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女性の「キャリア観」は、今どう変わっているのか?

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女性起業家・個人事業主300人が集結する“日本最大級の女性起業家のための祭典”「J300」が始まったのは2009年。友人と一緒にこのイベントを立ち上げたのが、女性経営者のデータベースサイト「女性社長.net」の運営や、女性社長を応援するさまざまな企画を手がける株式会社コラボラボの横田響子さんです。

奇しくも“女性の活躍”が一躍クローズアップされた2016年。最近では男女共同参画や女性の起業、キャリアアップのための講演などにも精力的な横田さんに、今、女性のキャリア観がどう変わりつつあるかうかがいました。

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横田響子(よこた・きょうこ)

㈱コラボラボ代表取締役。1976年生まれ。大学卒業後、㈱リクルートを経て、2006年㈱コラボラボを設立し、女性社長を応援する活動を精力的に展開。2011年APEC WESにてイノベーターとして表彰。2013年内閣府・男女共同参画局女性のチャレンジ賞受賞。2014年ForbesJapan「未来を創る日本の女性!フォーブスが選ぶ10人」選出。内閣府・男女共同参画連携会議議員、内閣府「国・行政のあり方を考える懇談会」委員などを務める。著書に『女性社長が日本を救う』(マガジンハウス)。

2017年1月26日に開催される2016年度の内閣府共済「企業×女性起業家マッチングイベント」&「J300シリーズ」の詳細は、http://joseishacho.net/j300_2016/まで。

キャリア女性ほどリアリティを持って、10年後の自分を考えている!?

――これまで女性社長支援という形で女性の働き方を見つめてきた横田さんから見て、最近の女性の働き方や、働く女性の意識をどう見ていますか。

2016年11月、日本年金学会などが共催した「ユース年金学会」で、お茶の水女子大永瀬ゼミの学生が発表した調査があります。約20大学の幅広い男女学生群約1000人が回答した調査ですが、そこには「専業主婦になりたいですか」という質問もあり、その結果は「そう思う」「まあそう思う」を合わせても男女で19%。女子で「とてもそう思う」と回答したのはわずか10%だったそうです。この結果を見ても、働きながら子育てするというのがスタンダードになりつつあるといえるでしょう。

つい先日も、母校の後輩の20代女性たちと会う機会がありました。比較的安定志向が強い校風なのですが、みんな転職をナチュラルに考えているのに驚きました。みんな大手企業にいて、しかも今は女性活用ということで、20代でもバンバン仕事を振ってもらい、やりがいを感じている。そのぶんスキルも身についているのですが、子育てしながらスキルを活かして楽しく働いている30代、40代の先輩世代がまだ少ない。10年後の組織にも良いイメージが描けないし、だったら外資も含めて、今のうちに転職先を探してみよう、という感じです。

――きちんとキャリアを身につけているからこそ、自分の将来を考えたとき転職もありうるということでしょうか。

そうですね。子育てしながら働きやすく、かつやりがいもあるところを、きっちり天秤にかけながら、現実的なこととして考えています。もちろん彼女たちの会社はどこも産休や育休の制度は整っているんですよ。でも出産というブランクから戻ったときに、またやりがいがある仕事に戻れるのか。

日本の一般的な年功序列型の企業は、給与体系などで50歳くらいをピークに設計していると思います。男性はそれでもいいのですが、女性が30代で子どもを産んで育てたいと思ったら、20代~30代前半のうちにステップを考えておかなくてはいけない。そのぶん男性よりも、リアリティを持って考えているのだと思います。男性の育休と違って、女性の出産は、確実なお休みになりますから。

それからパートナーとの関係もあります。後輩の中の1人は、パートナーが外資系企業に勤め、海外転勤もありえるので、海外でも働けるステップを持っておきたい。それに相手が世界を渡りながら、軽やかにホップステップジャンプしているのを間近で見ていたら、自然と刺激を受けるそうです。

――みなさん実際に転職活動しているのですか?

