噂は本当だった……! 隠れ家すぎるラーメン店「(名前、看板はございません)」【京都】
隠れ家&穴場好きのみなさま、こんにちは。メシ通レポーターのナガオヨウコです。
ありとあらゆる情報が交錯する現在、「隠れ家や穴場を知りたい」という気持ちは、誰にでもあると思います。それでいて「ちゃんと美味しいところ」が望ましい。
そんなあなたに、なんとか探していただきたいラーメン店があります。
その名は……
……。はい、店名がないのです。
便宜上「(名前、看板はございません)」という店名が付けられておりますが、あくまで( )付きです。「店名は、ない」と思っていただいて結構かと。
最初に行ったときは完全にミッシングになることでしょう。ナビ通り行けば、木屋町らへんにたどり着くんですけどね!
店名も看板もない
京都市営地下鉄東西線「京都市役所前駅」から徒歩3分。木屋町通りと姉小路通りの角です。
木屋町にある姉小路橋を西に渡ります。
はいっ、到着しました。でも、どこにもラーメン店らしきたたずまいのお店は見あたりませんね。
正解はこちら〜。えっ、どこ? ってまだ思うでしょ?
ここですよ、ここ! 看板ものぼりものれんもメニュー表もありません。
隠れ家すぎやろ!
ビルの階段を降りて、お店の入り口に到着です。ランプが灯っていれば開店中の合図です。
わたくし最初に訪れた時、「場所はここで合っているのか」っておそるおそる扉を開けたもんです。誰かに教えてもらえなければ、まず分からない場所です。
ビルを見ても、看板はナシ。お店はB1Fですが、テナント名が無表記です。
壁メニューナシ、卓上にも何もナシ、ないないづくしのお店
思い切って扉を開けたら、コンクリの道と庭。ここ、地下なんですけど……。
もう一度言いますが、初めて訪れた時はやっぱりここがラーメン店とは思えませんでした。奥に行って「あのー、ここってラーメン店でしたっけ……」って聞きましたもん。
まず思うのは「オシャレ過ぎるだろ!」って感想かと。
ビストロやカフェならこういうオシャレなお店がありそうですが、よもやラーメン店とは思えません。
しかし、オシャレなラーメン店を狙ったわけではないそうです。
「機能性を追求しまくったら、オシャレになっただけ」
ですってよ!
「できるだけ食材にお金をかけたい。ウチは、ヨソのラーメン店よりも食材費が倍近くかかっています。
だから、スタッフの数を最小限にして人件費を抑えたり、回転率を上げるように工夫しています。徹底的に無駄を省いた結果が、このスタイルなんです」とのこと。うひょー、その姿勢がまずカッコええんですけど。
では、ひとつひとつ解説していきますね!
教えてくれたのは、店長の米田さん。20代半ば、ラーメン道を突き進むフレッシュなお兄さんです。
①カウンター上に、調味料や箸がない
理由:スタッフの動きを省くため。
カウンターに何も置いていないため、スタッフはカウンター内からラーメンの提供&片付けができます。
②調味料・箸・紙ナフキンは、引き出しの中
理由:これも、スタッフの動きを省くため。
箸は、お客さんが自分で出します。調味料は、お客さんが自分で出して使って片付けます。人は、引き出しからモノを出して使ったら、おのずとまた片付けたくなるという心理があるのだそう。
デザインが人を動かす、というわけなんですね。
③壁にメニュー張り紙がない
理由:ラーメンの注文は券売機で済ませられるから。
メニュー表を店内に貼っても追加オーダーとはならないという理由で、券売機一括オーダーにしています。
④お冷やはセルフ
理由:これもまた、スタッフの動きを省くために設置。カウンター上には、水を入れたポットはありません。ということで、お客さんは自分で水を入れます。
給水器は日本のデザイン家電ブランド・amadana(アマダナ)のもの。レトロなカラーと木の脚がおしゃれですね。
ミニマリストか! ってつぶやきそうな程、徹底した「ないないづくし」。そしていちいちオシャレ……。
椅子はウォールナットの特注。ほれぼれするほど美しい。
カウンター&椅子が低いと、人は座ったときに隣との距離が遠く感じるそうです。
バーで、隣の人との距離が近く感じられるのはカウンターとスツールが高いから、ってのと反対なんですね。
できる限り席の数を増やしているそうですが、ゆったりと感じられるのは計算のうち。
カウンター上の照明が一人につき1個ずつあるのも、目の前のラーメンを美味しそうに見せるための仕掛け。
では、肝心のラーメンレポへ突入よ!
