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シャイハックの心得を説く:『消極性デザイン宣言』出版記念イベントレポート

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消極性を再定義する、「消極性研究会」についておさらい

「なぜ、自分のペースでコミュニケーションを取ろうとするとKYと言われてしまうんだろう」「なぜ、この社会はやる気が無尽蔵かつ定常的に得られると無邪気に仮定しているのだろうか?」

津田塾大学 栗原 一貴氏

当たり前とされているこうしたことに疑問を感じ、情報科学の研究者たちが立ち上げたのが「消極性研究会」だ。

メンバーは2014年のイグ・ノーベル賞受賞者、津田塾大学の栗原一貴氏、神戸大学の西田健志氏、産業技術総合研究所の濱崎雅弘氏、Unity Technologies Japan/慶應義塾大学メディアデザイン研究科付属メディアデザイン研究所 リサーチャーの簗瀬洋平氏、『融けるデザイン』の明治大学・渡邊恵太氏。

消極性をコミュニケーションに対する苦手意識という意味のシャイと、日常におけるやる気のなさや「ためらい」ととらえ、消極性は改善すべきスキルではなく、食べ物の好き嫌いと同じような「嗜好」、ある対象に関する個人の1つの属性であるとする。

つまり、誰でも持っていて、現れたり消えたりするものじゃないのか、というようにとらえ直し、そうであれば、消極性を軸にしたユニバーサルデザインの考え方に基づいたシステム設計が必要ではないか。

この10月に刊行された『消極性デザイン宣言』(BNN新社)は、彼らの活動や考え方をまとめたものだ。栗原氏による見どころからいくつか紹介しておこう。

「SHYHACK」(シャイハック)のススメ

有名な「隗より始めよ」という故事があるが、これを用いて「シャイな感性によって、⾔葉ではなく環境をデザインすることで世の中をよくしようとを提言した郭隗に対し、昭王という優れたリーダーが理解を示した。

その結果、多様で優れた⼈たちが共感し、集った」と解く栗原氏は、本の中で述べていることと基本的に同じとする。ますます多様化する現代で、「消極性」には、⼈々が活躍し⼈類を進歩させるしくみづくりのヒントがある。

情報科学分野の5⼈の研究者が持論を展開、具体的デザイン原理に凝縮

この本では、言葉で伝えるのではなく、デザインで環境を変える、問題解決を図ること(シャイハック)を一貫して提案している。さらには、それらを具体的なデザイン原理に落とし込んでいる。

▲神戸大学 西田 健志氏 ▲産業技術総合研究所 濱崎 雅弘氏

ざっと概要を紹介すると、第1章から第3章まではコミュニケーションについて扱っている。

まず、第1章で栗原氏が基本的なコミュニケーション(1対1、もしくは1対少⼈数)において、たとえば「やめて」と相手に⾔えないときをどう対処すればいいか、栗原氏が開発したデバイスをあげながら具体的に解説。

第2章では、西田氏が複数人のコミュニケーションにおける消極性を活かすデザインの考え方について。第3章では共同作業、濱崎氏が消極的な人でもグループの中で成果が上げられること、その要因や背景について解説している。

▲Unity Technologies Japan/慶應義塾大学メディアデザイン研究科付属メディアデザイン研究所 リサーチャーの簗瀬洋平氏 ▲明治大学 渡邊 慶太氏

第4章、5章ではコミュニケーションからモチベーションにスイッチし、「やる気にさせること」をとことん追求するゲームデザインを活用し、いかに日々の生活を豊かにデザインできるかという話を簗瀬氏が、そして、やる気がなくてもうまくいくような道具やシステム、仕組みをどう作るかという考え方を渡邊氏が解説。

そのほか、⼩野ほりでい氏のイラスト、章末ごとの「シャイ⼦とレイ⼦」のSHYHACKトーク、巻末の座談会など、読み応えのある1冊になっているので、ぜひ書籍を手に取っていただきたい。ちなみに、このときの座談会のフルバージョンはこちら

とここまでが前段として、以降からパネルディスカッションの様子を紹介しよう。モデレーターは簗瀬氏。

消極的な私の出会いはどこにある?