めちゃくちゃしていますね。といっても、転職が目的ではないので「いいところがあったら」くらいですが、アンテナは張り巡らせているようです。

この間も、友人から突然「職務経歴書を出そうと思っているんだけど、こんな感じでいいか見て」とメールが来て。たまたまテレビで見た会社に興味を持って調べたら、日本に上陸して間もない外資系のベンチャーで、自分が求めているポジションの求人もあったからというんですが……。今いるところもすごく良いところなので、そもそもなんで転職するの、本当にいいの?みたいなところから話しました(笑)。

すべての女性が転職を視野に入れているとは思わないし、正直、残る選択肢もあります。今は企業も、出産後の女性も残りやすいよう、女性が活躍しやすいように、頑張って変化しようとしてくれていますし、そのまま残ったとしても、昔ほど不幸ではありませんから(笑)。組織の中にも環境変化があって、キャリアとセットにした人生を考えた場合、女性にもいろんな選択肢がある世の中になってきていると思います。

アファーマティブ・アクションに戸惑う40代女性

【解説】アファーマティブ・アクション

アメリカにおいて、人種的なマイノリティや女性の差別是正のためにスタートした活動。差別を禁止するのみならず、差別されてきたグループに優先的な権利を与えることにより、差別的な現状の回復を図るまでに暫定的な積極措置をとることを認めたもの。日本では「ポジティブアクション」という言葉が使われることも多い。企業内の人事施策では、主に採用時や管理職昇格時に、人種・性別の格差を是正するために、マイノリティや女性の登用に数値目標を導入したり、優先的枠を設けたりする取り組みが行われている。

出典:リクルートワークス研究所「ワークス人事用語辞典」

――今、日本ではアファーマティブ・アクションで女性管理職を増やそうとしていますが、一方で管理職になりたがらない女性もいると聞きます。何がハードルになっているのでしょうか?

入社から3~4年くらい、まだ20代のうちにいい仕事させてもらった人、マネージメントの経験を持った人ほど肯定的な実感を持っているようです。なぜなら、チームのリーダーになったほうが働き方をコントロールしやすいから。管理職の大変さはありますが、人に振ることでコントロールできる。これはやったことのない人にはわからないでしょう。

実は今年、某自治体で行われた40歳前後の管理職手前の女性たちの研修に講師として参加したのですが、彼女たちが言っていたのは「自分たちは20代のとき、“女の子の仕事”をしていた」。自治体で最前線の仕事というと、たとえば議会対応や議員さんの対応などがありますが、彼女たちの時代にはそれは男性の仕事だったし、自分たちもそれが当たり前だと思っていた。だから急に管理職になれと言われても、自分たちにはその力量がない。「そういう仕事もきちんと経験している今の20代女性に比べて、自分たちはかさ上げされている」と言うのです。研修を設定した担当者は「自分たちでそう思っているんだ、わかっているんだ。過渡期だね」とおっしゃっていました。

もちろん、“女の子”には大変な仕事はさせたくないというのも、ある意味、思いやりではあるんです。男女差別の結果ではありますが…。彼女たちには、「これをいい機会に、遅く来た修羅場と思ってがんばりましょう」と言いましたが。とにかく今が大変な時期であって、10年くらいたてば解消されるとは思います。少なくとも今の20代以降は、女性だから実力がないという言い訳が通用しなくなるわけですから。

もちろん企業側も姿勢が問われています。男女を問わず、入社からできるだけ早い段階で、どれだけやりがいのある仕事を提供し、成長の機会を与えられるか。それも将来のキャリア像が見える形で。そもそも男性でも、40歳くらいにならないとチームを任されない企業はまだいっぱいありますから。

――もし今、漠然と転職を考えている女性に何かアドバイスするとしたら?

まず目の前の仕事をきちんとこなすこと、ですね。ただただ不安になっても仕方ない。でもアンテナは常に張っておく。友達の話でもいいから違った環境を見て、自分にもこのステップが欲しいと思ったら目指せばいいし、逆に今の自分の幸せがわかるかもしれません。

ただ、転職したいと思っても、そこで採用してもらえる自分にならなくてはいけないわけですから、そのためにはやはり目の前の仕事をするしかありません。

キャリア層からも注目を集める「起業」という働き方

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――女性の活躍ということでいえば、女性の起業を支援する流れもあります。

女性が起業する場合、やりたい仕事があるからスタートした方もいるのですが、就職口が少ないから自分で会社を興すケースや、自分の裁量でやりたくて会社にするケースもあります。ここでも働きがいと働きやすさのセットになっているのが、男性の起業とちょっと違うかもしれません。

――コラボラボでも女性の起業セミナーなどを開催していますが、反応はどうですか?

