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P&Gの「“多様性”を活かしきる」働き方改革とは?

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プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社

ヒューマンリソーシス マネージャー

小川琴音(おがわ・ことね)さん

ファブリーズ、アリエール、パンパース、ジョイ、パンテーンなどでおなじみのP&Gこと、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン。同社はアメリカに本拠を置く世界最大の一般消費財メーカーだ。

「転職人気企業」「働きがいがある企業」などのランキングを見ると、P&Gは上位に陣取ることが多く、社会人からの評価が高い企業としても知られています。

その理由の一つとして「在宅勤務」や「フレックスタイム」の積極的な導入といった、「働き方の選択肢が豊富」なことがしばしばあげられますが、その実態はどうなっているのでしょうか。

「多様な働き方を認めて、本当に職場が回るの?」

「制度があっても実際はあまり使われていないのでは!?」

尽きない疑問を、現役の社員さんにぶつけてみました。

P&Gが作った「働き方を支える制度」の驚きの中身

フレックス・ワーク・アワー・・・勤務時間を月単位で管理する。

ロケーション・フリー・デー・・・月に5日間、勤務場所を自由に選択できる。申請事由によっては10日間も取得可能。

コンバインド・ワーク・・・会社と在宅を合わせたフルタイム勤務。

—とても魅力がある制度ですね。もう少し詳しい内容を教えてください。

はい。まず「フレックス・ワーク・アワー」についてご説明しますね。これはフレックスタイムの進化形なんです。勤務時間を月単位で管理するので、月の所定労働時間と、その日のコアタイムさえ満たせば、日ごとの始業・終業時間は自分で決められます。

誰でも利用可能で、特に会社への申請は要りません。勤務時間はデータ入力式のタイムシートで管理しています。エクセルに自分で勤務時間を入力するようなイメージです。

—「ロケーション・フリー・デー」はどのような制度なのですか?

会社で働くのと同等もしくは、それ以上の生産性が担保でき、機密漏洩の心配がない場所であれば、どこで働いてもいいよという制度です。入社2年目から取得が可能で、取得日数の上限は原則月5日。資料や文書を、静かな環境で集中して仕上げたい時などに便利なんですよ。

手続きとしては、イントラでのトレーニングを受けて、上司の承認が下りたらオーケー。特に会社サイドによる勤務場所のチェックなどはありません。

—「コンバインド・ワーク」も、働く場所に関わる制度のようです。

そうですね。「コンバインド・ワーク」は、時短・在宅勤務の進化形という位置付けで、育児や介護などが理由であれば、1日の中で会社と自宅の両方で働くことができるという制度です。1日の所定労働時間が計7時間40分以上で、うち会社で4時間30分以上働くことを条件に、最大週5日間まで取得できます。

—昼過ぎまで会社で働いてから家に帰り、午後から夕方までは家で育児をして、夜になったらそのまま自宅で仕事をする。そんな働き方を認めるというわけですね。

はい。「夕食時だけは介護のために家に居る必要がある」「子どもの送り迎えをしたい」といった時に都合がよく、言ってみれば、仕事の中抜けの制度化です。この制度のおかげで、今まではどうしても時短勤務で対応するしかなかった育児や介護が、フルタイムで働きながらできるようになりました。

「在宅勤務」や「フレックス」は経営戦略の一つ

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—福利厚生を充実させる理由は、社員のモチベーションを高めて、仕事の生産性を上げるためなのでしょうか?

確かに生産性の向上を実現するためのツールではありますが、私たちは制度を福利厚生とは考えていません。多様性を尊重しようという経営戦略の一環なんです。

社員全員が自分の持てる力を最大限に発揮して仕事にあたり、スキルを伸ばしていくことで、会社は成長し、生産性が上がります。一人ひとりの個性は違いますから、それぞれが最も輝く働き方もまたそれぞれ違うはずです。

朝が一番集中できる人は、朝を中心に働けばいいし、逆のパターンだってあるでしょう。子育てや介護を実際に経験しながら働くことで、新しい製品のアイディアを思い付くことだってあるはずです。そういった個々が一番力を発揮する多様な働き方を支えようという経営戦略が、制度の根本になっています。