簗瀬:よくパネルディスカッションというと、やる側のスキルが問われるところで、けっこう散漫と話してしまいがちなんですが、我々はシャイなのであまりスキルを問われたくないということで、質問を事前に募集しました。またこの場でも、挙手して質問を受け付けるというのはこのイベントにはふさわしくないので、質問をそこに書きこんでいただければ。もちろん、積極的に手を上げて質問するのもありです。

5人ともそれぞれシャイスタイルが違うので、いろいろな解答が返ってくるのではないかと思います。ではまず、こちら。「消極的な私はどのように異性と出会えばよいのでしょう?」けっこう既婚者の人が多いので、渡邊さんどうでしょ?

渡邊:それ、僕も知りたいですよ(笑)。みなさん、どうやって結婚されたんですか?

▲まずテーマは「モテ」

栗原:消極的要素を持っている私ですけど、こと研究に関してだけは熱く語るんですね。それが理解されるとは思っていないです。私の妻も、私の研究には一切興味はございません。ただ、唯一私が熱を持って語ることができる分野が私にとっては研究です。後輩の研究者によく言っているのは、理解されなくてもいいから、自分が好きと思ってやっている研究を熱く語れるようになればモテる……かもねって。少なくとも自分が何らかの分野で輝いている要素を見せるというのは、私が培った数少ない、モテに対するシャイハックです。でも、そういう語る場を作ることが難しいんですよね。結局私は研究絡みでお付き合いのあった、とある教育現場で世話焼きの上手な年長の女性に紹介していただいたということになります。

簗瀬:昭和によくあった世話焼きの方がお見合いをセッティングするという感じ。

栗原:まあ、そうなんですが。一番否定したかったオラオラ感ですよね。

西田:まず私が思うのは、ここでいう積極的・消極的というのは恋愛に関してだと思うんですが、積極的に出会った恋愛よりも消極的に出会った(消極的に出会うのは難しいですが)恋愛のほうがきっといい恋愛だということ。ガチャを100回ひいて全部外れるよりは、ガチャを1回ひいて当たりを出そうということですね。

そのまま、消極的なままうまくいく日を待ち続けるというのが一番いい結果が出ると私は思います。研究とか仕事をがんばって、本業をがんばればモテると信じて、がんばり続ければ一番いい。本業でがんばったことを認めてくれる相手と出会うという一番最高の出会い方ができる。なので、本業をがんばってください。

栗原:目先のモテに騙されるなと。

西田:本業をがんばって結果が出たところで来る人は、もしかしたら、そういうのにつられてきている人かもしれないので、タイミングも重要ですが、がんばっている姿を見てくれる人くらいがいいんじゃないですかね。

濱崎:異性として考えるとなかなか難しいですが、仕事仲間みたいなところから始めるとよいのでは。ちなみに私の場合も栗原先生に近く、年長者の第三者がかかわったという感じです。

簗瀬:私はたまたま友人の親が友人を30歳になるまでに結婚させたくて、その中でたまたま選ばれてしまったので結婚しましたという。結果的には非常によかったので、消極的にいい出会いを待つのがいいのではないでしょうか? 

恋愛に積極的なモデルというのが極端に積極的なものしか知られていなくて、おそらく世間には、すごい積極的と何もしない消極的の間に中間的にもっとグレーな事例がいっぱいあると。いま、ここで聞いただけでもぼんやりした感じで結婚している人が多いので、ぼんやりしていても結婚できるのではないかという仮説がいま成り立っている気がします。

渋谷のハロウィンはシャイハックできるのか?

簗瀬:「渋谷のハロウィンをシャイハックしてください」

西田:これ、私が出したテーマなんですが、要するに「消極的な人」がハロウィンの仮装をするというのは2段階変身みたいなものなんですね。日常がすでに1段階変身、普通の人ですという顔をしているので。私はもう消極的じゃない人の仮装をしていますという。

我々はこういう本を書いて、消極的な人ですという真の姿をあらわにして生きているわけですが、そういう人に2段階変身を求めるというのは非常に酷なことだなと思うわけです。会場に来ている人にいい知恵を、渋谷で生きている人はあのハロウィンをどうやって乗り切ったんだろうなって、逆に聞きたいなって思ったんです。

▲話題は年々大きくなるハロウィンイベントへ

簗瀬:実際に、ハロウィンの仮装をしたことがある方?

