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医療・ヘルスケア分野におけるロボット・ブロックチェーンの活用は?「Health2.0 ASIA-JAPAN2016」イベントレポート

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Health2.0 ASIA-JAPAN2016開催

今年で2回目を迎える日本会議は「Future is Here:Most Advanced Technologies and Healthcare」というメインテーマのもと、米国、ヨーロッパ、アジアのイノベーターと日本のヘルスケア市場をリードするキープレイヤーが登壇。

最新技術を活かしたソリューション、問題解決に向けたアクション・プラン、コラボレーションなどについて議論する2日間となった。

これから超超高齢化を迎える日本の医療業界は、グローバル勢の参入が難しい一方で、巨大市場として世界から注目される存在だ。

世界のヘルスケア市場に起きている急速な変容と拡大は、日本にどのような影響を与えるのか。カンファレンスの一部をレポートする。

医療現場での活用は?インターフェイスとしてのロボット

ここでは医療現場でのロボットの活用事例が紹介された。株式会社ウィンクルからは、ホログラフィーとして映し出された3Dキャラクターがインターネットや家電など自宅にある様々なモノとつながり、主人とコミュニケーションを行うバーチャルホームロボット「Gatebox」が紹介された。

こちらをプレゼンテーションしたのは、初音ミクの開発者、武地氏だ。ベッドで過ごす時間が多い患者に「Gatebox」をどう活用できるかが議論された。

国立研究開発法人産業技術総合研究所の長谷川氏からは、脳波による意思伝達装置「ニューロコミュニケーター」が紹介された。パーキンソン病などで話すことができない患者にヘッドギアを装着、脳波を読み取りコミュニケーションを向上させるというものだ。患者が脳波で制御するロボットも研究されている。

ヘルスケア分野におけるブロックチェーン最新事情

こちらでは4人のスピーカーが登壇し、ヘルスケア分野におけるブロックチェーンについて議論を行った。ヘルスケア向けのブロックチェーン開発で知られるYouBase、PokitDok、MedableのCEOや技術者から、米国の最新事情が紹介された。

日本とは異なり国民皆保険制度がない米国では、1人ひとりが様々な会社と健康保険の契約を行っている。そのため患者は医療機関を受診するたびに、保険でカバーされる範囲をチェックする必要がある。

そこで米国では患者、医療機関、保険会社、金融機関が複雑に関係する医療費の支払いという側面で、ヘルスケアのブロックチェーンの活用が進んでいる。PokitDokのLisa Maki氏からは、さらにブロックチェーンが生命保険会社や金融(融資)ともつながる新しいサービスも紹介された。

またYou Base のMichael Dillhyon氏は、スマートフォンなどの個人が持つ情報端末とウェアラブルセンサーがいままで不可能だった広範囲、かつ様々な条件での医療データの収集を可能にしたと語り、集めた膨大な医療データの分析と活用は、新薬の開発や治験を通してヘルスケアの未来に寄与する可能性に触れた。

登壇者はいずれもブロックチェーンは近い将来チップに載ると想定し、ヘルスケアの分野は大きく変容していくとみている。こうした劇的な変化を、チャンスととらえたいと語った。

映画「Personal Gold」をテーマにアスリートとヘルステックを議論

続くプログラムでは、日本未公開のオリンピック自転車競技のドキュメンタリー映画『Personal Gold』をテーマに、アスリートを支える最新のヘルステック技術が紹介された。

自転車での団体追い抜き競技(チームパシュート)で、負け続きだった米国女子チーム。予算もノウハウもないチームを数ヶ月で金メダルに導いた背景には、最新のデジタル機器と専門家によるデータ分析があった。

作品では選手の腕につけた機器から収集した24時間の身体データや遺伝子情報から、1人ひとりの特質を把握し、個人にあったトレーニングと睡眠などのリカバリー方法や食事のメニューに具体化していく。

選手の行動とその結果をデータサイエンティストが分析し、相関関係から効果のでるトレーニングの解を導き出す様が描かれていた。

登壇者の1人、トライアスロン選手でスポーツキャスターでもある白戸太郎氏によると、スポーツの現場ではデータはたくさん取っているが、それを活かしきれていない状況があるという。自分の経験を重視しがちなアスリートにとって、客観的なデータの裏づけは大きな武器となると語った。

