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ほしい? いらない? 相手の気持ちが読める手袋 #近未来に恋をする

あれ、こんな必死になって、何をしているんだろう。普段は、恋愛なんかのために、こんなにがんばりはしないのに。

呆れたその瞬間、手に確かな感触があった。

「まだ、7階だよ」

彼の手がわたしを、手袋越しに掴んでいた。

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身体に電気が走り、映像にも言語にも音声にもならないかたちで、彼の感情が脳に届く。

わたしがこの部署に配属された日から、わたしのことが気になっていたこと。怒られて自販機の前で落ち込むわたしを見るたび、声をかけようか迷っていたこと。彼氏ができたと知って、悲しんだこと。その後別れたと知って、チャンスだと思ったこと。

でもどのシーンでも、想いを伝えようと思うものの、行動には移せないほどに、わたしに嫌われることを、怖がっていたこと。

彼のなかのわたしに対する想いが、手袋を通して、まさに手に取るように伝わってきた。それは、わたしの頬を紅潮させるには十分過ぎるほどの、情報量と密度だった。

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エレベーターは、8階に着き、扉が開く。

彼はそっと手を離して、タイムカードを探す。わたしは手袋を外しながら、彼の背中をじっと眺めた。

「信じて」。

またあのネコの言葉が、脳裏をよぎる。

「信じたよ」私はそう呟くと、ふたつ上の、奥手すぎる男に声をかけた。

―――想いを伝えることって、とても難しいし、緊張するし、失敗したときのことばかり考えてしまう。けど、想いを伝えなければ始まらないものが、仕事だったり、恋だったり、人生だったりするわけで。

厄介なんだけど、もしも未来に「想いを伝えること」を代替してくれる機械ができたら、なんかそれって、きっと人生がつまらなくなるよなあと思う。

だから、想いを伝えるドキドキを忘れずに済むように、こんな中途半端なテクノロジーを考えてみました。

とはいえ、考えたのは僕なんですけど、もしも僕が、好きな人からこんなもので触れられてしまったら、Twitterにも書けないような、とんでもない妄想ばかり伝わってしまう予感がしたので、やっぱり未来は、ある程度不便なままでもいいのかも…?

写真/田所瑞穂(2、5枚目) Shutterstock 文/カツセマサヒコ

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