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「今度ゴハン食べにおいでよ」が原点、子ども食堂を始めた想いとは

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「今度ゴハン食べにおいでよ」が原点、子ども食堂を始めた想いとは

経済的な理由で十分に食事が取れない子どもなどに食事を提供することで全国に広がりを見せている「こども食堂」。テレビや新聞で目にしていたその名前を、家の近所で見かけるようになったのは、半年前のことだった。それが、毎月第4水曜日に開かれる「ようがこども食堂」。あまり”貧困“なイメージとは結び付かない世田谷区用賀というこの街で「こども食堂」を始めたのはなぜなのか。その理由を、「ようがこども食堂」の開催日にお邪魔して、代表の瀬尾明子さんに聞いてみた。

子どものボランティアも楽しくお手伝い

10月26日16時。「ようがこども食堂」が開催されるレストランの前では、17時のオープンを前に、スタッフが忙しく準備をしていた。なぜか皆、仮装をしている。そして、お話を聞く予定の「ようがこども食堂」代表の瀬尾さんも、ジャスミン(映画『アラジン』)の仮装をバッチリ決めて、私たちの前に現れた。

「ハロウィーンが近いので、スタッフ全員が仮装しているんです。参加者の皆さんにも、仮装してねって呼びかけているんですよ」(瀬尾さん、以下同)

開始時刻の17時が近づくと、スタッフの皆さんの動きが慌ただしくなる。レストランの外で、受付の準備をするスタッフもいれば、食事を用意するスタッフも。デザートのパンプキンケーキに、楽しそうにオバケの飾りつけをしているのは、子どもたちだ。

「大人や大学生のボランティアだけではなく、子どものボランティアも、常時4~5人はいます。エプロンをして手を洗ったら、お手伝いをすることになっています」

そういえば、レストランの前で呼び込みをしていたのも、小学生の男の子だった。皆が生き生きと楽しみながらお手伝いをしている。そうして着々と準備が進むなか、私は一番気になっていたこの質問を瀬尾さんにぶつけてみた。

「用賀って、あまり“貧困家庭”が多いイメージがないんですが、なぜここ用賀で、こども食堂を始めたんですか?」<画像1>左:「ようがこども食堂」代表の瀬尾明子さん(44歳)。用賀にある整骨院でセラピスト兼アシスタントを務める傍ら、「ようがこども食堂」の運営に取り組んでいる。2児の母であり、栄養士と調理師の資格ももっている。右:会場となるレストラン前に立てられた手づくりの看板。参加費は、中学生以下の子どもは無料、大人は300円。その日のメニューも書かれている(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

<画像1>左:「ようがこども食堂」代表の瀬尾明子さん(44歳)。用賀にある整骨院でセラピスト兼アシスタントを務める傍ら、「ようがこども食堂」の運営に取り組んでいる。2児の母であり、栄養士と調理師の資格ももっている。右:会場となるレストラン前に立てられた手づくりの看板。参加費は、中学生以下の子どもは無料、大人は300円。その日のメニューも書かれている(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「今度、ゴハン食べにおいでよ」が原点だった

きっかけは、瀬尾さんが勤めている整骨院に通う女性の「うちの子、学校に行けなくなっちゃって、家にいるの」という一言だった。

「『うちの子にもそういう時期あったよ。だから、無理に学校に行かなくていいんじゃない? 代わりにここ(整骨院)に遊びにおいでよ』と声をかけたら、その子が本当に通ってきてくれるようになって。整骨院で勉強したりしているうちに、また学校に通えるようになったんです」(瀬尾さん)

以来、整骨院に不登校の子どもが集まるようになり、中学生、高校生、大学生たちがワイワイと勉強を教え合ったりするようになったのだとか。彼らの様子を見ていて、瀬尾さんはあることに気付いたのだという。

「『これから塾だから、ここで食べていい?』とコンビニで買ったおにぎりを夕食代わりにしている子がいるんです。お母さんが忙しくて、食事を用意する時間がなかったからって。『それなら今度、ここにゴハン食べにおいでよ』と思わず口にしていました。それがそもそものきっかけです」

1人で食事をしなければならない子が少なくないことを知り、その食事の内容も心配になった瀬尾さんが、「自分にも何かできることはないだろうか」と考え始めていたちょうどその時期、NHKで“こども食堂”を取り上げた番組が放送された。番組を見た瀬尾さんは、「“こども食堂”でなら実現できる!」と考え、年末に職場で「来年の抱負」として「来年は“子ども食堂”をやりたい!」と宣言。それから、瀬尾さんの「ようがこども食堂」立ち上げの取り組みが始まった。<画像2>左:食事の支度に忙しいスタッフたち。右:おそろいのポロシャツの背中には、「ようがこども食堂」の文字が(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

<画像2>左:食事の支度に忙しいスタッフたち。右:おそろいのポロシャツの背中には、「ようがこども食堂」の文字が(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

地域の人々の支援や、区の補助、クラウドファンディングで資金を調達

瀬尾さんが、「ようがこども食堂」の構想を口にすると、整骨院の患者さんたちのなかから、「お手伝いはできないけど、お金を寄付したい」「お金は出せないけど、場所を探してあげるよ」「野菜を分けてもらえないか、聞いてみる」と協力を申し出る声が次々にあがったという。