栗原:不肖私、一度だけ女子大のハロウィンパーティに招かれたことがあるんですけど、そのときは娘のハロウィン帽子を借りて参加してしまいました。

簗瀬:栗原さん、イグノーベル賞の受賞式でも仮装していましたよね。

栗原:あれは、みんな仮装していくものかと思っていたら、意外とみんなしていなくて……。

簗瀬:たぶん、シャイレベルっていろいろあると思うんですけど、どうしてもハロウィンに参加しなくちゃいけなくて、仮装はしたんだけど、すごい半端な、いかにも最低限の仮装をしましたという状態がもしかしたら一番恥ずかしいという感じ方をする人もいて。

栗原:僕はたぶんやりすぎてしまうと思う。「シャイの逆張り」と、我々は呼んでいるんですが、シャイな人はかつぎだされると加減がわからないから、一生懸命やりすぎてしまう。これ、共感が得られるとうれしいんですが。

よく、(何かのイベントやお店で)前に来て踊りましょうよとかありますよね。座談会でもこの話を話しましたが、そういうとき僕はなぜか指名されやすい。そして、ベストダンサー的になっちゃうんです。過去に何度もありましたね……。

簗瀬:忘年会シーズンで、PPAPとか流行っているいま、けっこう我々は忘年会に行きたくないみたいな感じになりませんか?

栗原:誰かつぶやいていましたが、シャイな人はダークマターの仮装をすればいいんですよと。つまり、「無」になる。

簗瀬:いまの話にちょっとかぶりますけど、積極的なのに消極的を装う人についてどう思いますか?

西田:ちゃんとバレないように完璧に装っていただければ。我々は消極的なのに積極的を装っているので、まあお互い様かなと。いいと思います。よろしくお願いいたします。

簗瀬:この質問の背景には、この人は本当は積極的なんじゃないかという恐怖心がある可能性があるかなと。

西田:シャイなふりをして女を口説くとか、そういうことですか?

栗原:天然を装う人っているじゃないですか。それがあざといかどうか。

簗瀬:難しいですね。積極的なのに消極的を装う人にあまり反感がないのに、天然を装う人にはだいぶ反感がある。これはたぶん、消極的を装うことにあまり社会的なメリットがないからだろうと思います。天然な人というのは免罪符になるけど、消極的なんですって免罪符に使える人は消極的ではない。

栗原:私は消極的なんですという人は、いわゆる「ファッション消極」。もし流行るんだったら、それくらいでもいい。それだけ消極的という言葉が市民権を得たということ。だいたい、そういうことに対する反感というのは、本当に精神的に苦しんでいるんだ、ファッションにされたくないよという反感から来ていると思うんですが、消極性というのは病気と正常の間、グレーのあたりにある。

排他的になるより仲良くやっていこうよというのを発信していきたいので、いいんじゃないかなと思います。消極的であるからといって積極的な人を否定するような方向にいかなくてもいいんじゃないかなと思います。

苦手なノミニュケーションを楽しくする方法

簗瀬:次は、「ノミニュケーションが苦手です。スポーツなど、何かの目的のために集まるのは理解できます。会話だけを目的に集まるのは理解できません。ノミニュケーションを楽しくする方法はありませんか?」

これ、2つの質問が混ざっていると思います。会話だけを目的に集まるのと飲みにいくのと別ですよね。どっちが苦手なのか、会話をするためだけの飲み会が苦手なのか、分ける必要がある気がします。

栗原:楽しくする方法は、わりと簗瀬さんが本の中に書いていますよね。

簗瀬:ただ、楽しくするために何かをしかけるのはハラスメントと紙一重で難しいですよね。隣の人同士で話しましょうというのも消極性ピープルにとっては苦痛以外のなにものでもない。そもそも飲み会が楽しくなきゃいけないということ自体が圧力になってしまうという気がします。

私の提案としては、楽しむ軸をいくつか作る。料理を楽しむ、お酒を楽しむ、会話を楽しむ。全部楽しめれば一番いいですが、お店選びから考えて料理のおいしいところにする。そうすれば少なくとも料理は楽しめる。

西田:私は座談会でもこういう話をしましたが、たぶん我々はこのあと打ち上げとかをするんですが、それは僕は楽しいと思うんです。ちゃんとがんばったときに飲み会をしようと。まあ、ごはんが美味しいのが一番ですよね。とりあえず。