最新・最先端のGadget, Wearable, and Design

ここではヘルステックの最新機器や最先端サービスが、各社のデモンストレーションとともに紹介された。

2016年7月にクックパッドのヘルスケア事業部を分割して設立された「おいしい健康」。家族ひとりひとりの健康状態にあった献立提案、レシピ検索サービス。糖尿病や高血圧などの生活習慣病やメタボリックシンドローム対策、高齢者向けなど、プロフィールの食事基準に合わせてレシピと献立を提案している。

薬局のインターネット化で、日常生活の医療を支援する「ミナカラ」。近くに薬局がなかったり、薬局まで足を運べない患者さんに、スマホで撮影した処方箋をもとに処方薬を薬剤師が家に届けてくれる医療サービス。処方薬に関する不安や疑問に、チャットで薬剤氏が答えてくれる。

NTTドコモが開発しているのは、医療機関での使用に特化した音声翻訳システム。スマホやタブレットに話すと、翻訳された音声が再生されるというものすでにリリースされている「はなして翻訳」をベースに、症状や医療の専門用語などを強化し、医療機関向けに特化している。すでにいくつかの医療機関で導入されている。

メディカルコンパスが現在開発しているアプリは、市販薬のアドバイスを行う、セルフメディケーションサービス「セルフメディコンパス」。医療費削減のために政府が推進するセルフメディケーション(自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること)。飲み合わせや飲み方など、市販薬に関する疑問に答えるという。

メガネの「JINS」を運営するジェイアイエヌが手掛けたのは、瞬きや目の動きから心と身体の変化を捉える、カメラ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」。収集したデータを分析することで、集中度がわかるというもの。また目の動きや重心移動と関係が深い認知症やロコモティブシンドロームなど、現代病の早期発見と対策への活用も期待される。

ジェイアイエヌは、脳波・脈拍・体温を記録、光の効果で睡眠の質を改善する高性能アイマスク「Neuroon」を提供。アイマスクがよい睡眠をサポートするだけでなく、Bluetooth® 4.0 BLEでiOSやAndroidにつながり脳波、脈拍、体温といった生体データを取得し、よりよい睡眠の提案をしてくれる。

孫泰蔵氏・池野文昭氏が語る「グローバルマーケットで闘う力」

連続起業家・投資家・実業家の孫泰蔵、医師・大学教授・研究者・投資家の池野文昭が登壇したセッションでは、グローバルなヘルスケアビジネスの展望に加え、この分野で起業を考える人達へのメッセージが送られた。

まず両氏からブラウザからIoTへの変化は、ヘルスケアの分野でも影響が大きいことが示された。

孫氏は小型化、高性能化したセンサーから得たバイタルデータをAIで解析する将来について触れた。病気治療の基点がこれまでの医学論文からデータサイエンスに変わることで、治療だけでなく病気の予兆の把握や予防にも目が向けられるようになるだろうという。

一方で池野氏は病気の予兆を把握するための、医師によるデータマイニングの重要性を強調した。

また日本は2016年の65歳以上が27.7%、2050年には40%になると予想される。超超高齢化社会を支える医療ITのシステムを構築できれば、日本が世界を相手に食べていけるのではと池野氏は語った。

最後に両氏が共通して主張したのは「失敗の大切さ」。シリコンバレーをはじめ、世界各国を飛び回る池野氏は「失敗する自由」を挙げた。

医師でもある池野氏は医療での失敗は許されないと語るが、その一方で人は失敗から学んで成長するものであり、失敗しても絶望しない社会の大切さを語った。

グローバルマーケットで闘うために英語は必要だが、流暢である必要はない。うまく話せないからこそ余計なことを言わない表現が人の心を動かすこともあるそうだ。

現在多くの若いスタートアップイノベーターを支援する孫氏は、自ら多くの事業の失敗を経験してきた。「自分の自信のよりどころは失敗」と言う孫氏から、「失敗は経験。失敗しても死なない」と若手に向けて励ましのメッセージが送られた。孫氏がよく知るシリコンバレーには、失敗を恐れずお互いを高めあう空気があるという。

シリコンバレーと比べると砂漠の日本にも、小さなオアシスが水を循環させることから始まるエコシステムをつくっていきたいと語った。

日本発のヘルスケアビジネスに期待

昨年同様、多くの来場者で賑わっていた会場には、医師免許を持つ人も多く見られた。

これまでグローバル化から守られてきた日本の医療分野だが、新しいヘルスケア×ITへの関心はますます高まっているといえるだろう。

様々な規制がある日本の医療業界だが、その独自性から生み出される強みが、日本発のヘルスケアビジネスが世界で評価される日を期待したい。

(取材・文・撮影:はたけあゆみ)

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