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『REALIFE』は当代随一のライブバンドである10-FEETが非凡なセンスを示した初期の傑作

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2月1日、まさに本日、通算16枚目のシングル「ヒトリセカイ×ヒトリズム」を発売した10-FEET。2月5日からは全国ツアーがスタート。4月16日には氣志團との合同フェス『THE GREAT ROCK’N’ROLL SEKIGAHARA 2017 〜万博大作戦日本シリーズ〜』が開催され、さらには彼らが企画する野外フェス『京都大作戦2017〜心の10電!10執念!10横無尽にはしゃぎな祭!〜』が今年は7月7日から3日間開催されることが発表されるなど、すでに節目の年に相応しい盛り上がりっぷりだ。本コラムでも彼らの20周年を祝って、その名盤と共に10-FEETの魅力を考察してみようと思う。
『REALIFE』(’04)/10-FEET (okmusic UP's)

3ピースバンドらしからぬ音楽性
結成20周年。さらに自らが企画しホストを務める野外フェス『京都大作戦』が10年目の節目を迎える2017年。今や大型ロックフェスのヘッドライナーとなることも珍しくなく、彼らは日本を代表するライヴバンドのひとつであることは疑いがない。いや、それどころか、公式サイトのライヴアーカイブに掲載されている過去の公演一覧を見る限り、もはや10-FEETは日本のライヴバンドの頂点と言えるのではないかとも思う。見てもらえれば分かるが、ここ5年間、ライヴをしていない月がほぼないのである。自身の全国ツアー、他バンドとのカップリングやゲスト出演、イベント、フェスを含め、ザッと見て年間100本程度。単純計算で3、4日に1本。当然、移動日も、それこそレコーディングやプロモーション期間もあるわけで、そう考えるとこの本数は驚異的ですらある。日本国内においてのコンサート回数の最多記録はさだまさしがトップで、おそらくTHE ALFEE辺りがそれに続く相当数のライヴをやってきていると思われるが、そのうち、10-FEETの眼前にその先達らの背中が見えてくるのではなかろうか。あれは15年前くらいだったか。彼らが実家の京都に活動拠点を置いていることを何気なく尋ねたら、「ずっと地方を転々としているので、ほとんど自宅へ帰ることがない。東京でアパートを借りてると家賃がもったいない」と笑っていた。確かにその通りだし、早くからライヴバンドとしての覚悟を持っていたのだなと、今となっては思うところだ。
10-FEETの楽曲はメロディックハードコア、所謂メロコアに分類されるものが多いだろうし、そのメロディックさ=歌の旋律のポップさはバンドの特徴のひとつであろうが、個人的に見逃せないのはそのミクスチャー要素だと思う。ミクスチャーと言ってもロックにラップを加えた、俗に言うミクスチャーではない。もちろんそれもあるが、彼らはレゲエやカリプソ、ボサノヴァといった、少なくとも2000年代の日本のパンク勢がほとんど混ぜ合わせようとしなかったジャンルを意欲的に盛り込んだ。最初にそれを聴いた時はマジか!?と驚きを隠せなかったことを思い出す。パンクバンドがレゲエやスカを取り込んだ例としてはThe Clashがいるからして、音楽性が幅広いこと自体には驚くべきところはないが、10-FEETの場合は1曲中にジャマイカンやブラジリアンを転調させつつ入れ込んでいる。まぁ、4~6人編成のバンドがやるなら、それも理解できなくもなかっただろう。ところが、10-FEETは3ピースバンドである。転調するだけでも演奏は大変になるだろうに、果敢にそこに挑んだ音源を聴いて、最初は「何でこんなことをやろうとしたの!?」と素直に思ったほどだ。TAKUMA(Vo&Gu)に至ってはギターを弾きながら歌い、ラップするだけでなく、クリーンヴォイスとデスヴォイスを使い分けもするのだから、半端ではない。