ラーメンはタッチパネル式の券売機で購入します。
メニューは<らーめん><つけめん><カレーつけめん>の3種。
らーめんとつけめんは、鶏ガラを煮詰めた「濃厚スープ」、濃厚と淡麗をブレンドした「重層スープ」、鶏モモ肉のみから抽出したあっさり系の「淡麗スープ」の3種から選びます。
らーめんは並が800円。味玉は+100円。
トッピングはチャーシュー(黒豚)200円、牛すじ煮 200円などがあります。
つけ麺は1.5玉が800円、2玉が850円、2.5玉が900円。
カレーつけ麺はそれぞれ〆ご飯付きで、1.5玉 900円、2玉 900円、2.5玉 1,000円です。
自家製カレールーに鶏ガラ濃厚スープ、さらに自家製のヨーグルトを合わせてるんですよ!
わたくし、つけ麺もカレーつけ麺も両方食べたことがあるので(どちらもむちゃウマ)、今回は、淡麗らーめんをオーダーいたしました。
▲淡麗らーめん(800円)+味玉(100円)
らーめんもつけ麺も「ごぼう麺」という自家製麺。有機ゴボウを液状化させて練り込んでいます。
奇をてらったわけではなく、「程よくもっちりしているけれど、つるんと食べられる」という麺を求めた結果、試行錯誤の末出来上がったのが、このごぼう麺なのだとか。
中太ストレートのごぼう麺。食べてみると、確かにもっちりしているんだけど、喉ごしはつるん。ごぼうの香りはほとんどしません。
<淡麗>のスープは、京赤地鶏モモ肉オンリーのあっさりスープに、魚介系&しいたけ&醤油のかえしを合わせています。
さらりとしているのに、ちょっとした酸味が感じられるのはこのかえしのおかげ。無化調なので、ずいずい飲み干しても喉が渇くことはありません。
ただただ、しみじみウマイ……。
デフォのトッピングは、溶岩でじっくり焼き上げた黒豚チャーシュー、プチトマト、白ネギ。
溶岩を使って網焼きしているのは、遠赤外線効果を狙っているため。
包み込むように火が通るので、素材のうま味がぎゅうううっと凝縮されるのです。
味付けした黒豚を6時間かけて低温調理しているため、むちゃくちゃジューシー。さらに溶岩で網焼きしていて、風味ヤバ!
ビール片手に、この黒豚チャーシューだけ食べていたい……。
味玉はしっかり醤油が染みていました。あっさり系のスープに、程よいアクセントを加えてくれます。
お店のどこにも「ごぼう麺!」「京赤地鶏を使用!」「魚介系のかえしを合わせています!」「無化調!」「具材は溶岩で焼いている!」って書いていません。
京都の飲食店って、こだわりをわざわざ掲示しないところが多いんですよ。先斗町のカレー店も、桂川のカレー店もそうでした。
京都の料亭なんかでは「美味しいもんを、誠実に出すのは当然のこと。だから、声高にこだわりを言わない」と考えています。この京都マインドは、カレー店やラーメン店にも浸透しているのです。
さて、半分ほど食べ進めたのでスパイスを加えてみることにします。
引き出しを開けてみると、ガラムマサラ、山椒、一味、胡椒の4種が並んでいます。
まずは山椒を。シャーペンの芯を出すように、上部分をカチカチ押すと山椒が出てきます。
山椒が、鶏醤油に合わないはずはない。和スパイスのチカラは偉大です。
次は、ガラムマサラに挑戦です。どんな味になるんだろう……。
いきなりインド。味、変わりすぎ。それでも個性が強くない。
ガラムマサラ、いいよいいよ!
