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認知症治療における抗精神病薬の副作用と観察のポイント

認知症専門ナースケアマネの市村幸美です。前回の記事では、認知症の方への頓服薬使用時のポイントについてお伝えいたしました。今回は前回の記事では書ききれなかった、抗精神病薬の副作用と観察ポイントについてお伝えいたします。

前回記事:認知症の方への適切な頓服薬使用のために知っておきたいこと

筆者が1番怖かった「過鎮静」

筆者が勤務していた認知症治療病棟は、行動・心理症状(BPSD)の治療が中心でしたので、入院してくる方のほとんどが精神症状の強い方でした。治療の順番として、まず医師の処方による抗精神病薬の投与から始まります。そのなかで筆者が看護師として1番怖かったのが、「過鎮静」と呼ばれるものです。

過鎮静とは、薬が効きすぎて必要以上に鎮静される状態のことです。この状態になってしまうと、常に眠気が強く、日常生活に影響が出ます。なぜ過鎮静が1番怖かったかというと、合併症を引き起こすことが多いからです。以下、具体例になります。
眠気が強く食事摂取ができなくなる
臥床時間が長くなることにより褥瘡が発生する
嚥下障害が出現し誤嚥性肺炎になる

認知症の治療のために入院した方が、過鎮静から誤嚥性肺炎を発症し、そのまま亡くなってしまったこともありました。

なぜ過鎮静になってしまうのか?

過鎮静になるまでなぜ放っておくのか?と思う方もいるかもしれません。筆者自身の経験や、他の専門職の方と話したことで、いくつか共通すると感じたことがあったので、その背景をまとめます。

副作用が一気に出現する

入院して少し経ったときに、急に眠気が強く起きられなくなる、食事が摂れないという状況になることがあります。現場では「薬がたまった」というような表現をすることもあります。これは高齢者になると腎機能が低下によって排泄機能が低下することが原因です。

副作用を症状が安定したと勘違いしている

抗精神病薬の副作用によって「元気がなくなっている」状況を、介護者が「精神症状が落ち着いた」と介護者が勘違いしてしまっている場合も少なくありません。副作用の観察ポイントについては後述を参考にし、見逃さないように下さい。

医者へ症状を伝えることができない

薬の処方や調整をするのは医師です。医師は看護・介護職と比較すると認知症の方と関わる時間が少ないのが一般的です。介護者がいかに医師に状態を適切に報告できるかがポイントなのですが、ここが苦手な介護者も多いようです。

薬を減らすことによって症状が戻ることが怖い

これは介護者だけでなく処方する医師も不安を感じている場合が多いと思います。筆者が現場にいたときはよく減薬の相談をしていたのですが、「せっかく落ち着いたのに不安だなあ」と言われることがよくありました。処方の判断は医師ですが、医療者(介護者)側の安心を優先とした判断になっていないか確認していく必要があります。

安易な頓服薬の投与

ここは前回の記事にもつながりますが、認知症の方が少しソワソワするだけで薬以外の方法を試みずに頓服薬に頼ってばかりいると当然投与量が増えていきますので副作用の出現も増えていきます。

副作用の観察ポイント

次のような症状が出てきたときは薬が効きすぎている可能性があるので、出来るだけはやく医師へ相談しましょう
歩行が不安定、転倒が多い
食事に時間がかかる、むせる、飲み込みが悪い
反応が鈍い
昼間ウトウトする
流涎がある(よだれが流れる)
発語が少なくなった
気分変動がある

さいごに

2回にわたり薬物療法に関することをお伝えしました。記事の中でも何度も触れていますが、処方は医師でなければできません。しかし、医師は常に認知症の方の近くにいて、薬の効果や副作用を観察することはできません。

適切な薬物療法は認知症の治療には欠かせないものであり、そこには介護者の薬に関する知識や観察が絶対にはずせないことを覚えておいて下さい。

この記事を書いた人

市村幸美

准看護師として数年間勤務した後、進学コースへ進み看護師免許を取得。認知症治療病棟への配属をきっかけに認知症ケアに興味をもち認知症ケア専門士、認知症看護認定看護師を取得する。「認知症をもつ人が受ける不利益をなくする」ことを使命と考え、現在は現場での実践や教育などさまざまなフィールドで介護・福祉に携わっている。またブログ『認知症専門のナースケアマネ市村幸美の【美Happy介護】』やSNSを通して介護職だけでなく一般の人に向けても認知症や介護を前向きに受け止めてもらえることを目指している。

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