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Suchmosは「自分たちの時代を生きるための自分たちのサウンドを鳴らし始めた」 『THE KIDS』(Album Review)

Suchmosは「自分たちの時代を生きるための自分たちのサウンドを鳴らし始めた」 『THE KIDS』(Album Review)

 神奈川県出身の6人組バンド・Suchmosのセカンド・フル・アルバムとなる『THE KIDS』が、この1月25日にリリースされた。都会的でスタイリッシュなアシッド・ジャズ風アンサンブルを下地に、ソウルフルな歌声や滑らかなグルーヴでリスナーを魅了してきたグループだが、新作『THE KIDS』はサウンド面の新たな表情と、若者目線の鋭いアティテュードが見事な折り合いを見せた傑作だ。

 『THE KIDS』は、2015年のデビュー・アルバム『THE BAY』以来、1年半ぶりとなるアルバムだ。Suchmosは2016年内に『LOVE&VICE』、『MINT CONDITION』と2作のEPもリリースしており、その収録曲も新作『THE KIDS』に含まれている。デビュー時からエアプレイを中心に注目を集めていたところに、『LOVE&VICE』収録の「STAY TUNE」(タイトルからしてエアプレイ映えする楽曲だ)が絶大な支持を獲得。後にこの曲はホンダ・VEZELのCM曲にも起用され、さらに世の認知度を高めることになる。

 ところが、2017年が明けてMV公開&配信リリースされた新作のリード曲「A.G.I.T.」は、ムードたっぷりな旋律でありながら刺激的なギター・イントロからも明らかなように、Suchmosの新境地を、気怠くも確かな情熱に満ち溢れた歌詞と共に伝えるナンバーになった。滑らかなグルーヴを保ったまま、とりわけギターやキーボードの尖った響きが、アティテュードが、新作『THE KIDS』には注ぎ込まれていたのだ。

 「STAY TUNE」や「MINT」といったEP曲に込められていた、もはや経済的に豊かな社会に生きてはいない若者の息遣いは、ファンキーな新作曲「TOBACCO」の《一生言ってろ/プライドをグラムで売れ/それを買うやつに/死ぬまで従え》という、前時代的な価値観に冷めた視線を突きつける歌へと繋がっているように思える。Suchmosはこの攻撃的なアティテュードに相応しいサウンドを、手探りで掴み取ってみせた。

 ジャミロクワイをリスペクトしていることを公言し、これまでのサウンドにはそのことがはっきりと表れていたSuchmosではあるけれども、時の流れが後戻りすることはない。彼らが身につけたアシッド・ジャズは、膨大な音楽ライブラリから選び取られた素材のひとつにしか過ぎない。それを足がかりに、Suchmosは自分たちの時代を生きるための自分たちのサウンドを鳴らし始めた。『THE KIDS』はその確かな一歩だ。3月からは、新作を携えた全国18公演のツアーが繰り広げられる予定だ。(TEXT:小池宏和)

◎リリース情報
アルバム『THE KIDS』
2017/01/25 RELEASE
<限定盤CD+DVD>
PECF-9023 3,500円(tax out.)
<通常盤CD>
PECF-3174 2,500円(tax out.)

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