簗瀬:その飲み会がちゃんと意味があって、そのために何かしらの美味しいお店を探すとか、最適なメンバーを集めるとか、そういうところをちゃんとするというのは、けっこう重要だと思います。コミュニケーション問題で数人で会話をすることが一番苦手と、栗原さんは書いていましたが。

西田:結局それなりに人数がいて、みんながわかるトピックってすごく浅い話に限られちゃったり。恋バナとか、みんなが理解できるテレビの話とか。その場で二人だけはこの話をめっちゃ深く語れるという人がいるのにできなくて、浅い、みんながわかる話をしているというのが、あまり気持ちがよくないと思っているのではないかなと思うんです。

君の一番深い話は何なの、とサシで話すのが栗原さんは大好きなんだと思います。そういうふうにやろうよって言い出せれば丸く収まることはあるんじゃないかと思うんですが。趣味の合う人としか話さないみたいなのはたぶんなくて、その人がめっちゃこだわっている内容だったらその人と話せるのはうれしいみたいな。私もけっこうそのノリに近くて、そういうふうにやったらいいかもしれませんね。

簗瀬:その場合はメンバーを選ぶんでしょうか? つまり、親しい人とだけ、いいタイミングで飲みたい、と。

西田:人数とか、テーブルの並び方でもけっこううまくできるかなと思います。たとえば、12人とか20人いるときに、20人が1テーブルにずらっと座っちゃうんじゃなくて、わざとテーブルを少し離して4人ずつで分かれてしまえば、会話が浅くなりにくいので少しマシとかあるかもしれないです。

簗瀬:席順ハックって、私ときどきやるんですが、居酒屋でよくある長いテーブルあるじゃないですか。移動したときに居酒屋に入った順番であのテーブルに並ぶのがすごく嫌いなので、私は先頭で入って、ものすごく中途半端なところに座ります。

そうすると、順番に座るというみんなの固定観念が崩れてけっこう自分の意思で選ぶようになるんです。合宿とかの食事も、トレイを持って、端でもなく真ん中でもなく、すごく中途半端な席に座る。わざわざ近くに来る人はわりと話題が合う人になることが多い。失敗すると、誰も近くに来てくれない。

西田:そういえば、本に書きませんでしたが、夕食席決めシステムは座敷モードとテーブルモードで2種類のモードを実装しています。本当は座敷でないほうが一番いいんですが。座敷って横長に並んで、たとえば右の栗原さんと話すと左の濱崎さんと話せない。

濱崎さんの隣の渡邊さんがその隣の人と話していたら、濱崎さんは一人ですごく悲しいことになってしまう。私はどうなるかというと、濱崎さんと話してあげなきゃ、みたいになる。で、栗原さんが右隣の人と話をしていたらすごく困る。

要するに、座敷はよくない。座敷モードは座敷で夕食をとることがあったので、仕方なく実装したんですけど。座敷になりそうなときも、偶数で分かれるよう離してあげれば。さっきのテーブル席で分かれたほうがいいというのとけっこう似ていますけど。

栗原:座敷というのは、対面がすごく遠くて話しできない。事実上、隣の人としか話ができない。なぜそれが成立していたかというと、昔は自分からお酒をつぎに行かなきゃいけなかった。自発的に距離を詰めていかなければならなかったから、それでなんとかなっていた。

簗瀬:逆に、相手のところに行って何かをするような仕組みを用意すれば座敷でも……。

栗原:必ず、何人にお酒を注ぎなさいみたいなやつですか?それはちょっと。

簗瀬:そういうのではなくて自発的に行きたくなるような。

西田:誰かにつぐと酒がもらえる、とか。

渡邊:そういう店をちゃんとデザインしておいてほしいですよね。微妙な位置に座らざるを得なかったりするという場面があったり、そういうことが起きる店って危ないじゃないですか。SIGSHYシール貼ってあれば安全というような。

簗瀬:それを防ぐために作ったのが、本にも書いたギラギラチケットです。ギラギラ忘年会(情報科学系の研究界隈にある忘年会、みんなあまりにもギラギラしていないので、1年に1回くらいギラギラしようというおとなしい飲み会のこと)の中で自分が好きにできるところをお金で買うというシステムなんです。この席に座りたいというのを1000円で買ったり、このテーブルはこの話題と決めるのを2000円で買ったり。