聴き応えはあくまでもポップに
最新シングル「ヒトリノセカイ」に代表されるように、最近ではストレートな楽曲が多くなっているようだが、少なくとも初期10-FEETの楽曲にはそういった傾向が見られたし、個人的にはそれが強く印象に残っている。というわけで、10-FEETの名盤と言うと、やはり初期の作品を推したくなる。ギリギリまで『4REST』とどちらにしようかかなり迷ったが、その彼らならではのミクスチャーサウンドがより分かりやすいという一点で『REALIFE』を取り上げたい。
今回、本稿作成のために聴いてみて改めて感じたが、M1「2%」から、その10-FEETらしさが全開である。イントロからして所謂パンクバンドのそれではない。ジャジーなリズムにカッティングギターとラップ。ラジオ風エフェクトがかかったスリリングなサウンドはアルバムのオープニングに相応しい印象だが、そこから一転、「バナナ・ボート」の♪Day-o, day-ay-ay-o♪を彷彿させるジャマイカンなメロディーラインが展開。ロックバンドらしい疾走感はそのままに、そこから開放感のあるサビに突入するという、10-FEETしかできないダイナミズムが発揮されている。M2「RAISNG THE ROOF!!!」やM8「nil?」にもレゲエが注入されているが、もっともレゲエが印象的なのは、今や10-FEETの代表曲でもあるM3「RIVER」だ。Cメロ──《助けてのその一言は/僕の存在を否定するもの》以降のTAKUMAのトースティング的な歌唱は、その迫力あるダミ声的な発声と相俟って極めて特徴的だ。さらには、M5「Pee!Caa!Boo!」ではカリプソ、M10「recollection」ではボサノヴァと、間違いなく、意図的にワールド・ミュージックを取り込んでいることがよく分かる。
こうしたさまざまな音楽ジャンルを取り込みつつも、10-FEETからは「僕たちはこんなこともできるんですよぉ、えっへん」といったような嫌味ったらしい俗物根性は微塵も感じられない。その佇まいは、あくまでもポップなパンクバンドである。これが10-FEETの最大の利点──このバンドのもっとも素晴らしいところではないかと思う。これはもちろん、その取り込んだ音楽ジャンルを泥臭く聴かせないというテクニックもあるだろうし、小難しく見せない彼らのキャラクターによるところも大きいだろうが、何よりもサビのメロディーが親しみやすいからだと考える。主たるメロディーが分かりやすいのでその前後で若干マニアックなことをやっても大丈夫なのだろうし、逆に言えば、民族音楽を取り入れることで強調すべきところが際立つという構成の巧みさもあるだろう。この辺はメンバーがどこまで意識的にやっているのか分からないが、仮にストレートな3ピースのパンクチューンばかりなら食傷気味になっていたとも予想できるバンドの音楽性をふくよかにしているとも思う。その後の10-FEETはかなりエッジの立ったハードなサウンドも披露するが(2009年に発売したシングル「1sec.」辺りがその最右翼だと思う)、それにしてもキャッチーなメロディーはしっかりと残していた。この辺りからも、彼らがポップミュージックの妙を知る非凡なバンドであることを察することができる。

てらいなく堂々と前向きなリリック
10-FEETのもうひとつの特徴は、そのヒューマニズムあふれる歌詞である。
《いつかいつか土に還る/不安も忘れて大丈夫/僕らは幸せになるために産声あげた!/いつかいつかは皆還る/失恋も失業も 君の莫大な経験に》(M1「2%」)。

《生きていくという事は 死ぬ準備をする事で/死を恐れて生きるより 笑えぬ死を恐れたい/悲しい事は自分に 嬉しい事は あなたへ/少しだけ強い人に 少しだけ強い人になりたい》(M7「Trapped」)。

《全部投げ出したい すぐ辞めたい 他人のせいにして逃げ出したい/ただ一つ 気になる夢が夢であり続ける/しかし未来のオレがオレに言う このオレの夢叶えたのは YOU!》《ああ 叶わなかった夢 ああ 変わらなかった夢/ああ 叶いきった夢 ああ 変わりきった夢/つたい落ちた数これから微笑む NEW LIFE!》(M10「recollection」)。
前向きである。しかも、それは闇雲な前向きさではなく、人生には限りがあるからこそ、前を向こう──いや、人生は有限だから後ろを向いている暇はないという現実感がそこにある。パンクロック、ミクスチャーにポジティブな言葉を乗せるというのはHi-STANDARDなり、Dragon Ashなりの前例があるので、それ自体は特筆すべきものではないのかもしれないが、日本語でキャッチーなメロディーに乗せたことは意義深いと思う。その10-FEETが発信するメッセージと、そういうバンドの姿勢は確実にリスナーに浸透した。以前、彼らのライヴでこんな光景を観たことがある。最近はご無沙汰しているので、今もTAKUMAがそうやっているかはわからないが、それほど広くないライヴハウスでは、彼はマイクを介さずにMCをすることがあった。もう10年も前のことなので、流石に何を語ったかまでは覚えていないが、上記の歌詞に共通するような、前向きな生き方を示唆したものだった記憶がある。締めの台詞が「~していこう!」だったか、「忘れるなよ?」だったかも忘れたが、ロックバンドのMCでよくある、オーディエンスに対する問い掛けである。通常のライヴなら「イェーイ!」がそれに対する観客のレスポンスの相場であろう。しかし、TAKUMAが言い放ったあとで観客から返ってきた台詞は「はいっ!」だった。しかも、そこに居た500、600人が同時に声を合わせた「はいっ!」である。何のてらいもなく、そんなに大勢の人間が同時に「はいっ!」と言うのを聞いたのは多分、中学校以来、数十年振りだったと思うが、それも10-FEETらしいと妙に納得し、清々しい気持ちになったものだ。そんなバンドが今年20周年を迎えたことを実に喜ばしく思う。

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