そうした協力を得ながら着々と準備を進めた瀬尾さん。2016年4月には、第1回「ようがこども食堂」を開催することができた。

「当日、商店街でチラシを配っただけなのに、なんと90人が参加したんです! 『来月はこんなに来ないよ』と言っていたら、5月には98人になって」

大勢の人が参加してくれたのは何よりだったが、会場となったレンタルスペースでは狭すぎるということになり、新たな場所を探さなければならなくなった。そうなると、会場代がさらにかかる。

「『どうしよう。このままではお金が続かない』となったとき、整骨院に来ていた中学生が、『クラウドファンディングっていうのがあるよ』と教えてくれたんです」

早速、クラウドファンディングのサイトに「ようがこども食堂」の取り組みを書き込み、出資を呼び掛けたところ、募集期間2カ月の予定が、20日ちょっとで目標の30万円を超える額を達成してしまったという。

「世田谷区の社会福祉協議会からの補助や、整骨院での募金、産地からの卵やお米といった食材の支援などもあり、クラウドファンディングで集めたお金には、まだ手を付けていません。ただ、現在、安く貸してもらっているレストランも来年からは借りられなくなるので、資金繰りは決して楽ではありません。今、なるべく安く貸してもらえる場所を探しているところです」(瀬尾さん)<画像3>この日のメニューは、「ロコモコ丼」「おばけのポテトサラダ」「おばけのパンプキンケーキ」「野菜スープ」の4品。パンプキンケーキにのっているメレンゲに、ボランティアの子どもたちが描いたおばけの顔は、表情がとてもユーモラス(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

<画像3>この日のメニューは、「ロコモコ丼」「おばけのポテトサラダ」「おばけのパンプキンケーキ」「野菜スープ」の4品。パンプキンケーキにのっているメレンゲに、ボランティアの子どもたちが描いたおばけの顔は、表情がとてもユーモラス(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

”貧困“だけにフォーカスすることなく、みんなが集まれる場所を目指した

そうしてこの日、第7回目を迎えた「ようがこども食堂」。ボランティアの須藤さんは、初回から運営スタッフとして参加したという。

「私自身、シングルマザーとして子どもを育てるなかで、近所の人たちにとても助けてもらったんです。『今晩、一緒に鍋にしない?』と同じマンションの親子同士で食事したりして。一緒にゴハンを食べながら、子育て中の悩みや愚痴をほかのママに聞いてもらったり、情報交換したり。『ようがこども食堂』も、そういう場になればいいなと思っています」(須藤さん)

「赤ちゃんや小さな子のお世話で大変なママから、おじいちゃんおばあちゃんまで、みんなでわいわいゴハンを食べられる場をつくりたい。そうすることで、つながりあうコミュニティをつくりたい」というのは、当初からの瀬尾さんの願いだった。だから、ほかの“こども食堂”のように、“貧困”だけにフォーカスすることのないように意識してきたという。

「だって、『貧困家庭の子が対象です』と言ったら、本当に困っている子は来られなくなってしまいます。なぜなら、ここに来ることで『お前、貧困なんだろ?』と言われてしまうから。だから誰でも参加OK。とにかく、みんなが集まる場でないと。実際、家庭環境が心配な子も全体の1割くらいはいますが、そういう子たちもほかの子たちもみんな一緒に、月1回、ゴハンを食べながら『食事って楽しいよね』『君のことちゃんと見てるよ』『来月もがんばろうね』と背中を押してあげられればと思っています」(瀬尾さん)

この日も、赤ちゃんを筆頭に3人の子どもを連れた女性や、サッカーの練習帰りの親子連れ数組、1人でやってきた小学生や、初老の女性2人組、お孫さんとおばあちゃん……実にいろいろな世代の参加者が、同じテーブルについて一緒に「いただきます」をして、食事をしていた。参加者のなかには、呼びかけに応じて仮装をしてきた人も多く、会場は実にカラフルでにぎやか。お店で外食をするのとはまったく違う、和気あいあいとした雰囲気だった。<画像4>左:瀬尾さんをはじめとしたスタッフの名札には「ママ歴」が。「ようがこども食堂」は、小さい子をもつ新米ママにとって、ベテランママに子育ての悩みを相談できる機会にもなっている。右:参加者に向けてテーブルに掲示してある「おやくそくごと」。最後の「かえりになにか1ついいことをしてかえること!!」という「おやくそく」が効いている。(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

<画像4>左:瀬尾さんをはじめとしたスタッフの名札には「ママ歴」が。「ようがこども食堂」は、小さい子をもつ新米ママにとって、ベテランママに子育ての悩みを相談できる機会にもなっている。右:参加者に向けてテーブルに掲示してある「おやくそくごと」。最後の「かえりになにか1ついいことをしてかえること!!」という「おやくそく」が効いている。(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

この日の参加者はなんと137名! 過去最高だったという。こども食堂の開催は月1回だが、材料の調達や事前の仕込み、支援の申し出への対応などで、常に「ようがこども食堂」の運営に奔走しているという瀬尾さん。赤ちゃん連れのママがゆっくり食事をできるようにと、代わりに赤ちゃんを奪い合うようにして抱っこしている瀬尾さんと須藤さんの姿から、「ここに来ると元気になれる」という須藤さんの言葉を思い出した。瀬尾さんは、最後にこんなことを言っていた。「私にとってのゴールは、日本中から『こども食堂』がなくなること。なぜなら、地域の協力や、隣の人とつながりあうことができさえすれば、ゆくゆくはそれが国や行政につながるから。そうして、『こども食堂』などなくても、きちんと支え合えるコミュニティができることが目標だと思っています」●取材協力

ようがこども食堂
元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/12/122834_main.jpg
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