渡邊:ちゃんとビジネスモデルが成り立つんですね。

簗瀬:それは何かというと、ああいう忘年会に行くと我々教員はちょっと高いお金を払って、学生は均一となるけど、学生の中にも階層があるし、教員の中にもあるわけですよね。自発的にお金を払わせるシステムにすると、だいたいお金のある人が積極的にお金を払ってくれる。

積極的にそういうチケットを買うのは楽しむ人なので、たとえば忘年会のサブタイトルを決めますとか、乾杯の挨拶をする権利をノリノリで買っていく人が現れる。我々の天敵なんですが、逆に、天敵がそういうチケットを買ってくれると、我々の飲み代を積極的な人が出してくれるということで、積極的な人への敵意もあまりなくなる。そういう楽しみ方を提供しています。

本書のAmazonのレビューに「ギラギラチケットはシャイハックではないんじゃないか」とあったんですが、よく考えてみるとやはりシャイハックで、積極的な人に積極的にお金を払わせることで我々は金銭的に得をしている。あと、乾杯の挨拶とか締めの挨拶とか、途中のプレゼントとか、飲み会を楽しむのにマイナスな要素を我々があまり受けなくて済む。

積極的な人だけでそれを全部埋めていくというシステムなので。そういう意味では我々は何もしないけれど、積極的な人にやらせるシャイハックだといえるかもしれない。

それって、シャイハラ?

簗瀬:続いて、「私は積極的な人間なのですが、消極的な人にハラスメントをしていないか心配です。積極的な人間が行うべきことは何かあるでしょうか」。

これは1つ心配になっているのは、あんまり消極、消極と言い過ぎると、こういう疑念を抱くようになって、それはむしろシャイハラではないかと。我々は1つ気をつけなくてはならないのは、「消極性警察」みたいになってはいけない。我々が消極的な人に優しいシステムを考案して、世間に発信していくのはいいけど、「これはちょっと……」というようなことはあまりやらないほうがいいかなと思います。

こういう疑念が出てきている時点で我々が反省しなければならない気がします。

栗原:おっしゃるとおりです。意図したわけございませんが、特に学会とかに行っていると、内気な人でも……みたいに称しているコミュニケーション支援システムがいっぱいあるんですが、ほんとにそうなのかなというのを日々感じているので、ついつい糾弾したくなってしまうんです。

簗瀬:よく学会で出てくる、内気な人のためのコミュニケーション支援システムって、このシステムを使えるなら内気じゃないよねって思うことが本当に多いので。学会発表に対しては厳しくあってもいいのではないでしょうか? 学会の発表は基本、ツッコミを入れてもらうためにしている。積極的に突っ込まれるために発表しているので。そういうことが許される場なわけです。

西田:まずは『消極性デザイン宣言』という本がありますので、それを読んでいただくのがいいのではないでしょうか。

栗原:西田さんは、最後のまとめで積極的な人へのメッセージを書いていますね。

簗瀬:心配するよりも、消極的な人に配慮した結果、積極的な人も得をしましたというような方向に持っていくのが重要。

栗原:冒頭で「シャイより始めよ」という話をしましたが、昭王という人はたぶん積極的ですよね。だけど、消極的な人の意見を汲んでちゃんとそれを活用しようという度量があった。積極的な人というのはグイグイ押す力があるので、我々もあやかるべきだと思うんですが、こういう考え方をしている人がいるんだということを受け入れてもらえればそれに対処して、もっとやりようがあるんじゃないかなと思います。

ギラギラチケットの話でも、積極的な人は経済的にはリードしているというところもある。消極的な人がいることを知覚するというのがまず一番。

消極的な読者に読んでもらえるメディアのデザイン

簗瀬:最後ですが、「消極的な読者にも読んでもらえるメディアのデザインとは?」
一人一言ずつで、まとめたいと思います。まあ、こんなのわかったら本売れてますよね、というのが私の一言でした。

渡邊:本という媒体は厳しいですよね。なんだかんだ言って、ネットも読み物よりYouTubeとかのほうがみんなが消費するような時代になってきていて、テレビからネットへと文字のほうに一時移りましたけど、映像のほうがやはり流し込める。時間の使い方という点では難しい問題もあります。