東京都の委託で今回初めて開催するのですが、告知開始後の反応は非常に良いですね。また以前、ある企業が主催して私も講師を務めた起業セミナーには、定員の3倍の応募がありました。

面白いことに、女性起業家のそれまでの経歴を見てみると、90年代までは叩き上げ系が多かったのが、00年代になると派遣さん、つまり雑誌などの「好きなことを仕事にする」という言葉に魅かれた層が目立つようになりました。ところが最近はキャリア層も増えています。企業でキャリアを積んできた層が、ひとつの選択肢として起業を考え始めたということです。

背景にはインターネットの発達があります。パソコンが1台あれば安く広告も作れますし、さらにSNSを集客に活用したり、資金集めもバリエーションが増えました。もちろん今も事業計画書を作成し、銀行に融資をお願いする手法はあるのですが、クラウドファンディングの活用や、経産省の創業補助金のように、創業に必要な経費を、上限はあるものの国が援助してくれる制度ができたりと、起業したい人へのサポートはどんどん充実してきています。

――女性社長の交流イベントとして始まった「J300」ですが、2014年からは内閣府と共催のマッチングイベントも同時開催されていますね。

企業とのコネクションがない女性起業家にも機会を提供しようということで始めたイベントです。新しい事業展開が欲しい企業に対し、女性起業家がプレゼンをして、両者をつなげるのですが、やはり企業にいた経験のある人ほどプレゼン上手で、商談成約率は圧倒的に高いですね。

でも面白いことに、企業経験はなくても意欲やアイデアに溢れた女性経営者のパッションに惹かれて、「この人と組んだら面白いことができそうだ」という部分で評価してくれる人もいます。特にベンチャー出身の方だったりすると、組織の中からは生まれてこない“熱”みたいなものを感じ取ってくれるようです。ただ、アイデアとパッションだけでは形にするのは難しいので、来年からはコラボラボがサポートすることも考えています。

世界中の国やグローバル企業が女性の起業を支援する理由

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――海外でも女性起業家の支援に力を入れている企業が増えていますね。

そうですね。国だけでなく、企業の支援プログラムが活発になっています。たとえば流通大手のウォルマートは2011年から女性起業家、ないしは女性が活躍している企業からの仕入れを倍増させる取り組みをグローバルで始めていますし、コカ・コーラも2020年までに世界中で500万人の女性起業家を支援するという目標を掲げ、この年末からプロジェクトがスタートします。また、フェイスブックも今年の3月から女性起業家の支援プロジェクトを始めていて、日本ではコラボラボが窓口になっています。

――なぜ女性の起業が必要なのでしょう?

企業にも新陳代謝があって、潰れていく企業もあれば、新たに生まれる企業もあります。新しく生まれたなかで、100人、200人もの規模に成長する企業はほんのわずかですが、それでも1社が4~5人の雇用を生むだけで、世界中でみれば何万人、何百万人もの雇用につながります。そのためにも創業者数を増やしたい。そのプレーヤーの潜在層が女性ということです。

これは女性に限ったことではありませんが、とにかく起業の総量が増えないことには…。まずは自分の職を作り、それが雇用につながるということです。グローバル企業も重要ですが、ローカルな企業も大切なのです。

――そのなかでなぜ女性起業家の支援が必要なのでしょう。

過去の起業に比べて、創業者のバックグラウンドがさまざまだからという理由はあると思います。キャリアを積めた層もいますが、そうではない層もいる。かつ、女性は儲け優先で起業を考えているわけではなかったりもするのです。儲けよりも、社会的意義とやりがいですね。企業経験のある人だと、「そのビジネスモデルでどれくらい儲かるの」という話から入ったりしますが、お金の話から入ると気分が萎えてしまう人もいっぱいいます。

――そもそもビジネスモデルのないところで始めようという人もいっぱいいそうですね。

ベンチャーや新規事業立ち上げの経験がある人ならわかりますけど、外部資金を調達するために事業計画は大切ですが、まずはスタートして顧客の声に柔軟に対応していくことが何より大切なのです。だから創業当初に想定したビジネスモデルそのままで、2~3年続いている会社自体が少ないですね。

ともかく、今の20代女性は経験を積むチャンスが増え、転職や起業に加え、働き方の選択肢が増えていますし、企業側にも優秀な人材を惹きつけるような変化が問われてます。もちろんこれは男性にも言えることですが、早いうちに経験を積み、その時々で自分のベストな選択をしていって欲しいですね。

文章・小野千賀子 写真・朝比奈雄太

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