ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう
「ジャスティス・リーグ」特集サイト

「元気な外資系企業」は何をしているのか?働き方も事業戦略も“想定外” 〜第1回 日本マイクロソフト

DATE:
  • ガジェット通信 GetNewsを≫

大きな変革の時代。企業でも、さまざまな取り組みが進む。では、海外に本社を持つ外資系企業では、どんな取り組みが推し進められているのか、探ってみる外資系特集企画。第1回は、日本マイクロソフトの「働き方改革」だ。

f:id:k_kushida:20170117195637j:plain

ほぼ100%の社員がテレワークを行っている

2011年2月から、都内7カ所に分散していたオフィスを段階的に品川に統合。以来、もうすぐ6年。このオフィス移転を機に、日本マイクロソフトが大胆な働き方改革を推進してきたことは、知る人ぞ知る事実となっている。オフィスの訪問・見学者は、なんとすでに83万人以上にもなる。経済界のみならず、政界、官界、地方など、幅広い分野から見学者が押し寄せているのだ。

一般社員が働くオフィスを見せてもらった。まず目に飛び込んでくるのは、いわゆるオフィス用デスクなどがずらりと並んだ無機質な空間とは対極にある、およそオフィスらしくない空間だった。まるで、海外のレストランのようである。

f:id:k_kushida:20170118113806j:plain

▲オフィスの中にある打ち合わせをするスペース。各机にはモニターが設置されており、カラフルな椅子が並ぶ。

f:id:k_kushida:20170118113833j:plain

▲オフィスの中央には円形の一人で集中して業務を行う部屋(ここでは会議や電話は禁止)

f:id:k_kushida:20170118113902j:plain

▲昼になるとランチスペースとして使われることも

f:id:k_kushida:20170118114924j:plain

▲ちょっとした打ち合わせ用のボックス席も(写真奥)

f:id:k_kushida:20170118115204j:plain

▲オンライン会議や長めの電話を行うための個室

カラフルな色使い、さまざまな形、大きさ、種類のテーブルやデスク。椅子のタイプもさまざまで、デスクチェアもあれば、ハイチェア、カフェ風のソファ、ボックスシートもある。個室も用途別に用意されており、4人ほどで会議をする部屋からテレビ電話用の部屋、上司と部下で面談するのにぴったりの部屋、さらには一人でとにかく集中して仕事ができる部屋、なんてものもある。コーポレートコミュニケーション本部 本部長の岡部一志氏はこう語る。

f:id:k_kushida:20170118115510j:plain

日本マイクロソフト株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 本部長 岡部一志氏

「基本的にフリーアドレスです。ロッカーは決まっていますが、社員は社内のどこで働いても構いません。引っ越し当初は6割ほどがフリーアドレスでしたが、今は8割を越えています」

ITインフラには、マイクロソフトのクラウドサービス『Office 365』をベースにした基盤が使われている。ビジネス用スカイプ(Skype for Business)が組み込まれているため、固定電話が必要なくなった。固定席もなくなり、社員はどこでも働けるようになったのだ。

こうしたインフラが整ったことで、会社に来ないで仕事をする在宅ワークやテレワークが可能になった。会社もそれを推奨。時間に縛られないフレキシブルな働き方ができるようになった。子育てに活かせることはもちろん、毎週水曜日は在宅勤務をする、介護の心配もあり来週は故郷で仕事をする、自宅のほうが集中できるので今日は自宅で仕事をする、海外出張の合間に帰国するのは大変なので海外で仕事をしてくる、などさまざまな働き方が実践されているという。岡部氏はいう。

「ほぼ100%の社員が、会社以外の場所で仕事をするテレワークを行っています。1カ月に1度も使わない、という人はほぼいないと思いますね。週に1回から3回くらいが多い。もちろん、会社に来なければ仕事ができない職種もありますが、逆に会社に来なくてもできる仕事もあります。会社としては、しっかり結果を出してもらえれば、基本どこで仕事をしてもらってもかまわない、という考え方です」

かつては夜遅くまで会社でモーレツに働く、という文化があったのだという。ところが、働き方改革で大きく変わった。それは、社内調査の結果にも表れている。改革前に比べ、ライフワークバランスの社内満足度は40%も向上。女性の離職率は40%減。育児休業あけの女性社員の復帰率は100%になるという。意識調査期間Grate Work to Placeが発表した「働きがいのある会社ランキング」では5年間で2度、1位に輝いている。

そればかりではない。働き方改革は会社の業績にもプラスをもたらした。売り上げが伸びている一方で、従業員数は実は減っている。社員一人当たり売り上げが伸びたということだ。事業生産性が上がったのである。また、旅費・交通費が20%減。会議もオンライン化が進んだことでペーパーレスが49%も進んだ。営業からは、「移動時間や会議が減り、お客さまとのコミュニケーションに使える時間が増えた」という声がたくさん上がったという。

働き方改革の背景に「経営陣の危機感」

f:id:k_kushida:20170118120314j:plain

日本マイクロソフトの働き方改革の目的には、生産性向上や非効率排除のほかに、最新のテクノロジーを使った最新の働き方ができるようにする、さらには社員がワクワクして働けるようにする、というものがあった。背景にあったのは、経営陣の危機感だ。ドラスティックに環境が変化していく中、働き方が縛られていたのでは、すばやく変化に合わせて動くことができない。社員も生き生きと働けない。変化の激しい時代に対応し、イノベーティブに組織が活動していくには、フレキシブルな働き方が欠かせないと考えたのだ。