会社を休むために誰でも使える権利ではなくて、あくまで働きやすい環境を自ら作るための制度とお考えください。

—どれくらいの人が制度を利用していますか? できたら具体的な人数が知りたいです。

実は分からないんですよ。

—具体的なデータは機密事項なのかもしれませんが、そこを何とか教えていただけませんでしょうか。

機密とか、そういうことではないんですよ(笑)。利用者数の増加を目的とした制度ではないので、誰が制度を使っているかは把握していますが、数はカウントしていないということです。

先ほどのお話にリンクするのですが、休みを提供するための制度ではなく、個々に合った働き方を支える制度ですから、必要なら使ってくれていいし、要らなければ使わなくて構わないと私たちは考えています。 強いていえば、男女、年齢、役職を問わず、皆が使っているようです。もちろん社長も含めて。

柔軟に働く制度の活用で本当に職場が回るの?

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—制度の評判はいかがですか?

上々です。満足度調査も高い数値を維持しています。

—なぜ御社では柔軟な勤務態勢の導入と運用が可能なのでしょうか? 例えば上司の方などは、部下が在宅勤務をしたら、真面目に働いているのか不安になりませんか?

明確な評価システムがあって、それが社員の自主性を育んでいるから、うまくいっているのだと思います。

—どのような評価システムなのですか?

まず当社では年に一度、グローバル全体で達成すべき目標を全社に開示します。そして全体目標を達成するために、一つの会社が達成すべき目標は何かを定めます。次に会社の目標を達成するための各部署の目標、各部署の目標を達成するための個人の目標というように、目標を個人レベルにまで落とし込んでいきます。

個人が達成すべき目標は、上司と相談をしながら、自分自身で5つ設定するのですが、この時に目標を数値化するんです。例えば人事部であれば、社員の満足度調査を20%上げるといった目標を立てます。

—目標が数値化されているのであれば、自分の仕事の結果は一目瞭然ですね。ゴールまでの進捗確認はするんですか?

はい。上司が小まめにチェックして、問題があれば、本人と一緒に改善策を考えます。マネジメント職の場合、人材育成も自身の評価項目の一部になりますから、部下へのアドバイスも本気です。

成果主義は結果を重視するあまり、プロセスに関心を示さないと思われがちです。でもそれは違います。目標に到達できるよう、上司が部下をしっかりサポートしているものなんですよ。

—常に目標に向かって、前を見続けて仕事をする環境にあるから、サボろうなんて思わないのでしょうね。

サボる余裕なんて、とてもじゃないけどありません(笑)。

組織として「多様性」を埋もれさせてはいけない

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—P&Gでは、多様性を生かすことを、経営戦略の一つとして位置付けており、明確な評価システムがあるからこそ、多様な働き方を支える制度がうまく機能しているようです。制度そのものと、評価システムは、極論をいうと、他の会社でも導入する決断さえすればいいものですが、例えばもっと社員数が少ない会社では、多様性が企業の成長につながることを実感できないのではないでしょうか? そもそも少人数なので、そこまで多様性がないのかもしれません。

一般消費財の大手メーカーだからできた取り組みと言われることは多々ありますが、一概にそう言い切れないと思いますよ。少人数で一枚岩のチームだって、自分たちの多様性に気付いていない可能性があるんです。

一度同僚に対して、彼・彼女はこういう人だと理解したつもりになってしまうと、そこから逸脱する見方ができなくなりがちです。するとその人が生かしきれていない別の部分、つまりその人の多様性は、いつまでも埋もれたまま。

相手に多様性を見いだして、それを生かす方法は、トレーニングによって培うことができます。実際に当社では「インクルージョン・スキル・トレーニング」といって、部下の多様性を認めて尊重し、生かすための4時間の研修を導入しています。

今年3月には「ダイバーシティインクルージョン啓発プロジェクト」を発足し、この「インクルージョン・スキル・トレーニング」の社外提供を無償で行っています。セミナーやフォーラムなどを通じて、多様性を生かしきるインクルージョン・スキルについて、学んでいただく機会も提供しています。

—多様性を生かす考え方が広まって、もっと個人の能力とやりたいことが尊重される世の中になってほしいですね。

協力:山下浩子(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン

写真、編集:清水亮一、大山勇一(アーク・コミュニケーションズ)

文:本山光

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