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エルトン・ジョンの『僕の歌は君の歌』は、日本でも長い間愛され続けている名盤

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ポピュラー音楽史上、不朽の名作と呼ばれる曲は少なくない。しかし、不朽の名作を数多く創り続けている人は、ほんのひと握りしかいない。エルトン・ジョンはその数少ないひとりであり、彼の生み出した楽曲はロックにとどまらず、ポップス界全体に大きな影響を与えている。ビートルズと並んでイギリスの至宝とも呼ぶべき存在だ。今回紹介するのは、彼が1970年にリリースした2ndアルバムの『僕の歌は君の歌(原題:Elton John)』。この作品には誰もが知っている「僕の歌は君の歌」が収録されているだけでなく、珠玉の名曲がいっぱい詰まったロック史上に残る名作中の名作である。
ELTON JOHN『ELTON JOHN』のジャケット写真 (okmusic UP's)

お金のない若者を助けたコンパクト盤の魅力
その昔、僕が中学生になった1970年、ロックは大好きだったが、アルバムは高く数カ月に1枚買うのがやっとだった。だから、シングル盤(当時は380円ぐらいだったはず)を買うことで我慢していたわけだが、そういう貧乏中学生を救済する手立てとして(…かどうかは知らないが)、17センチコンパクト盤というのが結構出回っていた。これはシングル盤より少し高いだけで、4曲入りというお徳な内容であった。そうはいってもコンパクト盤でもそんなに買えず、コレクションはシングル盤が中心だった。
中2になったある日のこと、レコード屋に行ってみると、エルトン・ジョンの4曲入りコンパクト盤が置いてあった。名前は知っていたものの、まだ聴いたことのないアーティストであったが、たまたまコンパクト盤を買えるだけの小遣いを持っていたので、長い間思案した後に思い切って買った。そのコンパクト盤には「フレンズ」(アニセー・アルビナが主演した同名映画のテーマ曲)、「人生の壁(原題:Border Song)」、今ではみんな知ってる「僕の歌は君の歌(原題:Your Song)」、そして「イエス・イッツ・ミー(原題:It’s Me That You Need)」の4曲が収録されていた。
家に帰って聴いてみると、想定外の素晴らしさで、来る日も来る日もこのコンパクト盤ばかりを聴く毎日が続いた。僕が音楽にのめり込むきっかけとなったレコードがこのコンパクト盤であり、今までにもっとも多くの回数を聴いたレコードでもある。まさに、僕にとっては人生が変わる出来事だったのだが、同世代にはこのコンパクト盤で同様の体験をした人が少なくないと思う。
実際、収録された4曲はどれも稀代の名曲で、これは今聴いてもそう思う。この4曲のうち、「フレンズ」(サウンドトラック盤)と「イエス・イッツ・ミー」(シングル・リリースのみ)の2曲は、ベスト盤の一部や92年にリリースされた彼の「レア・マスターズ」という2枚組コンピなどに収録されているので、聴いてみたい人はCDショップで探してください。残る2曲「僕の歌は君の歌」と「人生の壁」は、今回紹介する『僕の歌は君の歌』に収録されている。このコンパクト盤に衝撃を受けた僕は、お年玉の力を借りてエルトン作品を2枚購入する。それが『フレンズ』のサントラと本作であった。

本作『僕の歌は君の歌』について
このアルバムの魅力のひとつが繊細なストリングスやクラシックの楽器をふんだんに使っているところにある。ストリングス及びクラシック的なアレンジはポール・バックマスターが担当している。彼はデビッド・ボウイの大ヒット作『スペース・オディティ』をはじめ、ストーンズ、ニルソン、カーリー・サイモンなどのアルバムにも参加している著名なプロデューサー兼アレンジャー兼ミュージシャンだ。特に本作での八面六臂の活躍ぶりは、バックマスターの仕事の中でも最高位にランクされるのは間違いない。本作からプロデュースを担当するガス・ダッジョンはバックマスターの紹介で、本作以降もエルトンとダッジョンはタッグを組み、70年代中頃までのアルバムは全て大きな成功を収めることになる。
アルバムは「僕の歌は君の歌」から始まる。この曲の素晴らしさは改めて言うまでもないが、その完成度の高さはエルトン、バックマスター、作詞のバーニー・トーピン、ダッジョンのチームワークによる成果であることは確かで、この先100年経っても色褪せない名曲となった。
ただし、名曲は「僕の歌は君の歌」だけではない。この曲と並ぶほどの傑作「人生の壁」(例のコンパクト盤に収録されていた曲だ)も収録されているし、ゴスペル風の「パイロットにつれていって(原題:Take Me To The Pilot)」や「檻の中に住みたくない(原題:The Cage)」のようにソウルっぽいホーンセクションが使われた力強いロック作品もある。カントリー風の「ルイーズに靴紐はない(原題:No Shoe Strings On Louise)」、レオン・ラッセルに影響されたと思われる「王は死ぬものだ(原題:The King Must Die)」など、全ての曲が彼のオリジナリティーに満ちている。
本作のLP時代の裏ジャケットには、エルトン、トーピン、バックマスター夫妻、ダッジョン、カレブ・クェイ(エルトン・ジョン・バンドのギタリスト)、スティーブ・ブラウン(コーディネーター)が写っているのだが、アルバム制作の核になるメンバーを掲載したのは、チームとして優れたアルバムを創り上げた自信の表れではないかと僕は思う。
と、ここまで書いたことが大袈裟に聞こえるかもしれないが、本当に名曲揃いなので、僕の言うことが信じられない人はぜひ聴いて判断してほしい。少なくとも僕は、中2の時に入手してから60歳近い現在まで、45年にわたって愛聴し続けているのだ。
本作は、エルトンの抜群の歌唱力とソングライティングを中心に、バーニー・トーピン、バックマスター、ダッジョンらの絶妙のサポートで生まれたわけだが、この後も『エルトン・ジョン3(原題:Tumbleweed Connection)』(‘70)、『マッドマン(原題:Madman Across The Water)』(’71)、『フレンズ・オリジナル・サウンドトラック(アルバムはエルトンとバックマスターが作曲、トーピンが作詞を担当した。現在オリジナルのかたちでは入手できない。92年にリリースされたエルトンの『レア・マスターズ』にアルバム全曲が収録されているものの、これジャケットが良いので復刻を熱望!)』(‘71)、『ホンキー・シャトー(原題;Honky Chateau)』(’72)、『ピアニストを撃つな(原題:Don’t Shoot Me I’m Only The Piano Player)』(‘73)、エルトン初の2枚組大作『黄昏のレンガ路(原題:Goodbye Yellow Brick Road)』(’73)など、70年代中期まで連続して文句なしの優れたアルバムをリリースし続けることになる。
エルトンは現在までにベスト盤を除いて40枚近くのアルバムをリリースし、売上枚数は3億枚を突破している。これはイギリスだけを見ても、ビージーズやストーンズのセールスを上回る大記録である。僕にとっては、多感な思春期に本作『僕の歌は君の歌』と出会えたことは大きな幸せであった。

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