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「認知症」の自覚はなくても以前の自分と“何か”違うことは認識している!

みなさん、初めまして。私は、グループホームで働いている介護職員の長谷川と言います。今、私たちが直面していますのは、入所してきたときは健康だった利用者様たちが、徐々に衰えを見せ始め、認知症そのものも進行している方が増加していることです。

実際に認知症の利用者様と接していると、彼らは全面的に訳がわからなくなっているのでは決してないということが分かります。ご自分の認知能力が、以前と比べて劣ってきていることを、ちゃんと自覚しながら生きていらっしゃるんです。しかし、そうした事実は、まだあまり世の中に知られていないような気がします。

そこで、認知症の方々と接する中で、認知症の方々の日常生活について、世間の方にもっと知っていただきたいと思い、コラムを執筆することにしました。

グループホームにいたEさんはいつも穏やかでした

Eさんが滞在されているのは、9床の小規模なグループホームです。グループホームというのは、認知症を患った方が、生活支援を受けて暮らしている施設のこと。ここでは、80代から102歳の9人の男女が日々を暮らしています。

9床しかないせいもあり、職員は利用者様によく目をかけているし、手厚いサービスを行っています。利用者様が一人で長時間ぼーっとしていることがないよう、常に声かけをし、会話をしたり、お世話をしたりしているのです。

9人いる利用者様は、それぞれに持病はあるものの、皆さんご自分で食事をされるし、若干耳の遠い方もおられますが、全員会話もできます。トイレ介助をしなければならない方は数人おられますが、皆さんそろってお元気です。

Eさんは施設の中では、いちばん認知症が進んでおられる方です。しかし、穏やかでいつもにこにこしておられるので、端から見ていると、何か問題があるようには見えません。

脚がかなりふらつかれるので、トイレなど移動のときには付き添って介助します。そういうときには、「なんや、からだがふわふわしとってな、ほにゃらら~ってかんじなんよ」などと、おどけてみせられます。

Eさんは先日88歳のお誕生日を迎えられ、施設でバースデーケーキとプレゼントを用意して、ささやかなお誕生パーティをしました。ご本人を除く利用者様全員とその日のスタッフで「ハッピーバースデートゥーユー」を歌い、Eさんも終始にこにことしておられました。

お誕生日当日の夕食後に起きた言い合い

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その日の夕食後のことです。ボードレクリエーションに使うホワイトボードに、スタッフが朝から、「E様 お誕生日おめでとうございます。88歳」というメッセージを大きく書いていました。

それを見ていた他の利用者様が「あなた何年生まれ? 私より1つ年上でしょ? でも私、75歳なのよ。あれ、間違ってるわよ」とおっしゃったのです。実際は、認知症のために自分の歳を間違えているのはその指摘された利用者様なのですが、Eさんは「そうねぇ、うん、なんか違うと思う。あの数字はへん」と言い出しました。

スタッフが「Eさん、ほんとは何歳なの? 76歳?」と聞くと、「ううん、そんなに年とってない。もっと若いよ」とおっしゃいます。すると、別の利用者さんで、まだそんなに認知症の度合いが進んでいない方が、「何言ってるの、Eさんは88歳だよ」などと真顔で指摘されました。

ふつうならそこでけんかになりそうなものですが、Eさんは既にけんかができるほど他人とのコミュニケーションもとれないので、聞こえているのか聞こえていないのか、「へんだわ」を繰り返されるばかりです。

そこでスタッフが、「じゃあ、もう消しておきましょうね」と言って、ホワイトボードのメッセージを消すと、Eさんは満足そうにされたのでした。

Eさんの目から涙が…

ある日の就寝介助の後、消灯したはずの居室に灯りがともっているので(居室の扉には磨りガラスがはまっていて、中で電灯をつけているのか消しているのかわかるようになっています)、「Eさん、どうされましたか?」とスタッフが居室をのぞいてみました。すると、ベッドで横になっているEさんのまぶたが赤く腫れています。

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