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(Single Review)米津玄師『orion』名もなき光の集合体、ひとつの消滅に見る小さな希望

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(Single Review)米津玄師『orion』名もなき光の集合体、ひとつの消滅に見る小さな希望

 吐く息は白く、寒さが鋭くなる2月、その淀みない夜空を見上げれば無数の星が目の奥に飛び込んでくるだろう。ほとんどが名もなき光としてそこにある。けれどもひとつ、オリオン座を指差せる人は多いはずだ。

 2017年2月15日、米津玄師が3曲入りのニューシングル『orion』をリリースした。タイトル曲「orion」は、NHK総合で放送中のTVアニメ『3月のライオン』第2クールのエンディングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。原作は羽海野チカの同名漫画。主人公・桐山零は15歳で将棋のプロ棋士になった華々しい経歴を持ちながらも、幼いころに両親を亡くし、親戚とは確執があり、一年遅れで行った高校にもなじめない。物語はそんな彼の少しずつ変化していく状況と心境を繊細なタッチで描いたものである。

 偶然にもこの舞台となった東京・月島に住んでいたことがあるという米津玄師。楽曲制作時には桐山零との共通点を考えたと本人が語っているが、突出した才能を持ちながらも柔らかいベールのような孤独をまとった雰囲気はよく似ているように思う。あるいはその才能こそが孤独の所以かもしれない。彼が“ハチ”という名義で動画サイトに楽曲を投稿していたことは有名だが、それよりも以前に結成していたバンドは頓挫。どうやら人と一緒にものを作ることが苦手らしい。

 かくして一人、ヴォーカロイド・シーンから飛び出してきたことからも想像がつくが、基本的に米津玄師の書く楽曲はBPMが早く音数が多い。「街」「サンタマリア」「Flowerwall」などバラードもあるが、その中でも「orion」のシンプルさは特殊である。全体を通してコード進行は四小節のまとまりで展開されていくうえ、コード自体もそれほど複雑ではない。序盤から印象的なストリングスをはじめ、途中から導入されるピアノやクラップも同じフレーズを繰り返す。だからこそ一際目立つ音の美しさ。それらの一つひとつが名もなき光のようで、その集合により完成するのは目に痛いほどの眩しい星空だ。

 「orion」は“僕”と“あなた”との繋がりの象徴であり、歌詞には<あなたと二人/この星座のように/結んで欲しくて>とあるものの、この淡い願いが届くのかはわからない。2010年ごろの観測では、オリオン座を形成する星のひとつ「ベテルギウス」の縮小が判明した。これは星の寿命である超新星爆発の前兆と考えられており、つまりオリオン座は消滅の危機にあるということになる。米津玄師がこれを念頭に置いたのかはわからないが、前シングルでは自らを「LOSER」と称した男。<二度と離れないように>という言葉はどこか虚しさをもって響き渡る。

 ちなみに『3月のライオン』というタイトルは、イギリスのことわざ「March comes in like a lion, and goes out like a lamb.」からつけられた。春は荒れた天候から始まり穏やかに終わる、という意味らしい。なんであれ春は終わる。人には別れが訪れる。永遠は存在しない。けれどもそれを願い続けることでしか希望は生まれてこないのだ。

 なお、米津玄師は春生まれ。――3月である。

テキスト:佐藤悠香

◎リリース情報
New Single『orion』
2017/2/15 RELEASE
<オリオン盤(初回限定)>
SRCL-9313 / 1,700円(tax out) / CD+クリアシート+ハードカバー仕様
<ライオン盤(初回限定)>
SRCL-9314~9315 / 1,700円(tax out) / CD+DVD+紙ジャケット仕様
(C)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会
<通常盤>
SRCL-9316 / 1,200円(tax out)

CD収録楽曲:
1. orion
2. ララバイさよなら
3. 翡翠の狼

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