あまり入れすぎず、アクセント的にぱらり……とまぶすのがおすすめです。
ちなみにコップは、包丁で超有名な京都「有次」のアルミ製。
キンと冷えた水がウマいのは、凜としたたたずまいのコップのおかげかも。
「分かりづらい立地」「オシャレ過ぎてミニマリスト」「ハンパないこだわり」。ラーメン店の概念が、がらりと変わったことと思います。
こちらのお店は、全粒粉入り麺を開発したことで全国のラーメン好きに知られる「高倉二条」、京町家&モツ使用「和麺良麺 すがり」の系列店。
「日本初のチャレンジしか、したくない」「世にない価値を作り出したい」「ヨソの真似はしない、真似される店でありたい」という確固たる信念で、ラーメン業界に影響を与えまくっているのです。
ですので、お店の造りはオシャレ狙いではないですし、ごぼう麺のラーメンも奇をてらって開発されたわけではありません。
芯がしっかりしまくりなんだけど、ごり押ししない京都のラーメン店。カッコいいじゃありませんか!
そもそもお店のターゲットは本気でこんな感じだそうです。(ナガオ脚色入れました)
付き合う前の男女の、初めての昼デート。男性は、一度ここに来たことがある。女性は、あまり張り切っておしゃれするのも恥ずかしいし、でもデートだし……と、トップスはスウェットのパーカ。デニムのミニスカートに黒のタイツ、低めヒールのブーツで、少しだけ女の子らしい格好を意識した。
2人は三条京阪の駅で待ち合わせをして、しばし歩く。
女性は「どんなお店に連れて行ってくれるんだろう」と期待が高まる。「何食べるの?」と聞くが、男性は「最近見つけた、お気に入りのお店やねん。着いてからのお楽しみってことで」と、エスコート。
お店らしき場所に着いたものの、ここがカフェか、イタリアンか何のお店か分からない。
お店に入り、券売機を前にして、ここがラーメン店であることが分かる彼女。驚くと同時に、肩の力が抜ける。(緊張しなくていいんだ……)
「引き出しがあるんやね」「コップが素敵」と、彼女は驚きの連続。「山椒をかけたいけど、どうやって出すんだろう」……山椒入りのスティックを持つ彼女の手に、男性が手を掛ける。手と手が触れそうになり、でも触れないでいる。
初めてのデートで、何から話していいか分からない。でもここはラーメン店だから、無言でもいい。2人は、ラーメンに集中してスープを飲み干す。
「美味しかった! こんな素敵なお店が京都にあったなんて。今度はどれを食べようかな」と、彼女。お店を出て階段を上がると、目の前は……お泊まり施設。
思わずドキッとするが、まだ彼からは告白の言葉さえもらっていない。男性「ちょっと歩こうか……」。河原町方面に買い物に行くのか、東山方面のお寺に散策に行くのか、それは我々には分からない—。
ということで、デート目的の男女にもおすすめです。
ですが、デート目的ならば、まずは下見に訪れるのがおすすめです。女性を連れて行くのに、自分が道に迷っちゃうのはカッコ悪すぎますので。
なお、土日の昼と土曜夜は割と混雑します。が、回転が速いので、行列にひるまずに並んでOK。平日の昼は比較的すいています。
お店情報
(名前も看板もございません)
住所:京都府京都市中京区恵美須町534-31 CEO木屋町ビルB1F
電話番号:非設置
営業時間:11:30〜15:00、18:00〜22:00、土曜日・日曜日・祝日は〜21:00
定休日:無休
ウェブサイト:http://www.takakura-nijo.jp/
※金額はすべて消費税込みです。
※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。
書いた人:ナガオヨウコ
ライター歴22年、京都在住のフリーライター。食、手芸、子育て、京都関連の雑誌や書籍、webに執筆中。10年間続けている自然農業の畑では、20~30種の野菜やハーブ、花を栽培。 ブログ:しましま畑でつかまえて
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