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メディアアーティストに聞いた「大学生とソーシャルメディア」

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メディアアーティスト・宮原美佳氏

 mixiにフェイスブック、ツイッター・・・。次から次へと現れるソーシャルメディアは、もはや「流行」ではなく誰もが当然のように利用する「ツール」になってきたように感じる。特に若い世代ほどその傾向は顕著といえるのではないだろうか。「ソー活(=ソーシャルメディアを活用した就職活動)」が一般的になってきた一方で、ツイッターやブログでの「犯罪自慢」もあとを絶たず、よくも悪くもソーシャルメディアとの関わりが深い大学生たちはその筆頭である。そこで今回は、メディアアーティストとして作品を発表しつつ、早稲田大学で非常勤講師も勤める宮原美佳氏に「大学生とソーシャルメディア」について話を伺った。

■ソーシャルメディアに「教育」は必要?

――まずはざっくりした質問になりますが、大学で講義や演習をするなかで、「大学生とソーシャルメディア」に対してなにを感じますか?

 大学生にとっては当たり前すぎて、ソーシャルメディアがどんな役割を果たしているかに気がつくのは卒業した後なのかなぁと思っています。私たちは、携帯電話がどんな道具で、人とのつながりをどう結んでいるのか考えずに使っていますよね。それとすでに同じだと思います。

――大学生にとっては携帯電話と同じくらい「当たり前」のものになっているということですね。

 ソーシャルメディアを使って一番濃く自由なコミュニケーションを謳歌しているのは大学生です。自由度が高くとても実験的なソーシャルメディアは、いまが一番面白いときです。mixi、ツイッター、フェイスブックなどを、高校生から大学生になるなかで生じる人間関係の変化と、自分自身の変化によりそって使っている学生さんが多いと思ってみています。

――自分の変化に合わせて使い分けるというのもそうですが、メディア側の変化もまた急激なものに思えます。特に最近ツイッターやブログでの「無用な告白」が問題になる原因も、ひとつはそこにある気がするのですが。

 メディアはあくまで道具です。ハサミも使い方を誤れば手を切ってしまいます。ほとんどの場合ハサミには問題がありませんよね。ソーシャルメディアやネットをとりまく諸問題は、同じように使い方を知らないとケガをしてしまうということだと思っています。使用上の注意をよく知ってから使うのは道具を使うときの基本でしょう。

――その「使用上の注意」を知らない学生は多いんでしょうか? 注意を喚起するという意味で、ソーシャルメディアに「教育」は必要だと思いますか?

 どうなんでしょうかね。いつかは学校で教えられることになるかもしれませんね。でもその時には一番大事ななにかをなくしてしまうように思います。間違えながらも自分で開拓できる喜びが感じられなくなってしまうでしょうね。

 この議論を考えるとき”間合いをとる”と”空気を読む”の違いを自分のなかの参考基準にしています。私は杖道という武道をしているんですが、そのなかで間合いを読み、相手と向き合いながら動くことはとても難しくなかなかしっくりできません。相手との真剣勝負の絶妙な感覚のです。空気を読むは一見それに近いのですが、実は空気を読むとは相手との関係性ではなく「自分の先の心地よさ」を一番に考えたものなんじゃないでしょうか。

 ソーシャルメディアも空気を読んで書いているのと、間合いを読んでいるのでは同じように見えてコミュニケーションの質が変わっているんじゃないかと思います。コミュニケーションには失敗はつきものです。私は失敗してもいいので間合いを大事にしたいな。

――なるほど。ほかに大学生といえば、12月1日から本格的な就職活動がはじまりましたが、「ソー活」は学生にどんな影響を与えるでしょうか?

