【鉄道メシ】世界でいちばん鉄道に近いカフェ?「N3331」【秋葉原】
三度のメシより鉄道大好き! ライターの望月崇史(もちづき・たかふみ)です。
だからこそ、大好きな「鉄道」を見ながら「メシ」を一緒に味わえば、もっと美味しいハズ……。そんな飽くなき「美食」追求の思いから、今回スタートする「ライター望月崇史の鉄分補給メシ」。列車を見たり、レールの音を聞いて、“鉄分”を補給しながら、メシを楽しめるお店を訪ねます。
第1回目は、鉄道に世界一近いお店とのウワサの「N3331」を訪ねました。
「マーチエキュート神田万世橋」にある「N3331」
東京の真ん中を貫く中央線。正確には中央本線という、東京~名古屋間を結ぶ路線です。
このうち、東京~高尾間を中心に走るオレンジ色の帯を巻いた電車は、中央線快速電車。国鉄時代から常に最新車両が投入され、沿線人気も高い東京を代表する花形通勤路線です。
▲中央線快速、E233系
現在、快速電車にはE233系が充当され、数年後にはグリーン車の連結も予定されています。
▲中央線快速、E233系
中央線の下り快速電車は、始発駅・東京を出ると、神田、御茶ノ水、四ツ谷、新宿、中野の順に停まり、平日は中野から各駅停車、週末は荻窪に停まって吉祥寺から各駅に停まります。
朝のピーク時にはおよそ2分間隔で運行、日中は中野の先、三鷹、国分寺、立川の順に停まる「中央特快」「青梅特快」も毎時5~6本運行されるなど、様々な種別が走る中央線。
この中央線の中で、近年大きく注目を浴びているスポットがあるんです。
▲万世橋駅跡、2006年筆者撮影
昭和18(1943)年まで、神田~御茶ノ水間にあったのが「万世橋(まんせいばし)駅」。
昔から中央線のこの区間を乗ると、上下線の間にホームの跡を見ることが出来ました。
駅の詳しい歴史については「旧万世橋駅」ホームページにお願いするとして、私の世代にとってこの場所はなんといっても「交通博物館」!
私自身「交通博物館」の展示では、中央線でかつて走っていたオレンジ色の101系電車の「ドアと開閉装置」のカットモデルが大好きでした。
お客さんが少ない時は、ほぼ自由にドアの開け閉めし放題という何ともぜいたくな展示。
加えて実際の新幹線で使われていたという”パタパタ”こと、フラップ式の列車案内板も自由に操作できて、本当に楽しいひと時を過ごした記憶が今でもよみがえります。
そんな「交通博物館」が移転すると聞いた時は大きなショックを受けたものですが、
最後に「交通博物館」はとても粋なことをやってくれました。「交通博物館」はかつての万世橋駅舎を使って作られていました。
その博物館とつながっていた赤レンガの高架橋の中にホームに登る階段など、およそ70年もの間にわたって封印されたまま残されていたものを特別公開してくれたんです。
昭和戦前までの空気がそのまま残されたような空間に、私は大きな感動を覚えました。
でも、この感動は一時の夢では終わりませんでした。
博物館移転から7年、平成25(2013)年に、旧万世橋駅はこの遺構を活かして「マーチエキュート神田万世橋」という商業施設に再生されたのです。
明治~大正~昭和とこの地が輝いていた時代の空気そのままに、見事今風にリノベーションされて、誰もがいつでも集える場所に生まれ変わりました。
あの時の感動が、夢から現実のものに……。
そんな旧万世橋駅のかつてのホームに、「N3331」はあるんです。
▲旧万世橋駅に作られた商業施設「マーチエキュート神田万世橋」。「N3331」はこの中にある
鉄分補給するのに最適な席は……
「N3331」の入口は、その名も「1912階段」。
明治45(1912)年4月の「万世橋駅」開業の時に作られた階段です。
階段は、厚い花こう岩や稲田石を削りだした重厚なもの。壁のタイルも東京駅のレンガなどに見られる「覆輪目地(ふくりんめじ)」という、高級な施工がされているのも特徴です。
それもそのはず、初代万世橋駅舎は東京駅の赤レンガ駅舎と同じ辰野金吾氏の設計なんですね。
歴史ある階段を踏みしめながら上ってくると、いよいよ「N3331」の入口が!
私自身、この場所を訪れるのは実に10年ぶり。交通博物館閉館を前に一般公開された際、薄暗い中を上りました。あの場所がココまでリノベーションされて、お茶が出来るような場所になるとは……。
「N3331」は先に注文・会計のシステムで、空いている時間帯は「自由席」。ならば、この場所しかないでしょう!
お店の最も奥側、天井がオープンエアのテラス席!
旧万世橋駅のホームは、上下線の間に作られた「島式ホーム」だったこともあって、もう目の前が中央線の線路なのです。
しかもその奥には、御茶ノ水駅で分岐したばかりの総武線各駅停車の鉄橋も……。
これほど鉄分補給向きの席、そうそうないですよね。
平日夕方は鉄分補給し放題
さあ、注文したメニューが早いか電車のほうが早いか?
おーっ! 電車のほうが早かった!!