それがまさに求められる状況が、改革をスタートさせて3年目に起こる。米国本社の経営陣の交代で、ビジネスの考え方から社員の評価方法まで、大転換が起きたのである。

「それまでマイクロソフトは、ソフトウェアを販売するライセンスによる売り上げを主としていました。しかし、これからはどのくらいクラウドサービスを使ってもらうか、という考え方に大きくシフトしたんです。これを機に、社員の評価方法も変わりました。ただ数値目標を達成するために的確に仕事をこなせばいい、というだけではない。自分が所属する部門や会社、そしてお客様に対して、どのくらいインパクトが与えられたか、ということが評価の軸になりました」

例えば、営業はソフトウェアをただ販売する仕事ではなくなってしまった。その先に、どう使ってもらうかを考えることが求められるようになった。そのためには、技術者はじめ、さまざまな社内外のリソースをフル活用して顧客に向き合うことが必要になる。今では、クラウドサービスの利用を広げるために、競合のアップル社の製品に対応したアプリやサービスも拡充し、顧客にも提供しているという。かつてはありえなかったことだ。

営業以外でも、業務の評価がインパクトで行われるようになった。数か月毎に1度、上司と面談して、この間どれだけのインパクトを業務を通じて、会社や組織、または顧客に与えることができたか、語れなければいけない。求められているのは、新しい発想であり、変革であり、大胆な取り組みだ。ただ普通に仕事をしていればいい、ではなくなった。仕事のやり方が一変してしまったのだ。

「もし、硬直化した働き方をしていて、これだけのドラスティックな変化が起きていたら、受け入れるのはなかなか難しかったかもしれません。しかし、働き方がフレキシブルになっていたことで、これもすんなり受け入れることができたのだと思います」

働き方改革の成功要因は、制度ではなく「カルチャー」から作ること

f:id:k_kushida:20170118120844j:plain

マイクロソフトは昨年、創業から41年を迎えた。意外に思われるかもしれないが、昨秋、そんなマイクロソフトがアメリカで株価の史上最高値をつけたのだ。ITの世界では新興企業が続々と登場してきたが、今、マイクロソフトは静かな逆襲を始めているのだ。これを支えているのが、ドラスティックなビジネスの変革である。日本ではすでに、3年前に数%だったクラウドサービスの売り上げが30%を超えるまでになっている。

働き方改革の難しさは、あちこちの企業から聞こえてくる。オフィスを変え、フリーアドレスにしたところで働き方は変えられるものではない。制度を作っても、誰も使わない……。そんな声もよく聞く。なぜ、日本マイクロソフトはうまくいったのか。ひとつは、働き方改革が経営ビジョンに組み込まれていたことだと岡部氏は語る。

「自分たちの会社の経営課題を解決し、会社の今後の成長に向けて何をするべきかを考えたとき、働き方改革は極めて重要なものだ、ということを経営陣が強く認識しています。これが何よりも大きいと思います。経営方針の中に働き方改革が据えられ、働き方改革が会社を成長させる、とトップ自らが旗振りをしているんです」

もうひとつ、制度を作るのではなく、カルチャーから作っていったということ。実はもともと日本マイクロソフトには、在宅勤務制度があった。だが、働き方改革が行われたとき、この制度が意識されることはなかったという。実は制度は昨年になって改定され、自由度を大きく高める制度になった。しかし、制度改定の前から、誰もが制度を意識することなくテレワークとして在宅勤務を行っていたのだ。

「制度を作ったり、制度の利用促進を図ったりすると、制度を使うことが目的化してしまいかねません。大事なことは、自分に最も合った働き方、自分にとって最も生産性が高く、効率の良い働き方を選択できるかどうかです。それは在宅勤務であってもいいし、実は毎日、会社に来ることでもいいんですね。自分にとっても会社にとってもプラスだということを広く認識してもらい、自らやってみようと思ってもらうことこそ重要なんです」

そして気になるのは、サボってしまう社員は出てこないのか、という点。どこでも仕事ができるとなれば、誰も見ていない。これで仕事は本当に成立するのか。

「いつでもどこでも働けるようになりましたが、そのかわりちゃんと活躍してくださいね、というのが前提なんです。会社に来ていなくても、ちゃんと活躍してくれていれば評価されます。逆に、とにかく会社にさえ来ていれば評価されるわけではない。多くのケースで、上司やチームとしっかり事前に仕事情報の共有をしているようです。特にスケジュール共有など透明性が重要です。このあたりは上司のマネジメント力も問われますが、しっかりしたトレーニングも導入しています」

考えてみたら、どれくらいの人がどうしても会社に行かなければいけないのだろうか。朝からヘトヘトになる通勤ラッシュなど、やがてはもう無縁になるかもしれない。保育園のお迎え時間に焦ることもなくなるかもしれない。いつでもどこでも自分の好きな場所で仕事ができる。そんな働き方が実践されている会社が、すでにあるのだ。

WRITING:上阪徹 PHOTO:中恵美子

オフィス写真提供:日本マイクロソフト株式会社

関連記事リンク(外部サイト)

カルビーの“利益率が5年で10倍”を実現させた「働き方改革」とは?
地方移住に必要なものは?伊豆の地域活性化伝道師・飯倉清太のアンサー
次々と新規事業を打ち出す寺田倉庫に学ぶ、レガシー業界で飛躍するためのチャレンジ力とは?

リクナビNEXTジャーナルの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。