ソーシャルメディアは、言葉にして伝えるまでに長い時間がかかるものを飛び越えて、人との関係性を結びます。企業側にとっても同じことが言えると思います。透明性を一方的に求めることはできないはずです。 いろいろな問題点はまだまだ出てくるとは思いますが、いままでよりも自分に合った企業に出会えることができるんじゃないかな。

■「社会は自分で考え編集が可能なんだ」

学生のプレゼンを聞く宮原さん

 早稲田大学の演習では、「学生に企業のフェイスブックページを作成させる」ことを試みている宮原氏。学生はグループに分かれ、直接企業などと交渉し「公式ページ」を作成する許可を得なければならない。さらに立ち上げたページには、「1000いいね!」がつくことを目標に掲げているという。大学の授業としては規模が大きいように思えるが、この試みにはどのような意図があるのか。

――「企業のフェイスブックページ」を作成し「1000いいね!」を目指すという演習を通して、学生はなにを学ぶのでしょう?

 学生さんに学んでほしいと思っていることは「社会は自分で考え編集が可能なんだ」と気がついて行動を起こす、そのプロセスですね。私が授業でしたいことは、フェイスブックで心のつながるメソッドを作ろうという呼びかけ。「1000いいね!をめざそう」という少し高いハードルは目標として設定しただけです。(ページ作成をさせてもらえる)相手先の選定も、学生にとっては大きなチャレンジになったと思います。私から出した条件は、一生付き合える人間(企業)なのか、心がつながるようなモノや出来事をもっているのか。その2点です。

学生はPCやスマートフォンを持ち込んで授業にのぞむ

――企業と交渉するのも学生ということですが、ページ作成を担当する相手はすでに決まったんでしょうか?

 映画配給会社、エジプト専門の旅行会社、早稲田の学生が経営するカフェなどが決まっています。学生たちの人脈にも驚きましたが、会社のコミュニケーションのひとつであるフェイスブックページを作ろうと、相手を説得できたことにもとても感心しました。このような実験的な授業をすることで、この経験が学生の自信につながっていくことがなにより嬉しいと思っています。それは大学やバイト先だけでなく、自分自身の力で社会とつながっていけるんだという自信だと思います。

――たしかに実験的な授業ですし、きっと企業にとっても実験になるんでしょうね。「ソーシャルメディアを活用した広告戦略」も今後はますます重要になっていくと思いますが、それは消費者である私たちにどんな影響を与えるでしょう?

 いままでも、「なにを消費するか」は「どんな広告をみるか」に大きく左右されていました。今後は「どんな人間関係のなかに自分をおくか」で”良い”という価値がますます変わってくる時代になります。それによって消費するものが変化します。人間関係は選べるものもありますが、生まれ育った環境や学校などは自分の意思だけでは選べません。一見自由なネットの社会が現実とのリンクが濃くなることで今までのデジタルデバイド(=ITを使いこなせるか否かで生まれる格差)とは違う問題をはらんでいます。その問題点を乗り越える方法が出てくるのを期待しています。

――ソーシャルメディアによって、社会がより良い方向に動くことを期待されているんですね。

 そうですね。友達が良いというものを広告として知ることは、社会を動かす大きな力にもなります。その力によって、小さくても良いものを作っている人が、大きな会社に巻き取られることなく丁寧にものづくりをできる時代が到来するのではないかと期待しています。消費だけでなく、人々の生き方や考え方も大きく変わってくるでしょうね。ソーシャルメディアに限らず、これからも様々な人と人とをつなぐメディア、ツールが出現してくると思います。そのときも、それに遊ばれることなく使いこなす。ひとつひとつのコミュニケーションを大事にできる目を持つ、いまメディアを考えるときに一番大事なのはこれだと思っています。

――ありがとうございました。

◇関連サイト
・つながるメディア研究室 (早稲田大学) – Facebook
http://ja-jp.facebook.com/pages/%E3%81%A4%E3%81%AA%E3%81%8C%E3%82%8B%E3%83%A1%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%AE%A4-%E6%97%A9%E7%A8%B2%E7%94%B0%E5%A4%A7%E5%AD%A6/322451427781757
・MIYABARA Mika – 宮原美佳氏ウェブサイト
http://www.miyabaramika.com/

(古川仁美)

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