▲中央線E233系、中央特快東京行
しかも中央特快の東京行が御茶ノ水を出てまだ加速する前なので、ゆっくりゆっくり目の前を通過していきます。電車のお客さんの顔もしっかり分かるくらい近い。
でも今回はわざと明るい昼間ではなく、15時台から「N3331」にお邪魔しました。実はこの時間こそ「鉄分補給メシ」的にはゴールデンタイムなのです!
▲E257系特急「かいじ」甲府行
なんと! 普段はオレンジ帯のE233系ばかり走る東京~新宿間の中央線に、特急「あずさ・かいじ」用のE257系電車がやってくるのです。
【東京始発・特急「あずさ・かいじ」号】
15:15発、特急「かいじ113号」甲府行
16:15発、特急「かいじ115号」甲府行
16:45発、特急「あずさ25号」松本行
21:45発、特急「かいじ121号」甲府行
22:45発、特急「かいじ123号」甲府行
(2016年12月現在)
東京始発の「あずさ・かいじ」は、1日わずか5本。このうちの2本が16時台に発車していきます。
E257系電車は、発車直前に新宿から「回送」として東京駅にやって来てから下るので、16時台は全部で「4回」も、側面に“武田菱”が描かれた特急用車両を拝めるという訳。
武田の騎馬隊が、ドーッ! と上って来て、ワーッ! とはけていく感じの存在感。
しかも平日の16時台は比較的ゆったりと座れることが多いそうなので、鉄分補給には最適なのです。
運行開始50周年を迎えたばかりの特急「あずさ」。
今すぐにも、“春まだ浅い信濃路”へ旅立ちたくなってしまいそう……。
とはいえ、春もまだ来てないし……というか、注文したメニューもまだ来てなかった!
お店自慢のカレー&ビールを補給
お待たせしました!
▲カレー&ひと口生ビールセット(1,080円)
カフェタイムでも食べられるメシは、「N3331」オリジナルのカレー。この日は、お豆とひき肉の和酒カレー(単品 920円)に、少量の地ビールが付いた「ひと口生ビールセット」を注文しました。
スパイシーな味わいの中に、幾分のまろやかさを感じるのは、隠し味で使われている日本酒のおかげか。
実は「N3331」は、“CAFÉ&和酒”がウリのカフェバー。「スグに食べて!」と言わんばかりのカレーの匂いをグッとこらえ、やはりこの1枚を撮りたいもの。
▲カレーとE233系
やって来ました、この瞬間。「N3331」のカレーの美味しさを最も活かすスパイス、E233系!E233系があれば、カレー3杯はイケます。
しかも東京行はカフェの目の前でちょうど加速してくれるので、いい具合にモーターがうなって音の隠し味を入れてくれるんですね。カレーと酒と電車のおかげで、寒空の下でも、体がこんなにアツくなってくるとは思いませんでした。
ちなみに18時以降のバータイムになると食べられるのが「中央線サラダ」(920円)。
スモークサーモン、人参ラペなど中央線カラーをイメージしたサラダとなっています。また姉妹品には、山手線サラダ(720円)や、総武線サラダ(820円)もあります。
公式アプリでダイヤをチェック
実は「N3331」からは中央・総武線各駅停車の黄色い帯の電車はもちろん、よ~く目を凝らすと山手線のうぐいす色の電車も見える場所があります。
より効率的な“鉄分補給”のためにも、ぜひチェックしていただきたいものです。
▲JR東日本アプリを見ながらダイヤ&運行状況をチェック
合わせて活用したいのがスマホの「JR東日本アプリ」。そう、公式アプリです。
この「列車に乗る」という項目に、「列車走行位置(首都圏)」というものがあります。「中央線快速電車」を立ち上げると、いつ目の前に電車がやって来るか一目瞭然。
しかも、先日バージョンアップされ、特急「あずさ・かいじ」などの走行位置も分かるように……。
スマホで列車位置を確認しながら、安心してカレーを食べられるようになりました。
▲E233系にカンパイ!
週末には開店時から行列が出来ることも多いという、大人気の「N3331」。
1912年から1943年まで、この場所に「万世橋駅」という駅のホームがあったからこそ実現出来た「世界一鉄道に近い(かもしれない)カフェ」。
明治~大正~昭和のタイムトリップを楽しむうちに、いつの間にか鉄道でトリップしたくなっている自分がいることでしょう。
さあ仕事帰り、あるいは仕事をちょこっとサボりながら、東京の真ん中で「鉄分補給」はいかがですか?
お店情報
N3331
住所:東京都千代田区神田須田町1-25-4
電話番号:03-5295-2788
営業時間:月曜日~土曜日11:00-23:00(LO 22:30)、日曜日・祝日11:00-21:00(LO 20:30)
定休日:不定休
ウェブサイト:http://n3331.com/
※この記事は2016年12月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
書いた人:望月崇史(もちづき たかふみ)
1975年静岡県生まれ。放送作家。 ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは足かけ15年、およそ4500個! 放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。 ラジオの鉄道特番出演、新聞・雑誌の駅弁特集でも紹介。 現在、ニッポン放送のウェブサイトで「ライター望月の駅弁膝栗毛」を連載中。 連載:ライター望月の駅弁膝栗毛|ニッポン放送「しゃベル」ラジオ ブログ:駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分
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