさんの証言によれば「やわらかく、うまい」ハンバーガーだったようだ。

続いて、当時のパッケージ作りに挑戦。

当初は走る男性が描かれた「ゴールインマーク」が使われており、後期には赤白2色で、「グリコア」の店名ロゴが入ったものに変更されたという。

いただいた資料やインターネット上の画像からは、ハンバーガーの包装紙のデザインがわからないため、公式メニューからマークをお借りし、資料をプリントアウトして手作業を加えてしっくりくるデザインを模索してみた。

制服に関しては、当時のフランチャイズ募集用の資料に写真が残されていたため、こちらの女性スタッフ向け制服を再現してみることに。

きっと、こんな感じだったのではないだろうか。

襟と袖の折り返し部分が白になったピンク色のシャツ。「Glicore」の文字が書かれたサンバイザーや青いリボンに見られるように、制服もパッケージやロゴデザイン同様、赤・青・白がテーマカラーになっていたようだ。

以上の作業を経て完成したのが、こちら「グリコア」初期バージョンの予想図。

ハンバーガーの包装紙は、「ゴールインマークが描かれていた」「星条旗のような模様があった」という証人達の記憶から想像したものである。

フライドポテトやジュースの紙コップは、1979年当時の公式メニューをもとにしているため、かなり実際のものに近いはずだ。

続いて、後期の赤白バージョンも作成を試みた。

ゴールインマークがなくなるとグリコ感が薄くなり、急に現代っぽさが出てくる。

一部店舗で販売されていたというたい焼きや焼きそばは、こんな感じ?

以下は、もし現代に「グリコア」があったら……という想像メニューである。

グリコのおまけがつくお子様セット。「グリコア」のメニューにはグリコのおまけのついてくるメニューはなかったそうだが、ぜひとも導入されてほしい。

そして、絶対あったと思うのが、「クレアおばさんのクリームシチュー」を使ったスープ。+100円で、セットに付いてくるジュースやコーラをスープに変えられるシステムがあったに違いない!

あと、試みにやってみたら異常においしかったのがこちらのメニュー。

「ZEPPIN」カレーピザセットだ。

「グリコ」を少しの水とともに電子レンジに入れて加熱すると、キャラメルマキアートのような雰囲気の液体ができあがるのだが、これをカレーに入れてみた。ちなみに「グリコ」には、滋養強壮に役立ち、カレーの隠し味にもよく使われるかきエキスが含まれている。

そして、ダイエット中のシェイクファンにすすめたいのがこちら!

「80kcal カロリーコントロースアイス」を使った、低カロリーシェイクである。

美容のために、と思い「アーモンド効果」と混ぜてミキサーにかけてみたら、アーモンド風味がおいしすぎて2杯くらい飲んでしまった。アイス2:アーモンド効果1くらいの割合がおすすめだ。

本格派の高級ハンバーガー店が増えている日本だが、その歴史の黎明期には、この「グリコア」のように、今では見られなくなった日本オリジナルのハンバーガーチェーンが多数存在していた。

ファストフード日本進出50周年となる2020年あたりに、限定イベントでもいいから「グリコア」が復活してくれないかな……とハンバーガーファンの一人として強く思った次第である。

「『グリコア』に行ったことがある!」という全国の皆様、「こんなメニューがあった」「当時のパッケージをまだ持っている」などの情報がありましたら、こちらまで(@ishikaki28)お寄せください。お待ちしております!

※この記事は2017年1月の情報です。

書いた人:増山かおり

1984年、青森県七戸町生まれ。東京都江東区で育ち、百貨店勤務を経てフリーライターに。『散歩の達人』(交通新聞社)にて『町中華探検隊がゆく!』連載中。『LDK』(晋遊舎)『ヴィレッジヴァンガードマガジン』などで執筆。著書に『東京のちいさな美術館・博物館・文学館』(エクスナレッジ)、『JR中央線あるある』(TOブックス)、『高円寺エトアール物語~天狗ガールズ』(HOT WIRE GROOP)。 Twitter:@ishikaki28

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