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VR認知症体験会は社会を変える!

「デジタルコンピュータに接続されたディスプレイは物理世界では現実にできない概念に親しむチャンスを与えてくれる。それは数学的ワンダーランドを覗く鏡だ」

VRの先駆者、アイバン・エドワード・サザランドはバーチャル・リアリティをこう表現しています。今日、VRはいくつかの変遷と可能性を持って進化し、現実にできない概念や数学的ワンダーランドどころか、「物理社会で現実に起きている」概念に親しむチャンスすら与えてくれます。

言い換えれば、「未知の現実に通じる扉」として。そして、それは社会を変える力を持っていると言えるでしょう。

当事者・社会・自分の今を変える

介護に携わる者として、また、認知症と診断された祖母の孫としてずっと引っかかっていることがありました。

自分はある程度のスポーツをこなすだけの身体を持っていて、ここが何処か、今日がいつか、クッキーの材料をどこにどうやって買いにいけばいいかも理解していて、電車に乗っても、降りる駅を間違えたのは寝過ごした時だけです。担任している学生の名前は全員覚えているし、目に見える人やモノには実際に触れることができます。幸いなことに持病もありません。

そんな自分が、認知症当事者や介護を必要とする人の持つ感情に、「共感」して「ケア」することが本当に出来ているのか?ということです。これは、多くの対人援助者が感じていることではないでしょうか。

介護関係の教科書にはさも当然のように、「共感しましょう」「共感的理解をしましょう」と書かれていますが、これを見るたびに、「そんなに簡単なものじゃない」と漠然と思っていました。(僕に臨床心理を叩き込んでくれた某先生も「相応のトレーニングなしには難しい」と仰っていました)

20年近く前、とある病院では「患者」と呼ばれる認知症の人たちに、鍵のついたツナギを着せ、ミトンを着け、ベッドに体幹・上下肢を縛りつけ、薄汚れた天井を見ること以外の権利を奪っていました。病棟には重い鉄の扉が設置され、常時施錠されています。病室は強化ガラスと鉄柵で囲まれ、ベッドだけが置かれているか、床に布団が敷かれているだけの部屋もありました。理由は「認知症だから」、それでもやはり教科書には「共感すること」と書かれていました。

VR認知症プロジェクトは、株式会社シルバーウッド社長の下河原忠道氏によって、『私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活(ブックマン社)』の著者、樋口直美さんらを監修・演技指導に迎え、制作されています。

私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活
私の脳で起こったこと レビー小体型認知症からの復活

この画期的なテクノロジーと情熱の融合体は、これまで接してきた多くの高齢者や若年性認知症と診断された人たちの見る現実を体験させてくれます。

HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着している間、自分は確かに認知症でした。体験の共有は共感につながる、おかしな言い方をすれば認知症かどうかではなく、ただ単純に今困っているこの人たちがどうすれば生きやすくなるのか?を考えるようになります。

VR認知症体験記

テクノロジーが社会課題を解決してきた例はいくつもあります。社会はテクノロジーによって変化し、また多くのテクノロジーを生み出してきました。

VR認知症体験会はこれまで1500人以上が体験し、先日、僕が主催するケアコネクトみやぎという小さな介護職ネットワークで実施いただき、80名以上の参加がありました。

開催当日に体験した順に、これから体験する方のために内容の詳細を記載することは避けつつ、体験した感情を述べてみます。(話数表示は作成された順ではありません)

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