実は、本というのはけっこう積極性がいるものじゃないかと僕は思っているので。違うメディアの在り方、むしろプレゼンみたいなほうがラクですよね。聞く側は消極的でいい。

そういう形式がもっと増えるといいのかなと思っています。プレゼンテーションっていま流行っていますけど、街のカラオケルームを撤廃して全部プレゼンルームにすればいいのにって思う。日々、みんなが気軽にプレゼンできたら、消極的な人でも楽しめるようになるのかなと思います。

濱崎:そうですね、私は今で言えばSNSみたいなものを作ろうと、コミュニケーションをどうにかしようという研究をやってきましたが、そこでわかったことは、コミュニケーションのサイズが大きいと踏み出せない。トータルにやらなきゃいけないことが大きいと、自分のモチベーション以上のことをまとめてやらなきゃいけないときに、人は一歩踏み出すのをためらってしまう。

そこで、コミュニケーションのサイズを小さく、粒度を細かくして、自分にこれくらいだったらできるというサイズのコミュニケーションを作るというのが大事なのだろうと思っています。たとえば、Twitterみたいに小さいサイズに。140文字でいい、と。Facebookはいまだとだいぶウェーイ寄りのツールになってしまいましたが、「いいね」と1クリックだけでコミュニケーションできるという意味ではコミュニケーションを最小化したようなもの。

そういう意味でいえば、我々もあるメッセージを伝えようと思ったときに、読みやすく小さなサイズで伝えるというのが、消極的な読者にも読んでもらうメディアになるだろうなとは思います。一方で、たくさんのことを伝えたいときにどうすればいいか、というのはまだわかっていなくて。

1つの解決策は、段階的にどんどん引きずり込んでいくみたいな形なんだろうと思います。それには渡邊さんが言うように、「使っているところのデザイン」から「使っていないところのデザイン」をやるという必要がある。最初は小さなサイズから、あとは段階的に踏み込ませるような素材を、段階的なメディアみたいなものを考えてみるのがいいのかなと思います。

西田:小野ほりでいさんに聞くといいと思います。我々も、小野ほりでいさんがすばらしいと思ったのでイラストを頼みました。

簗瀬:だいぶいろいろなことを小野ほりでいさんから学びました。

栗原:2つあるんですけど、1つは、ロールプレイングゲームをやる時間がないから全部ムービーにしてほしいと思います。渡邊さんの話に近いですが。時系列メディアにして、この時間だったらちゃんと終わるという保証した状態で使えるというのが、すごく重要だと思います。

どれだけこれで時間を取られちゃうんだろう、と我々はいつでも怯えながら時間を何かに費やしている。それがかかる時間が事前にわかる。博物館とか本屋さんとか、遊園地でどこから見ていいのかわからない、みたいな感じになるとやる気がなくなってしまうんです。順路がほしい。IKEAとか、すごいゴチャゴチャしているけど、一応順路があるから見る気になる。そこから逸脱することもできる。

あれはいいナビゲーションだなと思います。つまり、なるべくインタラクションの度合いを自分で選べる。減らせばいいってわけではなくて、自分で選べるというのが重要。

2つ目は、まず笑わせ、それから考えさせる。まずはパっとキャッチーなものを出して興味をひく。でも興味をひくだけだと深まらないから、ちゃんと深いことを考えるような導線を作る。私はそう心がけているんですが、イグノーベル賞の受賞要件が「まず笑わせ、そして考えさせる」で、たまたま私のポリシーと合っていたんですよね。その場限りというのにはしない。

かといって、難しすぎることを最初から押し付けたりしない。素直に楽しめ、奥も深いというのが重要かなと思います。

簗瀬:はい、じゃあ今回のイベントはここまでとなります。みなさま、ありがとうございました。

いかがだっただろうか。少しでもシャイハックの心得的なものを感じてもらえれば幸いである。

なお、イベントの模様(動画)も公開しているので、ぜひ、そちらも参照されたし!

動画リンクはこちら
オープニング
消極性研究会紹介
書籍紹介
栗原パート
西田パート
濱崎パート
簗瀬パート
渡邊パート
座談会(パネル)

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