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【イノベーターズ】世界初の月面探査レースへ! 民間から月面資源開発に挑む男

通信やICTにまつわる”なにか”を生み出した”イノベーターズ”。彼らはどのように仕事に向き合ってイノベーションにたどり着いたのか。インタビューを通して、その”なにか”に迫る。今回は、「月面資源開発」を今後15〜20年のスパンで、「事業」として展開しようとする「ispace」の袴田武史さんのインタビュー。

さて、まずは「Google Lunar XPRIZE」についてご説明。

Google Lunar XPRIZEはアメリカのXプライズ財団が発案&運営し、Googleがスポンサーになって開催されている、民間による月面無人探査レースのことだ。2016年12月現在、10以上の国と地域から16チームが参戦している。今回ご登場のispace代表取締役の袴田武史さんは、日本から唯一、このレースに参加しているチーム「HAKUTO」の代表である。

「Google Lunar XPRIZE」とはいかなるレースか

このレースのミッションは「2017年12月31日までに民間で開発した無人探査機を月面に着陸させ、着陸地点から500m以上移動し、レギュレーションを満たす高解像度の画像と動画や静止画データを地球に送信する」というもの。

優勝チームに贈られる賞金は、なんと2,000万ドル。日本円にして20億円以上!

優勝と準優勝を決める以外にも、アポロ計画で月面に残した機器を撮影することができれば「アポロ・ヘリテージ・ボーナス」として400万ドル、アポロ計画以外の宇宙開発での月への痕跡を見つければ「ヘリテージ・ボーナス」で100万ドル。ほかにも「着陸地点から5,000m以上走行する」「(14日間続き、温度が-170℃にもなる)月の夜を乗り切る」「水か氷を発見する」など様々なボーナスミッションがあり、賞金総額は3,000万ドルだ。

勝敗を決することよりも、イノベーションのベースとなることが重要なレース

このレースは2007年9月に立ち上げられ、レースの期限はこれまで2度先送りになり、都合2年延びた。その判断をするのは主催者側だが、参加チームの声が大きく影響する。

「1チームでもその期限では無理だということになれば、延期されます。もちろんレースではあるのですが、主催者としては成功チームをひとつでも多く出したいと考えているわけですから。Xプライズ財団の目的は、このレースを使って宇宙開発という産業にイノベーションを起こすこと。ですから、それに沿うかたちでレースの運営も行っているのです」

Xプライズ財団は、この月面探査レースだけでなく、サイエンスやエネルギーなど人類共通の課題を解決するための爆発的なイノベーションを求めてさまざまな賞金レースを主催している。ちなみに2004年に行った「Ansari XPRIZE」は、高度100㎞の宇宙空間を有人飛行できる機体を民間で開発するレース。この時はスケールド・コンポジット社の「SpaceShipOne」が有人宇宙飛行に成功し、賞金1,000万ドルを獲得。ヴァージン・ギャラクティック社の宇宙旅行事業につながっている。

チーム「HAKUTO」の構成は袴田さんが営むベンチャー企業「ispace」と「東北大学宇宙ロボティクス研究室」、そしてプロボノと呼ばれるボランティアメンバーという三本柱からなる。袴田さんの会社では資金調達やローバーのフライトモデルの開発、HAKUTOの後の事業展開を担当し、東北大がローバー開発をサポートし、ボランティアメンバーはそれぞれ、自分の持つスキルに応じて仕事を行う。これはエンジニアリングにまつわることだけでなく、イベント企画やコピーライティング、SNSを利用したプロモーションでもなんでもOK。

HAKUTOは、多くの企業からもサポートを受けている。KDDIはオフィシャルパートナーとして通信技術で支援している。その他、IHI、Zoff、JAL、リクルートテクノロジーズ、スズキ、セメダインのコーポレートパートナー6社が名を連ねている。企業だけではなく、個人でも支援は可能だ。「HAKUTOサポーターズクラブ」という組織には一人1,000円から参加できる。このように、企業や個人からの支援を得て、HAKUTOがこのレースに参加しているということを広く世間に知ってもらうことが大きな意味を持つのだという。

月の無人探査ローバーレースの、そのさらに先にある未来像とは?

「HAKUTO」は2008年4月、前身となる日欧混成チーム「White Label Space」としてこのレースにエントリー。4年後にはローバーのプロトタイプを伊豆大島の火山灰地帯で走らせる実験を行った。しかし、この時はまだ世間から注目されるようなことはほとんどなく、「ほぼ日刊イトイ新聞」に実験の模様の取材依頼を行ったのだという。今では取材依頼が引きもきらず、サカナクションが応援ソングをつくり、HAKUTOをテーマにしたプラネタリウムが上映されたりもする。

ispace社はクリーンルームを備えている。ここで実際にローバーの組み立ても行う

「ようやくここまで来たのかなあ。でも8割ぐらいですかね」と袴田さん。

「僕がプロジェクトに参加したときから着実に成功への確度を上げてこられたことは嬉しいと思っています。HAKUTOのプロジェクト以降もいろいろな事業を構築していく予定なので、一歩ずつ僕らの活動を大きな事業にしていけるという実感を持ってやっています」

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